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にゃんとも不思議な異世界生活始めましたにゃ  作者: YUUURI
第1章  新天地セイタルです
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61。夫の立場にゃ

 ギルドでソフィーと話してから、リコの様子が少しおかしい。

 こんな事を本人に言ったら間違い無く怒られそうだが、いつもは能天気な位、あれやこれやと話しかけて来るはずなのだが、さっきから少し難しい顔をして黙っている。 

 挙句に「ソフィーが変な事を言っている」とはコレいかに。

 嫌な予感がしていたマサだが、聞かない訳にもいかず。


「ソフィーと、いったいどんな話をしたんだ?」


 ダレン達とギルドで別れ、とりあえずラウネロさんのお店に向かう事にした二人。

 リコが「う~ん」と唸っている所を見ると、考え込んでいる様だ。


「取りあえず、話した内容を教えろよ」


 マサがそう言うと、やっとリコは顔を上げた。


「これは美味しい依頼だよねって、ソフィーも言ってて、そこからお金の話になったんだよね」


 リコが言うには、「強い魔物を倒した方が早くお金を稼げるよね」と、ソフィーが言い出した為「まずは自前の武器と防具を用意してからでも遅くないよ」と、リコは心配になって注意喚起も込めて言ったそうだ。

 ソフィー達の方が、自分達より早くに登録しているし、無駄使いをしている様子も無い事から、「頑張って溜めてるんでしょ?」と何気に聞いてみたという。

 すると、首を横に振って「まったく溜まってないの……、精々2千アストかな。昨日までの依頼分もほとんど貰えなかったし」と口を滑らせた。

 ソフィーが、余計な事を言ってしまったとばかりに焦りだした事から、リコは何かがおかしいぞ? と思い、急いで「依頼を受けよう」とマサに声を掛けたそうだ。

 この前あの女と一緒に居た事も有り、心配になった為、依頼遂行中にでも詳しく聞き出そうと考えたとの事。


 その話を聞いたマサは『あの時の違和感はこれだ!!』と、森で出会った時の事を思い出した。


「森で会った時、ソフィーが言ってた事が引っかかってたんだ。昼飯の話になった時だ、覚えてるか? あの時、ソフィーは、「あまりお金が無い」って言ったんだよ。それを聞いて、違和感が有ったんだけど、リコの話を聞いて確信した」


 マサの話を聞いて、リコは目を大きく見開いている。


「マサも違和感を感じてたの?」


「あれっ? って思う程度にな。今回の依頼は当てはまらないんだけど、俺の記憶では、どんなに安い依頼でも、最低1点につき600アストは有るんだよ。あいつらは俺達より2ヶ月早く冒険者になってるだろ? どんなに少なく見積もっても40点は稼いでると思うんだ。そうなると、依頼料の総額は2万4千アストだろ? 俺達の価値観が、まだこっちの世界に馴染んでないから少ないように感じるんだけど、約10倍違うんだよな。だから日本の感覚で言うと、一人24万位有るって事だよ」


 リコは真剣に話を聞いていたが、疑問も挟んできた。


「ギルド支援で食住は無料だけど、昼食とかポーションなんかの細々した物以外にも、結構見えないお金って掛からない?」


「そうだな、人によったら、何もかも揃えなきゃいけない場合も有るしな。でもさ、武器も防具も買っていないのに、残金が2千アストは無いだろ? アイツらの武器も防具もレンタルだぞ? 持ってるアイテム鞄だって、多分一番安い3千アスト位の物だと思うし」


「え? アイテム鞄が3千アスト位って、何で分かるの? 」


「だって、ダレンが話してたろ? シートなんか入れたら他の物が入らないってさ。という事は、物があまり入らない一番安い鞄の可能性が高いって事だ。あいつ等、冒険者になる前から借金でも有るのか、どっかに仕送りしてるのか……」


 マサが考え込み始めた所で、ラウネロさんのお店が遠くに見えて来た。


「その話はまた後で。取りあえずは、必要な物を買わないとな」


「あっ、そうだね。テントとかさ、バレたら困る物が多いからね」


 ラウネロさんのお店に到着したマサとリコ。

 二人で相談(?)して買ったのだが、気が付けば結構な量になってしまっていた。


 6人用テント。

 これは、リコが「大きい方が色々誤魔化せる」と言って譲らなかった為、購入となった。


 リコさんや……どうして6人用を? せめて4人用でも良いのでは?


 調理器具。

 今持っている物は、「この世界に無い技術(透明な耐熱ガラス製の蓋等)が使われているので、人目に触れさせない方が良い」とリコが言った。


 リコさんや……鉄製鍋とかも持ってるよね? 鉄製の蓋なら目立たないんじゃないかな……。


 寝具類。

「この世界の寝袋を使った方が目立たないから」、とリコが勝手に4つ程購入した。


 リコさんや……4つもどうするの? 敷き布団と掛布団とか言わないよね?


 ポーション類。

「自分達は治癒魔法が使えるが、あまり人に知られない方が良いのでは」と心配したリコが購入を進めて来た。


 リコさんや……確かにそうだけど、20本ずつは買い過ぎじゃないかな。


 魔道コンロ。

「魔石込みで6万5千アストなら良い買い物だよ、野営時の食事を作るのには絶対必要」とリコがごり押しして来た。


 リコさんや……隣に4万アストのコンロも有るよ? どうして高い方なんだい?


 マサの心の声はさておき、他にも明かり用のランタンや魔道具製の水筒等々、リコの指揮の元、全てを買い揃えた二人。

 金額にして約18万アスト。


 マサの意見もほんの少しは加味されているが、基本はリコの判断で進んで行ったのだった。


 ……悲しいけど、夫の立場ってこんなもんよね。


 そう思いながら、黙って支払いをするマサである。




 宿に戻る為にギルド近くまで来た時だった。

 この頃は、定期的に〈サーチ改〉を使って、自称サラの行動を見張っていたのだが。


「ガスタルとあの女が一緒に居るみたいだぞ」


 マサはそう伝えると、通行の邪魔にならない様に、脇道にリコを引っ張り込んだ。


「〈サーチ改〉を拡大して見てたんだが、ギルドの裏手に倉庫か何か有るだろ? そこで一緒に居るみたいだな」


「うわっ、ホントだ~。こんな誰も来ない様な所で、まさか逢引?」


 リコは顔をしかめて、嫌そうにそう言った。


「明日からの事も有るし、()()()()()行動しような?」


 マサが、リコを見つめて強めに言うと。


「……ハイ、ワカリマシタ」


 視線をそらす何とも信じ難いリコの返事に、眉間をモミモミしながら。


 何、その片言な返事は……リコさんや、アンタ本当に分かってるんだよね?


 そう思いながらも、「頼むよ?」と、マサは小さく呟くしかなかった。

 

お読み頂き、ありがとうございます。

少しでも面白かったと思って頂けたなら、次作への励みになりますのでブックマーク・評価・いいねを宜しく願いします。


そして、ブックマーク・評価・いいねを下さった皆様、本当にありがとうございます。

今後も頑張っていきますので、よろしくお願いいたします。

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