34。もう一度にゃ
明け方、宿のベッド上でまたもや「顔面毛玉ダイブ」攻撃をまともに食らったマサ。
逆に毛玉達を返り討ちにし、腕の中でモフモフさせながらも、覇気の無い顔をしていた。
「おはよう。早く顔洗って来て、ご飯食べに行こうよ」
リコが笑ってそう言った瞬間。
「「 ごは~ん(にゃ)!! 」」
マサの腕から脱兎のごとく毛玉達は逃げ出し、今度はリコの足元にゴロにゃ~んと纏わりつき始める。
何でこんなに食欲旺盛なんだ? 食べる量も俺達と変わらない……、両手の平サイズの体の何処に入っていくのだろうか?
不思議に思いながらも、考えたら負ける気がしてならないので難解な問題は心の端に追いやる。
……が、どうしても昨日気が付いた衝撃的な事実を思い出し、マサは深いため息を付いてしまった。
「どうしたの? 何か悩んでるみたいだけど……、買取の後から何か変だよ、あんまり寝れてないよね?」
リコが心配そうにマサの顔をのぞき込んできた。
う~ん……、どう言ったものか……。
押し黙るマサの様子を見て、リコはベッドの端にそっと座ると真剣な顔を向け。
「話してくれなきゃ分からないよ? 昔、約束したよね? どんな時も絶対我慢しないようにしよう、二人で話し合って乗り越えようねって……、忘れた?」
「そうだったな……」
マサは苦笑してから、リコに向き直ると昨日気が付いた事を話すのだった。
「昨日、ハワードさんに言われて気が付いたんだ……。俺達って……この世界では婚姻関係が成立してないよな?」
マサの言葉に、リコは小首をかしげて考え始める。
「……あー、そうだ……ね」
そう呟いた後、固唾を飲んで押し黙るマサに向かって。
「だから? 何か問題あるの? だって、もう一度結婚してくれるんでしょ?」
と、とても良い笑顔でそう言い放つので有った。
……リコさんや、悩んでた俺が馬鹿みたいじゃぁ無いか? もっとショックを受けるかと心配してたのに……。
ガックリと肩を落として落ち込むマサに、リコはか細い声で続ける。
「出来れば……、同じ年齢になってから、同じ日に……もう一度プロポーズしてほしいな……、それでね、あっちの世界での結婚記念日に結婚出来たら……凄く嬉しいんだけど、だめ……かなぁ?」
顔を赤くして恥ずかしそうにしているリコに、マサは言葉が出なかった。
無言でギュウっと抱きしめる。
本当に、お前には負けっぱなしだよ……、良い女に出会ったもんだな。
「良いなそれ……そう、しような……」
やっと、その言葉を紡ぐので精一杯のマサに、リコは笑って抱きしめ返してくれたのだった。
「またイチャイチャですよ?」
「困ったもんにゃ、あたち達の存在をすぐ忘れるにゃよ」
ブチブチ文句を言いながらも、決して二人の邪魔をしない子猫達だったが……、それが5分、10分と続けば話も状況も変わるのである。
抱き合う二人の間に、凄い勢いで潜り込んで来ると、ニャーニャーと喚きだしたのだった。
「いい加減にするにゃ!! もう我慢できないにゃ!?」
「いつまでやってるんですか!! ぼく達を飢え死にさせる気ですか!?」
腹を空かせた? 毛玉達の怒りは相当なもので、平謝りするマサ達だったが、10時と3時のおやつを奮発すると約束した事で、やっと矛を収めてくれたのだった。
「朝はやっぱり込み合うんだね」
「本来はこうなんだよな、俺達が遅すぎなんだよ」
朝食を鱈腹食べた子猫達を連れて、少し早めにギルドにやってきた二人。
冒険者の出入りも多く、依頼板には結構な人だかりが出来ている。
我先にとカウンターもごった返している為、近付けそうもない状態だった。
そんな、本来のギルドの様子に驚いていたのたが、突然誰かがマサにぶつかってきた。
「邪魔くせーな!? ガキは脇にどいてろや!!」
男がそう怒鳴り、こちらを睨みつけて去って行く。
「何あれ!? 私達、邪魔にならない所に居るよね?」
リコが納得のいかない顔でそう言って、男の後ろ姿を見送っている。
「あれ、わざとだぞ……。あの男の顔覚えてないか? 初日、俺達に絡んできたガスタルとかいう奴だ」
「え? あの酔っ払いのオジサン?」
キョトンとしたリコは、思い出そうと首を傾げている。
「まぁ、ああいう輩は相手にするだけ損だからさ、放っておこうぜ。それよりも今日の依頼をどうしようか?」
マサの言葉に気を取り直したリコ。
「Fランクの所は余り人が居ないから、近くまで行け行けそうだね」
何とか人込みをかき分けて、依頼板まで来る事が出来た二人。
【配達依頼】
鉱石の配達をして下さい
依頼料・・・15,000アスト
点数・・・8点
「点数が高めなのはこれくらいだな、どうする? また二人では大変ですよ~とか言われるかな?」
昨日の事があり、少し心配になったマサだが。
「これって、重たい物を運ぶんだよね? ……いい考えが有るんだけど」
リコが何やら悪い顔を作ってニヤリと笑う。
「なんだよ、妙案でも有るのか?」
そう聞くマサの腕を引き、人の居ない壁際まで連れて来たリコは、内緒話をする様に耳元に顔を寄せて来た。
リコさんや、心なしか悪代官みたいな顔つきに見えるのは、気のせいでしょうか……。
なんだかリコの今後が心配になるマサだった。
お読み頂き有難うございます。ブックマーク・評価の方よろしくお願いします。
そしてブックマーク・評価をしてくださった方、本当に有難うございます~。とても励みになります!! これからもよろしくお願いします。




