28。もしもにゃ
「買い取ってほしい獲物が有るなら出しな」
と、ハワードさんに言われたので、奥の作業台の一つに乗せられるだけ出してみた。
「おい……、これ全部お前たち二人で仕留めたのか?」
「そうですよ、これで四分の一ですかね」
一応、鞄から出している風を装っているので、実は指輪がアイテムボックスとは思うまい。
「はぁ? 今6頭目だぞ……、四分の一って……、全部で24頭も狩って来たのか? 二人で?」
「そうですよ。乗せきれないのはここに出しますね」
マサはそう言って、次々とシルバーウルフを山積みにしていき、ハッと思い出した事を付け足した。
「一匹だけ黒いのが居ましたね」
そう言いながら山の上に黒い狼を乗せる。
「お、おいっ!! こりゃあブラックウルフじゃないか!?」
「20以上の群れで、しかもブラックウルフが率いてるとなるとBランク相当ってところですね……」
驚いているハワードさんに対して、冷静な口調のランゾさん。
リコがランゾさんに確認するように聞いた。
「え? シルバーウルフは群れだとCランクじゃないんですか?」
「一般的にはそう言われていますね、ギルドの方もそう規定が有りますが、群れと言っても精々10頭前後の事を指しています。20頭以上の群れで、ましてや群れを率いているのがブラックウルフとなると……間違いなくBランクですね」
「それだけじゃねえぞ、何だこの倒し方は? どれもこれも頭を狙って綺麗に一撃じゃねえか」
「ほう? 一撃ですか……これだけの数をたったお二人で……」
そう呟くランゾさんはとてもいい笑顔で二人に振り返った。
「そして、これだけの量を入れられる収納鞄に、腐敗が全く無い事を鑑みると……、気のせいでなければ最低でも時間遅滞、もしくは停止が付与されているなんて事は無いですかね……」
確信めいたその口調に、マサとリコが何も言えないでいると。
「ランゾの旦那、さすがにそれは無いでしょうよ。量が多く入るとか、時間遅滞ってのは稀に有るけどよ、時間停止ってのはダンジョンから出ても、物凄い高値で国が買い取っちまうから、一般には出回ってねえ代物って聞きますぜ?」
「皆が絶対に売り払うわけじゃないですよ? 只、吹聴しないだけで密かに持ち歩いてる者もいますからね」
ランゾさんとハワードさんは会話しながら、真剣な顔で二人をジーッと見つめてくる。
さすがのリコも誤魔化す言葉が浮かばない。
どうしようかと困り果てた時だった。
「まあ、そんな事は無いとは思いますがね。もしもそうであるならば、危険を自覚して気を付けるように指導しなくては成らない所でしたね」
「まったくでさぁ、もしも本物なら、殺してでも手に入れようとする輩が多いって事も、理解させる必要がありますぜ?」
そう言って笑い出したランゾさんとハワードさん。
その様子に、あえてそのような言い回しでマサ達に注意を促してくれているんだと気づかされ、頭が下がる思いの二人だった。
「もしも俺達が”それ”を手に入れた時は十分に気を付けますね」
「そうですね、もしも、ですよね。でも心配して下さるお気持ちは大変嬉しいです」
と素直に気持ちを伝えるのであった。
うんうん、と頷きながらもランゾさんは続ける。
「あそこまで物が多く入ったり、時間遅滞もFランクでは十分危険ですからね、お気を付け下さい」
この事をきっかけに、二人にとってランゾさんは「只者ではなさそうだけど、信用の置ける人」となったのだった。
代金は「数が有りすぎるから明日また来い」とハワードさんに言われてしまったので、Fランクの依頼確認をする為にギルド内に戻る事になった。
「付いて来て正解でした、やはり面白い物が見られましたよ」
と、ランゾさんに言われてしまい、笑うしか無い二人。
今日は確認だけで、依頼を受けるのは明日以降だと話し、ランゾさんと別れた二人はFランク依頼書が張り出されている壁の前までやって来た
「一角兎討伐からお届け物の配達までと、結構幅広い内容だね」
「そうだな、それぞれポイントが付いてて、6ヶ月間で一人、合計100ポイント集めるわけか」
ざっと内容を確認した二人はギルドを出て、ラウネロさんのお店を探す事にした。
「ラウネロさんのお店ってあそこじゃない?」
リコが指さした先には教えて貰った特徴的な青い壁の店があった。
石造りそのままの色合いが多くを占め、有っても赤茶のレンガ風か少し黒っぽい石が使われている程度の街並みだが、そこだけは際立っていた。
「ラウネロさんが言ってたよね、とにかく青くて目立ちますって」
「その通りだな、スゲー分り易い? いや、間違いようがない? そんな感じだな」
驚きつつも店内に入ってみると、そこは冒険者の専門店と言っても過言ではないラインナップの店だった。
武器・防具の他にも、野営のセットや冒険者用の衣類が有り、カウンター近くにポーションまでもが置かれている。
キョロキョロと、好奇心丸出しで眺めていた二人に後ろから声が掛かる。
「マサさんとリコさんじゃないか!? 昨日、あの後大変だったそうだね。 心配してたんだよ」
振り返るとラウネロさんがバックヤードから出て来る所だった。
「ラウネロさん? あの後、冒険者登録してきましたけど……」
……まさか……ね、とマサの心はザワザワしている。
リコは不思議そうにラウネロさんに尋ねた。
「何を心配したんですか?」
リコさんや……聞いちゃうんだね、聞かないという選択肢も有るんじゃないかなぁ……。
そんなマサの気持ちは誰にも届く事は無く。
「何がって、君達の噂でもちきりだよ?」
!?!?、やっぱりかよ~!? てか、何処まで話が流れてんの? ランゾさんなの? ランゾさんが絡んでるから噂になるの?
マサはガックリと肩を落としてため息を付くしかなかった。
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