5。本当にゃ
「「 は? どういう事ですか? 」」
勢い良く立ち上がる二人に、変わらずとぼけ顔のまま。
「えっと~、まだお話してませんでしたっけ~?」
そう言ってアストリアは説明を始めたのだった。
こちらの世界に迷い込んだ神獣の居場所は、地球の神様の協力の元(やっぱり地球にも居るんだね神様)、少し時間は掛かったものの、無事に発見は出来た。
だが、その頃には魂がこちらの世界に定着してしまっていた事と、政継達に大切にされていたルビィ自身が離れたがらなかった為、猫の一生を全うしてからでも良いだろう、という事で話は付いたのだとか。
けれど、思いのほか長生きした事には、アストリアも驚いた様だ。
まさか24年も、とは思って無かったみたいで「大切にしてくれてありがとう~」とお礼を言われた。
今は神界で出番を待っている?という。
不可抗力とはいえ、神様の不始末で迷惑を掛けた事のお詫びも兼ねて、一つだけ望みを叶える事を約束したらしい。
「で~今私が~ここにいるんですよ~」
で~とか言われても……、大筋は理解したが俺達が神様に会っている理由が全く分からんのだが…。
里子も思いは一緒の様で、小首をかしげている。
「いや~、そうですよね~失礼しました~」
また勝手に心を読んだアストリアは、急に真面目な顔になり。
「ルビィさんからのお願いです~『父さん母さんと一緒にいたい』との事なので~、政継さん~里子さん~、アストリアに移住しませんか~? っていうか転移してもらいます~決定事項です~!!」
と、突然宣った。
いじゅう?? てんい?? けっていじこう?! ってか、ルビィにもう一度会える!?
政継の思考はまたも止まるが、里子は大興奮し出した。
「えーっ!!、ルーちゃんと暮らせるんですか!? 異世界転移? 魔法使えます? 種族は? チート貰えるんですか? っていうかルーちゃんの望みって私達と一緒に居たいって事なのぉー!? 嬉しすぎるぅー!! いつ会えるんですか!!#$%&=~」
固まったままの政継を置き去りに、半泣きで騒ぐ里子とアストリアの会話は続く。
「ハイハイ~。魔法や種族的な話や~、他にも準備して頂かなくてはならない事等々~、ご相談に来たんですよ~」
「私は何時でも構いません!! 何なら今からでも良いですよ!!」
おーい、待て待て里子さんや……。
いつもの事だが、好奇心が溢れだし過ぎて暴走しちゃってるぞ……。
確かにルビィに会える事は俺も嬉しいが、色々考えなくてはならん事が有るだろうに。
……差し当たっては、仕事やこの家の事なんかをどうするかとか……。
そこまで考えて、政継は大きく溜息をついた。
なんだよ、俺もその気になってるよな、と。
ルビィが居なくなった事で、ぽっかりと心に穴が開いた様な虚無感が纏わりついていたのだが、この残念な感じの神様の説明を聞いているうちに、驚きはしたが幸福感に満たされて来た事に気が付いたのだ。
荒唐無稽な話であるし、本当なら悪戯や詐欺と考えるのが普通のである。
しかし、政継と里子には『嘘』では無い、『本当』の事なのだと、確信を持つ事が出来ていたのだった。
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