47。過保護にゃ
「私も思ってた、一角兎を狩るだけじゃ駄目だよね」
リコもそう言って賛成してくれたので、二人は依頼を受けて、森に向かう事にした。
やっぱり門番のオジサンには。
「お前達じゃ、危険じゃないか?」
と心配されたが、もう一人の門番さんに。
「この子らも冒険者になれたんだから、15歳過ぎてんだろ? 心配し過ぎだって。あの森で狩が出来なきゃ冒険者稼業なんか出来んだろうが」
と、諭されていたのだが……、どうやらこの町に来た時にリコが語った『出自ストーリー』に感化されてしまい、マサ達の見た目も相まって、オジサンは心配し過ぎてしまったらしい。
ただ、危険な事は本当なので、ランクが低いうちは余り中までは入ってはいけないらしいけど。
渋々送り出してくれた門番さんに手を振って、二人は門の外に出る事が出来た。
「私って、女優になった方が良かったのかもね」
ご機嫌で歩くリコを横目に、マサは「ああ」としか言えなかったが。
リコさんや……女優というより、詐欺師的能力な気がしてならないんだが。
マサはそう思い、ため息を付きそうになった。
二人が小走りで森に向かい始めると。
「私ね、気になる事が有るんだけど」
何の前振りも無く、リコが言い出した。
「コンシェルジュさんが創った〈広範囲鑑定〉って、鑑定とサーチ機能の組み合わせって言ってなかった?」
「確か、そうだったと思うけど?」
「前から思ってたんだけど……この子達には危険察知っていうスキルが有るでしょ?」
リコは、話の繋がりが全く分からない事を聞いてくる。
「さっきと話が変わってるぞ? 何が言いたいんだ?」
「私も曖昧な感じなんだけどね、危険察知ってさ、危険の来る方角が分ってる感じじゃない? ルーちゃん達も『あっちから』とか『こっちの方から』って教えてくれるでしょ?」
マサは、リコの言いたい事が全く理解できないが、ここは黙って聞くしかないと思い、相槌をうつ。
「そうだな、そう教えてくれるよな」
「そこでさっきの〈広範囲鑑定〉に繋がるんだけど、サーチ機能で、魔物の場所が分かったり出来ないのかな~なんて考えた訳よ。サーチって探索という意味も有るでしょ?」
それを聞いて、マサは『あれ?』っと思った。
「もしかしてさ、俺達〈サーチ〉って魔法使えるんじゃないか?」
マサがそう言った途端、リコは目を見開いて黙り込み。
「…………使えるみたいだねぇ」
そう言って頭をかくと、照れ隠しに笑って見せる。
「そっか~、〈サーチ〉を使えるから、コンシェルジュさんが〈広範囲鑑定〉に利用出た訳か~、成程~」
マサはそれを聞きながら森の方角に向かって〈サーチ〉を使ってみた。
頭の中に(この方角のこの辺り)位な曖昧な感覚での状況がうかぶ。
「ちょっと物足りない感じだよな」
残念そうに言うマサに。
「え? もう使ってみたの? どれどれ~……」
使い終わったリコも微妙な顔をしている。
「もう少し? あと一歩? って感じがしないか?」
「そうだねぇ……そうしたら、どんなのが良いかなぁ?」
「〈広範囲鑑定〉の時みたいに、使っている間は常時見えてるんじゃ困るよな? 実際の視界に被って、見えにくそうだし……」
マサは話している途中で言葉を切った。
また、急にコンシェルジュの連絡音が鳴るのではと思ったからだ。
「……」
暫く無言で待ってみたが音は成ることは無く、安心したマサはほっと息をつく。
その間もリコは色々想像していた様で。
「……じゃあ魔法を使ってる間は、自分しか見えないステータスウインドウみたいな画面が出るとか?」
リコも楽しくなってきたのか、意見を出してくる。
「範囲も変えられて、画面も大きさを自由に変更出来て、なおかつ邪魔にならない様に、場所を動かせるなんてどうだ?」
「あはははは、じゃあもう一つ追加!! 魔物だけじゃなくって、人の位置も分かるのは?」
マサもリコも、段々ノリノリになってきて。
「おう!? それならこれは? 俺達に悪意が有るか無いかで色分けできるってのも良くないか?」
マサが言い切った瞬間だった。
『ぴんぽんぱんぽ~ん♪
コンシェルジュがご要望にお応えします
只今より、〈サーチ〉を改良した新魔法
〈サーチ改〉が使用可能になりました。
ぴんぽんぱんぽ~ん』
マサは唖然として押し黙り、走るのを止めて立ち止まった。
リコもすぐに止まると、ニマニマと嬉しそうに空を見上げて。
「神様、有難うごさいま~す!! コンシェルジュさん最高です!!」
と叫んでいる。
マサは調子に乗った事を少し後悔したが、有って困る物では無いと気持ちを切り替えた。
「相変わらず過保護すぎるでしょ」
と、呟いてしまうのは止められなかったが。
鞄から子猫達が顔を出して、不思議そうにしている様子に気が付いたリコが、嬉しそうに説明をしている。
その様子を眺めながら、マサは一足先に〈サーチ改〉を使ってみる事にした。
目の前に現れた大型ウインドウ。
まるでモニターに映る地図の様だった。
大きさや見える場所も、左右・斜め上下等と、視界をふさがない様に変えられ、魔物の位置もはっきり分る。
へえーっ、比べ物にならない位分り易いな。
そう思った時。
「ずっる~い!! 一人で使って!!」
気が付いたリコが怒ってそう言ったが、マサは有る事に気が付いた。
森に入って少し行った所に、白い点が2つと赤い点が5つ、同じ方向に動いている。
「これって!? 追われてるんじゃないか!?」
マサが焦ってそう言うと、リコも〈サーチ改〉を開いたようで。
「人だよ!! 魔物に追われてるね!?」
見ると森のすぐそばまでマサ達は来ている。
そして、二人の移動速度なら、助けに行けば間に合いそうではあった。
どうする? 自分達が行っても対処できるのか? それどころか、皆を危険な目に合わせてしまうんじゃないだろうか……。
そう思い悩むマサであった。
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