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にゃんとも不思議な異世界生活始めましたにゃ  作者: YUUURI
第1章  新天地セイタルです
73/119

73。ほくそ笑むにゃ

「話は分かった。……まず質問なんだが、借金は後どの位残ってるんだ?」


 二人は、しばし目を合わせると「分からないんだ」と、首を横に振った。


「依頼料もほとんど返済に回されてて、特別依頼分も全部渡してるんだけど、まだまだ足りてないって。総額を知ったら頑張る気力がなくなるからってサラさんにも言われてて」


「……それじゃあ、今の点数って何点になってる?」


「え? 点数? 俺が56点で、ソフィーが54点だ」


 最低でも合計6万6千アストか……、合わせて4万8千アスト以上は有ると考えてたけど、思ったより多かったな。


 マサは素早く計算した後、質問を続ける。


「特別依頼はいくらで、何回位やった?」


「二人で300アストだ。20回位はやったけど、返済には全然足りてないんだ……」


 揃ってシュンと項垂れるダレンとソフィー。


 流石にこのままにはしておけない。

 この世界には借金奴隷制度ってのが有ったはずだ……下手をしたら金額を上乗せされた挙句に、奴隷にされてしまう。


 マサが少し考え込んでいると、リコが泣きそうな顔を向けて来た。


「何とかならないかな……、二人を助けてあげたいの」


 そんな顔されたらたら嫌とは言えないだろうが……まぁ、助けるつもりだったけどな。


 嫁の願いは叶えてやりたい、愛妻家のマサ。

 リコに「大丈夫だ」と囁くと、ダレン達に向き直った。


「はっきり言うが、ガスタルとギルドの女に、お前達は騙されてるぞ」


 瞬間、ダレンとソフィーは何を言い出すんだとばかりに、マサを疑う様な顔を見せて。


「そんなことないよ!!」


「俺達、騙されてなんかいない!!」


 強く反発する様にそう言って来た。

 田舎から出て来たばかりで世間知らずな上に、真面目な二人。

 騙す側にしたら良いカモだったろう。


「いきなりそんな事を言われて、信じられないってのは分かるけど、最後まで話を聞けよ。まず一つ目だが――――」



 マサは二人の反論を丁寧に論破しながら、話を進めて行った。



 ギルドには『最初は冒険者の先輩からの依頼を受けるのが暗黙のルール』なんてものは存在しない。

 『聞いたり教えたりするのはタブーで機密漏洩』というのは、ダレンとソフィーが誰かに聞いたり、頼れない様にする為のもので、全て出鱈目である。

 事実、自分達は聞いた事も無いし、やらされてもいない。

 配達の依頼時に箱の中身を事前に知らせたり、確認させていない事から、最初から中身は破損していたと考えられ、高貴なお方云々や金額も、二人からお金をだまし取る為の嘘だと思われる事。

 残金を教えないのは、これからも続けてむしり取る計画なののだろう。

 最後に特別依頼だが、禁止されている物の運び屋をやらされている確率が非常に高い事、等を伝えていった。


「でも、この魔物寄せ玉の事はどう説明するの? 私達は金づるなんでしょ? マサ達が居なかったら、私達間違い無く死んでたよ?」


「そうだ、俺達が死んじまったら金を騙し取れないじゃないか」


 マサの話を聞きながら、初めは否定していた二人だったが、段々と納得出来て行ったようで、悲壮感から騙された事への怒りへと変わっていった様だった。

 それでも、魔物寄せ玉に関してはつじつまが合わないと反論して来た。


「まず、謝っておくよ。今日の事は俺達の巻き添えを食っただけだと思う、悪かった」


「ごめんね、私のせいだと思う」


 リコも一緒に頭を下げ、事情を詳しく説明し始めた。


「私達、サラって呼ばれてる人の秘密に気が付いちゃったの。それで、確かめる為に煽り過ぎちゃったんだよね……、それは詳しく言えないんだけど、ちょっとヤバい秘密だったみたいで。ソフィー達は私達を()すのに、利用されたんだと思うんだ」


 Fランクが、手っ取り早く稼ごうと魔物寄せ玉を違法に使い、自滅した様に見せかける為の仕掛けでは無いかとリコは語った。


「ソフィーに魔物寄せ玉を大量に買ったという事実を作らせた後に、野営地で使った痕跡が見つかり、挙句俺達が魔物に殺されてたら、間違い無くそう判断されるだろうな」


 マサも同じ意見だった為、そう言って大きく頷いて見せる。


「そんな……、騙されていたなんて!!」


「それが本当だったら、酷過ぎる!!」


 納得した二人は憤慨していたが、しばらくすると「証明する証拠が無い」と落ち込み始めた。


「助けるって言っただろ? だから協力してくれよ、こんな事をされて俺達だって黙ってられないさ」


 マサはダレンとソフィーを見つめ、ニンマリと笑った。


「何だろう……助けてくれるのは嬉しいけど、マサのそんな顔を見たら、いけない物に魂を売ってしまった様な気持ちになるんだが……」


「……敵に回さなくて良かったって思う様な、黒いオーラを感じるよね」


 そう言ってダレンとソフィーは震え上がるのだった。





 次の日、何事も無くギルドに現れた四人を見て、サラは驚愕した顔を見せた。

 マサ達はあえて普段通りに振る舞い、野営地での出来事や魔物寄せ玉の話もせず、依頼料を受け取った後は和やかにギルドを後にする。

 マサ達が一緒に居た為、ダレン達に声すら掛けてくる様子も無く、サラは怒りを滲ませた顔を見せていたのだが、それを横目に、マサ達は連れだってギルドを出るのだった。


 ダレン達を食い物にしやがって。

 挙句に俺の大事な家族に危害を加えようだんて、絶対に許せない。

 ……さて、反撃の準備を始めようじゃないか。


 宿へ向かいながら、悪い顔でほくそ笑むマサであった。

お読み頂き、ありがとうございます。

少しでも面白かったと思って頂けたなら、次作への励みになりますのでブックマーク・評価・いいねを宜しく願いします。


そして、ブックマーク・評価・いいねを下さった皆様、本当にありがとうございます。

今後も頑張っていきますので、よろしくお願いいたします。

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