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にゃんとも不思議な異世界生活始めましたにゃ  作者: YUUURI
第1章  新天地セイタルです
36/119

36。冷静にゃ

「こんにちは~、鉱石の納品に来ました~」


 リコが店の中に声を掛けると。


「裏に回ってくれ~」


 奥から、そう叫ぶ声が聞こえてきた。

 言われた通りに横の小道から裏に回ると、そこは作業場となっている様だった。


「こっちこっち、この中に入れてくれ」


 見ると、作業場の横にある建物の入り口で、男性ががこちらを手招きしている。


「あ、はい」


 二人は念の為ギルドカードを取り出して、見えるようにかざしながら。


「ビスタスさんからの届け物です。俺はマサで、こっちがリコです」


 と、一応名乗っておく。


「そうか、俺はリードだ。この板の上に乗る様に鉱石を出してくれるか? それで運んできた量が測定できるんだが」


「あー、乗せきれない場合はどうしたら良いですかね?」


「乗せきれない? 次に運んできたら別の板を用意するぞ?」


 そんなマサとリードさんの会話に、埒が明かないとリコは思ったのか。


「そうじゃないんです、全部持ってきているんですよ」


 と吐露するが、リードさんは不審そうに目を細めるのだった。


「悪いが、あれだけの量が入るアイテム鞄を持っている様には見えないぞ、お前たちFランクだろ?」


 その言葉にリコはため息を付く。


「知人の伝手で凄い鞄を借りて来たんですよ。無理を言って借りたんで、今日だけですけどね」


「どっちにしろ、並べなくちゃならんしな……まあ、出して貰えば分かるよな」


 リコの説明に半信半疑な様子だが、倉庫いっぱいに測定出来る板を並べてくれた。


「それじゃあ、出しますよ? 一気に出すから危ないので、少し離れていて下さいね」


 そうマサが断りをいれると……物の数秒で倉庫の中は鉱石でいっぱいになったのだった。


「うわぁぁぁ!?」


 驚いたリードさんが後ろで尻餅を付いていたが、それを見たリコがドヤ顔でのたまう。


「だから、一気に出すって言いましたよね?」と。


 我に返ったリードさんには非常に驚かれたが、重量の確認と納品書のサインを貰い、無事にその場を後にしたマサ達だった。





 その後、子猫達の希望通り、屋台でゆっくり昼食を摂ると、14時過ぎにはビスタスさんの居る倉庫街に戻る事が出来ていた。


「ビスタスさん、終わったので確認して下さい」


 マサが声を掛けると、ビスタスさんは半笑いで近づきながら。


「今日はもう止めるのか? 大口叩いてた割には、1回しか運んでないじゃないか?」


 揶揄うような口調でそう言うと、あからさまに大きなため息を付いたのだった。


「そんなんじゃいつまで経っても終わんないぞ?」


「は? 何言ってんの? 人の話、ちゃんと聞こえてる?」


 間髪入れずにリコがそう返すが、ビスタスさんは気にも止めない様子でニヤニヤしている。


 リコさんや、相変わらず喧嘩っ早いんだから……。


 このままじゃ、面倒臭い事になると感じたマサは、ビスタスさんに声を掛ける。


「自分の目で確認したら良いと思いますよ? このサインだって偽造出来ない様になってるんですよね?」


 そう言って納品書を渡す。


「もう返しちゃったけど、あの鞄はすごかったねぇ!! まさかあの4つで、全部入ると思わなかったよ」


 リコが聞こえよがしにそう言うと、ビスタスさんは慌てて鉱石が置いてあるはずの倉庫に走っていった。


 ゆっくり後を追いながら。


「喧嘩っ早いのはリコの悪い癖だぞ? あんな事で一々腹立てたって損なだけだろ?」


 マサが優しくリコを諭す。


「……何でマサは腹が立たないの? あからさまに馬鹿にしてたよ?」


 リコはシュンとして聞き返してきた。


「え? だって確認もしないで、ああいう態度を取る奴に碌な奴は居ないぞ? という事は、今後付き合わない様にしていけば良いんだよから、早く分って良かっただろ?」


「……相変わらず、冷静だよね」


 リコさんや、呆れた様に言われても……。


「実際に、喧嘩腰や見下した態度を取ってくる奴なんてのは、結構何処にでもいるもんだ。そんな奴はさっさと切り捨てるに限るんだよ。そんな奴に付き合う暇はないし、こっちが疲れちまうだろ?」


 長く、サラリーマンをしていて培われた処世術なのか、それとも元来の考え方なのか? 誰にでも優しい反面、実は人一倍厳しい面を持っているマサ。

 実際、切り捨てた相手には、一切の優しさを見せるような事はしなかったのも事実である。

 けれど、一度信用した相手に見せる親愛の情は、とても深かった。


 マサは少しだけ考えてから、リコの顔をのぞき込み。


「ただな、ビスタスさんは、そんなに悪い人じゃ無いかもな?」


「どうしてそう思うの?」


「だってさ、最初に会った時『そんな所に居たら危ないぞ』って、怒鳴りつける事も無く心配してくれたろ?」


 正直な感想と事実を述べるマサを、リコはしばらく納得出来ない表情で見つていたが。


「まぁ、マサの冷静な所も好きだけどね」


 ぽつりと、頬を染めてそう言った。


 瞬間、二人の肩を子猫達がテシテシと叩き始め。


「(駄目ですよ!!こんな所でイチャイチャを始めないで下さい!?)」テシテシ


「(そうにゃ!! 恥ずかしいから止めるにゃ!?)」テシテシ


 そう、けんもほろろに、喚き出した。


「良いとこだったのに……」


 マサは残念そうにそう言って、子猫達をひと睨みすると、リコの手を引いて倉庫へ向かう。




「!”#$%&????」


 マサ達が倉庫に到着すると、入口の前には意味不明な声を発して立ち竦んでいるビスタスさんがいた。


「どうです? 確認出来たでしょ?」


 リコが含みのある言い方で声を掛けると、ビスタスさんはビクッと体を揺らし。


「…………」


 無言で、こちらにゆっくりと振り返るその顔は……涙目であった。


 強面のオジサンの泣き顔なんて、誰も見たくないぞ……。


 リコもビスタスさんの様子を見て渋い顔をしている。

 きっと、同じ気持ちなのだろう。


「え~と、納品書に間違いがないようでしたら、依頼書にサインをお願いします」


 そう声を掛けるが、顔が引き攣るのを止められないマサであった。

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