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にゃんとも不思議な異世界生活始めましたにゃ  作者: YUUURI
第1章  新天地セイタルです
69/119

69。用意周到にゃ

 砦に行くには、街道から森に入って暫く行かなければならなかった。

 道も整備されていないでこぼこ道で、一人がやっと通れる幅しか無い。


「ついでに寄れる様な場所じゃない無いな。これは商人が嫌がるのが分かるよ」


 マサの意見に、他の三人も強く同意していた。



 10分程歩いただろうか、木々の間から石造りの建物らしきものが見え隠れし出す。


「あれかな?」


「そうだろうね、やっと到着だね」


 後ろでリコとソフィーの嬉しそうな声がした。


 常に〈サーチ改〉を確認しながら進んでいたマサ。

 砦の中に5人位の白い点が有るのが確認できていた。


「魔物が出なくて良かったよな」


 ダレンの問いかけにマサが答えようとした時だった。


「おお~い!! お前たちは冒険者か~!!」


 近くに迫って全体が良く見えるようになった砦の方から、いきなり大声が響いて来た。


 驚いてマサが立ち止まると、自ずと後ろの三人も立ち止まり。


「な、何?」


「どこから叫んでるんだ?」


 ダレンとソフィーは慌てているが、最後尾のリコが二人を落ち着かせるように。


「よく見て、砦を囲んでる塀の上、誰かいるよ?」


 砦は5~6m程の石で出来た塀に囲まれていたのだが、その上に居る男がこちらを見ている。


「依頼を受けた冒険者です!! 部隊長に渡された物資を運んできました!!」


 マサは砦の男に負けない位の大声を出して、自分達の来た理由を伝えると。


「そうか!! やっと来たか!!」


 男はそう叫んで姿を消した。


「なんか、凄く待ってたみたいだな……」


 マサがそう言うと、三人は顔を見合わせて首を傾げ合うが、とりあえずは言われたとおりにしようと、入口に向かう事にした。


 入口は金属製の観音開きと、その横に屈んで通るような小さめの扉が1つあった。

 その小さな扉まで近づくと、勢い良く扉が開いて、中から若い男が飛び出して来た。


「いや~助かったよ。昨日で例の物がすっからかんになってしまって、どうしようかと困っていたんだ」


 20代前半かと思われる男性の言葉に。


 例の物?


 四人が不思議そうに首を傾げながら、砦の中に入った瞬間、男達のだみ声が聞こえて来た。


「イワン、早く寄こせ!! 昨日の足りなかった分を今貰うからな!!」


「何言ってんだ!! 今日は俺の番だろうが!! もう半日も我慢してるんだぞ!!」


 見ると、先ほど砦の上に居た男と、もう一人の男が言い争いを始めている。

 どちらも40代くらいだろうか。


「いい加減にしてくださいよ!! 昨日の不足分も後で分配しますが、今日は飲んだら駄目ですよ? 勤務中でしょう?」


 イワンと呼ばれた若い男性が二人に言った言葉で察したマサ。


 おいおい、このおっさん二人は酒が切れて騒いでんのかよ……。


 何となくジト目で騒ぐ男達を見ていると、イワンが上手に収めた様で、二人はすごすごと戻って行った。


「いやあ、騒がしくて済まないね。こんな所で交代勤務をやってると、楽しみが余り無くてね」


 聞くと、この砦は魔の森に居る魔物の監視をしているのだとか。

 15~20年間隔で魔物が溢れる事が有るらしく、前回は10年前だそうだ。

 多分、スタンピードの事だろう。

 魔の森は縦に長いく広大で、5つの国が森の周囲に在る為、それぞれの国が自国側に砦を置き、監視する事で前兆を見逃さない様にしていているとの事。

 その為、このサレトワ王国にも数多くの砦が設置されているらしい。

 この町セイタルだけでも砦は3つもあるそうで、常に人材不足なのだとか。


 イワンさんは日勤兼料理人。残りの四人で交代勤務を行っていて、夜勤明けから休日になるそうで、朝から飲んだくれてしまうのだとか。


「無理も無いんだ。半年は町に戻れないんだからね」


 疲れた様子で、イワンさんがそう言って全て鞄を受け取ると。


「本当は衛兵が物資を運ぶべきなんだろうけど、何せ人で不足でね……。運んでくれていた人が引退してしまって、困ってたんだ。まだ上層部で物資をどうやって運ぶか検討中らしいから、次回も冒険者ギルドにお願いするかも知れないね」


 力無く笑って、依頼書にサインをくれたのだった。

 その後、あるやり取りを少しして、マサ達は「大変ですね」「頑張ってください」等の声を掛けて早々に砦を後にした。





「いや~、危なかった。まさか勧誘されるとは思わなかったよ」


 ダレンがそう言って汗を拭っている。


「ホントだね~、『君達、衛兵にならないかい?』って言い出した時のイワンさんの顔、めちゃくちゃ怖かったね」


 ソフィーは身震いするように体をすぼめて居る。


「懐から同意書が出てきたのも驚きだった」


 そう言ってリコは笑うが、マサは少し強張った顔をして。


「気づいてたか? イワンさん扉ににじり寄って、鍵を掛けようとしてたんだぞ?」


 爆弾発言に、全員唖然とした顔になる。


「もしかして、だけどさ……。この依頼って、勧誘目的? とか言っちゃう?」


 ダレンは最後に、まさかだよなと呟いたが。


「そのまさか、かもな……。だって、同意書が用意周到過ぎだろう?」


「え? ギルドもグルだって事!?」


 憤慨した様子を見せるリコに。


「いや、ギルドは知らないと思うぞ? 部隊長もな。多分、あの砦の誰かが先走って始めたんじゃないか? 何かメンタルやられてたっぽいしな」


 マサの言葉に、全員がイワンさんの様子を思い出して、納得してしまった。


 そして、二度とこの関係の依頼は受けないでおこうと満場一致で決まったので有った。

お読み頂き、ありがとうございます。

少しでも面白かったと思って頂けたなら、次作への励みになりますのでブックマーク・評価・いいねを宜しく願いします。


そして、ブックマーク・評価・いいねを下さった皆様、本当にありがとうございます。

今後も頑張っていきますので、よろしくお願いいたします。

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