41。魔が差したにゃ
〈 広範囲鑑定 〉とは、確かに素晴らしい物であった。
例えば、「治癒草」と思って周りを見ると、治癒草が青く発光して見えるのだ。
めっちゃくちゃ楽なんですけど~。
流石に、マサも感謝せずにはいられない程の性能である。
楽しくなって、思う存分に薬草採取を行った二人は、アイテムボックスの中を確認して驚いた。
「あれから2時間位だよね? 治癒草に毒消し草、合わせたら500本以上あるんだけど?」
「間引きしながらでも、凄く取れたよな?」
「さすがに取りすぎたね、この辺で止めておこうよ」
マサが時計を確認すると、もうすぐ11時半になる所であった。
「そうだな、もうお昼も近いしな」
二人がそんな話をし始めると。
「(えっ? ご飯の時間ですか?)」
「(もうそんな時間にゃの?)」
マサ達の話に気が付いて、鞄の中に居た子猫達が顔を出した。
どうやら居心地が良い様で、今までウトウトと眠ってしまっていた様だった。
「(この中は最高にゃ)」
「(ぼく達を駄目にする鞄ですね、素晴らしすぎます)」
子猫達は、欠伸をかみ殺しながらそう言って、再び鞄の中に戻ろうとする。
えぇ~!! 、あの食欲魔獣達がご飯の催促をしない???
まさか、具合が悪いとか??
マサは、心配になってボディバッグの口を広げて中を覗いて見る事にした。
すると……そこにはクッキーを片手に、驚いて固まるルビィの姿が……。
黙ったまま、見つめ合うマサとルビィ。
隣でも、リコが鞄の中を覗いたようで、レオのしどろもどろな言い訳が聞こえて来た。
「(ち、違うんですにゃ、これは、えっと……にゃんと言いますか……)」
こいつら、勝手にアイテムボックスからお菓子を出して……食べてたな……。
マサは呆れて、大きくため息を付くと。
「リコ軍曹、こちらも同じ状況で有ります!!」
ルビィから視線を外さずに、そうリコに告げたのだった。
「(つ、告げ口なんて卑怯にゃ!?)」
ルビィは半泣きでそう叫ぶが、リコの静かな声がそれを遮る。
「君達……これはどういう事ですかねぇ?」
思わず、マサまでもが体を硬くしてしまう位の声色であった。
リ、リコさんや……、俺まで震え上がってしまうのは、どうしてですかね……。
程なくして。
そこには、鞄から出され、顔を両手で隠したゴメンネ状態の毛玉二つと、それを見下ろしながら仁王立ちするリコの姿があった。
「(ごめんにゃ~、魔が差したにゃ……)」
「(ごめんなさい……、もうしにゃいですぅ……)」
そう言って平謝りしている姿が……なんとも…………、可愛すぎる!?
チラリとリコを見ると、ニマニマしそうな顔を何とか誤魔化そうとしている。
「二度目は有りませんよ!?」
何とか威厳を保ちつつ、そう告げたリコ。
子猫達は、その場で泣きながら抱き合って。
「(良かったにゃ~、ちびるかと思ったにゃ……)」
「(本当です……、ぼくも危うい所でした……)」
いかに恐怖したか語り合っている。
その後ろで、余りの可愛さに怒りも忘れ、親バカ二人が身悶えしていた事を、毛玉達は気付いていなかった。
シートを広げ、ピクニック気分で昼食を摂る事にしたマサ達。
流石にシュンとして、いつものがっつきを見せない子猫達を見て。
「反省しすぎて、食欲が無くなっちゃったかなぁ……。育ち盛りだもんね……、この子達用に、アイテムボックスにおやつ枠でも作ろうか?」
怒りすぎた事を後悔するようにリコが言った。
……リコさんや、こいつらは盗み食いをし過ぎて、お腹が減っていないだけじゃないかな?
そう、マサは思ったが、リコの言う案も有りだなと考え。
「良いんじゃないか? 絶対そこの物しか食べるなよって、約束させればいいんだしさ」
そんな二人の会話に、聞き耳を立てていた毛玉達は。
「(賛成にゃ!! ホントにお腹が空いてひもじく成るにゃ!?)」
「(そうして下さい!! ぼく達は育ちざかりです!?)」
と、口々に懇願し始めたのだった。
食後、アイテムボックスに仔猫達用のおやつ棚を作って。
「ここ以外の物は勝手に食べません」
そう、しっかり子猫達に約束させた後、薬草を買い取りして貰う事にした二人。
「どの位出そうか? 全部出したら幾らになるかな」
「全部はさすがに駄目だろう? 目立ちすぎるって」
そんな話をしながらギルドに向かう。
子猫達は鞄の中の居心地が良い様で、顔を出しはするが、そこから這い出る事はしなかった。
お腹が空いたら、決められた分のおやつを勝手に食べる事だろう。
忘れてしまった時に、ニャーニャー騒がれなくて良くなった事も踏まえて、この鞄は、作って正解だったという事だ。
そんな事を考えながら、ギルドが見える所まで来た時。
二人は来たことを後悔しそうになった。
入り口で、あのギルド職員が誰かを待つように、立っていたからだ。
「何であの人が、あんな所に居るんだろうね?」
リコも目ざとく見つけ、少し顔をしかめる。
心なしか、二人の歩行もゆっくりになった。
俺達の事を待ってるんじゃ無いよな?
なるべく関りたくないな……。
完全に嫌な予感しかしないマサであった。
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