3。泣かしたにゃ
「まずは自己紹介させていただきますね~、私は~アストリアと申します~。え~と~、俗に言う神様で~す~」
「 「 ……… 」 」
両手を広げ、ドヤ顔でこちらを見る男の様子に、二人は無言になる。
神様…? 黙っていれば確かに厳かな雰囲気もあるし、何故か不思議と本当なんだろうという気持ちになるが、無駄に語尾を伸ばす話し方がウザイな。
もう少し、しっかりした話し方は出来ないのだろうか、なんか残念な感じだな……と政継は考えた。
一方で里子は、へぇ神様なんだ……でも、もう少しきちんと会話が出来ないと困らないかな。
いい大人なのになんだか心配になっちゃう……、残念な神様だねと。
元々気の合う二人だが、伊達に長く夫婦をしている訳ではない様で、同時に神様という言葉に驚くよりも、残念な気持ちの方が大きくなっていた。
「いやいやいやいや~っ、大丈夫ですよ~。私こう見えて出来る神様なんですよ~この話し方は癖みたいなものですから~残念じゃないですからぁ~」
慌てた様子でジタバタする様子に、二人は若干引き気味でいたが、あれ?と首を傾げた。
俺(私)声に出してないよね?と。
「お二人の考えた事が私には筒抜けなんですよ~、まさか二人して私を残念なんて~酷いですっ~」
騒ぐ残念神様をよそに、二人は顔を見合わせコソコソと話し出す。
「マジ物みたいなんだが」コソコソ
「噓みたいな現実なんだね」コソコソ
「ああ、在り得ないが何故か本当だと確信が持ててしまうな、”残念”だが…」チラチラ
「そうだね、不思議な事にすんなり受け入れてる自分がいるよ、”残念”な事に」チラチラ
横目に見ながら話す二人に、アストリアと名乗る神は。
「だ~か~らっ~!! 残念なんて酷いですぅ~!!」
と泣き出してしまい、宥めるのに大変な労力を費やす羽目になった。
何とか機嫌を戻す事に成功した時、アストリアの手には、政継が里子と食べる為に昨夜買って来たチーズケーキのお代わりまでもが乗せられていた。
「いや~こちらの食べ物は美味しいですね~。来た甲斐が有りましたよ~」
しっかり食べきり、出された紅茶を飲み干すと、姿勢を正して二人に向き直る。
「政継さ~ん、里子さ~ん、お二人にお願いが有って参りました~。ご質問も有るでしょうが~、まず私の話を一通り聞いて下さい~」
ただし、話し方は相変わらず残念なままだった。
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