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にゃんとも不思議な異世界生活始めましたにゃ  作者: YUUURI
第1章  新天地セイタルです
19/119

19。約束にゃ

「今日こそ森を抜けたいよね、もう五日目だよ」


「結構深い所に転移したんだな、こうも景色が変わらないとは……、さすがに飽きて来たよな」


「まだかにゃ、早くご当地グルメを堪能したいにゃ~」


「楽しみです、い~っぱい食べましょうね」


 そんな会話をしながら3時間ほど歩いただろうか。

 気のせいか森の雰囲気が徐々に変わってきた様に感じる。

 木々の間も広くなり、太さも細めの物が増えて来た。

 そして何より、雑草が踏まれて人? が歩き回ったらしき形跡も見え始めたのだ。


「あれ見て!?」


 前方を指さしながらリコが叫んだ。

「どこ?」と問いながらも指差された方角に目をむけると、木々の間になにかが見える。

 身体能力の他に五感も優れている為、目を凝らすと結構遠くまで見えるのだ。


「木の向こう側明るくない? ほら、道らしきものが見えるよ!!」


 嬉しそうにリコは叫んだ。


「本当だ!? 間違い無く道路だ!! やっと出れるぞ!?」


 マサも興奮気味に返答し、肩に居るルビィを見るが。


「やっとご飯が食べれるにゃ~」


 と疲れたような声を出す。


「母様、早くお昼ご飯を食べましょう!!」


 リコの肩に居るレオも懇願するように言って来た。


 森から出られる事よりも飯の心配かよ……、だいたい、少し前におやつ休憩したよな? ジュースもクッキーも鱈腹食ってただろ……、さすがうちの食欲魔獣達とでも言うべきか……。


 マサは呆れて苦笑するしかなかった。






 森を抜けると、目の前には左右に続く土の道が現れた。

 幅は5m位で馬車が付けたであろう轍も有った。


「間違い無いな、やっと文明の痕跡にお目にかかれたよ」


「長かったね、出られないんじゃないかと思った」


 安堵するマサ達だったが、彼らは知らなかった。

 上級冒険者でも、同じ所から森を抜けるならば普通は10日以上の日数が掛かる事を。

 そして、それを彼らは5日で走破した事を……。






 森の出口に辿り着いた安堵の余韻も感じさせぬまま、子猫達の「お昼ご飯」攻撃に撃沈した二人は、道が見える範囲で森に戻り昼食を取る事にした。


 アイテムボックスに入れて有った作り置きのにおにぎりや唐揚げが、見る見るうちに食欲魔獣に吸い込まれていく。

 マサはその様子を冷や汗をかきなが見ていると。


「で、右? 左? どっちに行くの??」


 リコが自分とマサの分を皿に確保しながら聞いてきた。


「そうだな……ここはまたレオのスキル『野生の勘』で決めてもらうか?」


 マサがそう返答した時、何処からかガタガタゴロゴロという音と共に蹄の音も聞こえて来た。

 それは段々と大きくなり、左から右へと流れていく。

 木々の間から見えたのは二頭立ての幌が付いた荷馬車だった。


「今のって馬車だったよな?」


「うん!! 御者台に二人座ってたね!? 第一異世界人発見だよ!? 顔はハッキリ見えなかったけど金髪と赤毛の男人? に見えた」


 マサとリコが馬車の進行方向を見ながら話していると。


「はにはしゃへんれらにゃ」モグモグ


「たふんれすけろ、"もーふふれいはるにょまひひにふふろ"っれひほいまふぇんれしらは?」モグモグモグ


「いや、お前達が何言ってるか分かんないんだけど……」


 マサが呆れ顔で子猫達を見ると、その横で静かに笑みを浮かべているリコも声を掛けた。


「お行儀が悪い、話すか食べるかどっちかにして……」


 気のせいでは無く、その微笑みは子猫達を震え上がらせるほどのものであった。

 

 ルビィとレオは、慌てて飲み込み姿勢を正す。

 何故かマサも一緒になって正座をしていた。


 決してビビった訳ではない……。


 子猫達には御者の声が聞こえていたらしく。


「何か叫んでたにゃ」


「多分ですけど”もうすぐセイタルの町に着くぞ”て聞こえませんでしたか?」


 チラチラとリコの様子を伺いながら言う。


「そうか町か……。それじゃあ、その町に行ってみないか?」


「いいんじゃない? もうすぐって言ってたんでしょ?近いってことだよね?」


「「 賛成!! 」」


 胡麻を擂るかの様にリコの意見に賛同する子猫達。

 その様子にリコも苦笑いを浮かべていた。


 お前らどんだけリコが怖いんだよ? いや、俺もたまに怖いと思うけどけど……。




 昼食を終え、右側に進路を取ると道なりに進んで行く。

 なだらかに大きくうねったカーブを描いて、森の中を横断する様に続いていた道だったが、徐々に森が開けていくのが分かる。

 その向こうは草原になっている様だった。

 最後のカーブを抜けた時、前方に馬車が止まっているのが見えた。


「何であんな所に止まってるんだ?」


「さっき通った馬車しゃない? なんだろうね……レオ、危険察知で何か感じる?」


「う~ん、特に危険な感じはないですね。ルビィはどうですか?」


「何も感じないにゃよ?」


 そんなレオ達の会話聞きながら、マサは考えを巡らせる。


 俺達が元居た世界ならさほど気に留める事も無いが、ここは命の危険が有る異世界だ。

 用心に越した事は無いよな……。


「一応このまま進むが、念のためいつでも剣か魔法を使えるようにしておこうか?」


 リコも同じ意見なのか「ここは異世界だもんね」頷く。


「後、この前約束通りルビィもレオも絶対人前でしゃべるなよ? 間違いなく攫われて売り飛ばされるからな? 絶対だぞ!?」


 この世界には話をする魔獣はドラゴン位しか居ない。

 もし、それがバレたら間違いなくトラブルに巻き込まれてしまうだろう。


 リコも真剣な顔で言い聞かせる。


「何度も言ったけど、本当に話しちゃ駄目だからね!! もしあなた達に何かあったらと思うと、父さんも母さんも……約束だからね」


 と、最後は涙目になっている。


「分かってるにゃ、心配ないにゃ」


「約束します、ぼく達も離れたくないです」


 子猫達はそう言って、ゴロゴロと喉を鳴らしながら二人に額を擦り付けてくるのだった。

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