7。運命にゃ
「ルーちゃん!!」
「ルビィ!!」
二人は小さな子猫に駆け寄った。
「父にゃん!母にゃん!! 会いたかったのにゃー!?」
ひしと抱き合う二人と一匹……いや、三人は余りの嬉しさに、これでもかというほど涙を流したのだった。
「お父さん達もお前に逢いたくて……、ずうっと我慢していたんだ……」
「うん、うん……逢いたくて堪らなかった……、ルーちゃん……」
「あたちもね、もう一度逢いたかったにゃー……、だから神様にお願いしたのにゃ……、迷惑掛けてごめんにゃ……」
「何言ってるんだ、お前は俺達の大切な娘なんだぞ……その娘の為だったら何だってやるさ……」
「そうだよルーちゃん、水臭い事言っちゃダメだよ……」
互いの存在を確かめ合う様に涙と歓喜でぐちゃぐちゃになっていた三人。
どれ位そうしていただろうか、アストリアから声が掛かった。
「良かった~、本当に良かったです~。けれど、まだもう一人紹介する子がいるんですよ~、この子です~」
そう言って両手を差し出して見せる。
その掌にはルビィよりも少し大柄な三毛猫が乗っていたが、小さく体を震わせ、おどおどした様子で政継達を見ている。
「この子にはまだ名前が有りません~、名付け親になって下さい~、ルビィさんの~未来のお婿さんです~」
アストリアの衝撃的な発言に、政継は「嫁には出さん!!」と騒ぎ出したが、里子から特大の雷が落とされた事で騒ぎは収まり、なんとか事情を聞く事が出来た。
どんな魂にも必ず番の様な魂が存在していて、日本で言うところの『運命の人』とか『赤い糸で結ばれた仲』みたいなものだとか。
ただ、同時期に見合った年齢で生まれる事自体が稀であり、巡り合う事は奇跡と言っても過言では無いらしい。
そして、ルビィが問題無くアストリアで生活出来ていたら出会うはずだったそうだ。
「そうなんです~、今回の事であなた達だけでなく~この子の運命も変えてしまったんです~、あまりにも申し訳なくてですね~今世では初めからご一緒してもらう事にしたんですよ~」
事情を聞き終えた二人は顔を見合わせ頷き合うと、里子に抱えられ、心配そうに事の成り行きを見ていたルビィに優しく問いかける。
「ルビィはどう思ってる? 納得しているのか?」
「父にゃん、母にゃん、あたちはこの子とも一緒に居たいのにゃ、離れたくないにゃ…」
泣き出しそうなルビィの頭をクシャっとひと撫でした後、政継は三毛猫に向き直ると、深く頭をさげた。
「事情も知らないのに騒ぎ立てて悪かった。怖がらせてしまっただろうか? もし良かったら、俺達と一緒に行ってくれないか?」
「ぼ、ぼくがルビィの傍にいても……め、迷惑じゃないですかにゃ…」
フルフルと震えながら見上げてくる様子に政継は。
「うーっ、可愛いいなぁ!!」
と身悶えしてしまう。
だが、その隙を突かれ里子に美味しい所を持っていかれてしまった。
「きゃーっ可愛い!? 君は今日からうちの子よー!! 名前はレオンハルトで通称レオくんね!? 決まりぃー!! 政継、いいでしょ?」
そう言って抱え上げてしまった。
両腕でルビィとレオを抱きしめ「息子もできた~」とご満悦である。
里子さんや、俺のこの立場は……。
と呆れるも「かなわないな」と、そんな里子を微笑ましく思うのだった。
「政継さんと~里子さんも~運命の相手同士ですよ~」
ほっこりするのも束の間、アストリアの何気ないこの一言に、政継も里子も驚くやら照れるやらでパニックになり、落ち着きを取り戻すのにしばらく時間が掛かったのは言うまでもない。
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