8。今頃気が付いたにゃ
奇跡的に出会った運命の相手だと知った二人だが、落ち着きを取り戻すと妙にすんなり。
「「 そうなんだ 」」
と納得してしまった。
若かりし頃の事をお互い思い出し、今も気持ちが変わらない事がなんだか照れ臭いが、誇らしくも思った。
週に一度の神界での『相談会』では、引っ越し以外でも解決すべき事柄が多く有ったが、残念な感じがしても流石は神様であった。
アストリアの神力での力技で、全てが解決したのである。
まず一つが、一般常識だ。
異世界に移住するにしても、知識が全く無いと困るのでは?となったのだ。
「知識を~脳にインストールする事が出来ます~、一気に行うと~脳が壊れてしまうので~負担が掛からない様に~少しずつ行っていきましょう~、言語理解能力も付けますね~どんな言葉も読み書き出来ますよ~」
食べ物や水が合わなかったり、風邪とか病気や怪我なんかが心配、ましてや毒とかどうなの?とくれば。
「(超)健康な身体にしましょう~。どんな病気にもならないし~毒状態や麻痺状態等の~状態異常にも絶対なりません~安心ですよ~、怪我に関しては~、そうですね~(超)丈夫な身体でどうでしょう~骨折の心配も無くなりますね~」
さらには、二人が持っている地球のお金はどうなるの?に対しても。
「アストリアのお金に換金しますよ~、お二人が持っている額ならば~レートが大きく違うので~、四人でゆとりある生活をしても100年以上ありますね~」
魔法や剣、魔獣となれば命の危険が有るよね?となり。
「まず魔力量と~魔法属性~、色々スキルも付けて~、あっ良い事を思いつきました~後はこれはこうして~あれをこっちに~etc……、はい~回避や対応を出来る様にしたので~安心してください~」
と、簡単に言ってのけたのだった。
何がどう安心出来るのかは「転移後のお楽しみです~」と、教えてもらえなかった。
なんだか不安は残るが、信じるしかない。
『相談会』も半ばを過ぎた頃、里子が急に言い出した事に、政継は衝撃を受けた。
「今気が付いたんだけど、ルーちゃんもレオくんも何で話せるの?」
たしかにそうだ!当たり前に会話していたが、何でだ?
そして、俺はどうして気が付かなかった……。
理由は簡単、神獣としてのスキルと知能が上がったからだとアストリアに説明された。
見た目は生後2ヶ月位の子猫に見えるし、実年齢は3歳なのだが、人間で例えると12歳位なのだとか。
ただ体の成長速度はゆっくりで、まだまだ子猫の可愛さは堪能できるらしい。
ちなみに、ルビィもレオも種族はブラッディーキャットという魔獣の亜種で、普通は血の様に真っ赤な瞳に、赤みがかった身体。
大きいものは体長2メートル有り、素早い上に魔法も使う為『森の番人』と恐れられているらしい。
こんな大事な情報も気にならなかったのかと、少なからず舞い上がっていた事を反省する出来事であった。
そんな中、ルビィは勿論の事、レオとも大分親密になれた。
大人しく人見知り傾向にあるが、政継と里子がこれでもかと構い倒し、猫っ可愛がりした事と『岡林家家族会議』が開催された事で、レオの不安が解消されたのだろう。
『岡林家家族会議』の議題は「家族」についてである。
二人は、レオと誠心誠意言葉を尽くし話し合った。
そのお陰でレオは心を開いてくれ、今では二人の事を「父様、母様」と呼んでくれている。
初めは「義父様、義母様」呼びしている気がしてならず、その度にモフモフの刑という名の撫でまわしが執行されたのだ。
6ヶ月目、最後の『相談会』では、移住したら何かする事が有るのかアストリアに聞くと。
「皆さん~特にルビィさんは~元気に生きてくだされば良いんです~身体だけでなく心も元気で居てほしいので~ルビィさんの為にも~政継さんや里子さん~、そしてレオさんは~幸せに仲良く好きに生きてもらえれば~良いんです~。旅をしても良いし~安住の地を決めても良いし~」
アストリアはそう言って、ルビィとレオを撫で、微笑む。
「ルビィさんだけではなく~レオさんもこんなにお二人に懐くとは~驚きです~、神獣は~心の闇を嫌うので~信頼する者を選ぶのですよ~。でもこれで~安心して皆さんを送り出す事が出来ます~」
そして最終日、転移に向けて滞り無く全てを済ませ、玄関を出ると、二人は振り返らずに住み慣れた家を後にした。
二人の顔には、この先への希望が満ち溢れ、心なしか足取りも軽く感じられるのだった。
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