17。出発にゃ
あーでもない、こーでもないと忙しく日々は過ぎ、とうとう出発の日となった。
マサは生成り色のシャツに黒のズボンと茶のブーツ、こげ茶のポンチョ風マントと、同色の斜め掛け鞄を脇に抱えている。
腰には長剣を差し肩にルビィを乗せた状態で、リコをマジマジと見下ろしていた。
「他にも沢山種類が有ったよな? なのに何で俺と全く同じ格好してんの!? いっ、嫌な訳ではないが……なんだよ~、今更お揃いってヤツか? 照れ臭いなぁ……」
などと満更でもない様子でリコに声を掛ける。
「え? はぐれた時説明しやすいでしょ? 同じ格好の人見ませんでしたか? って。それにね、この方が誰から見てもツレだって分かるから」
と、ごもっともな理由で軽く流されてしまった。
リコさん冷めてますね……、そこに愛は有りますか?
ちょっと挫けそうになるマサだが。
「でも……、折角若くなったんだから、たまには良いでしょ?」
リコがそう言って、少し照れ臭そうに笑う様子に気持ちはあっという間に浮上した。
「そうだよな、たまには良いよなぁ」
モジモジしている二人に、痺れを切らした子猫達の容赦ない言葉が降ってきる。
「そんな事はどうでも良いにゃ~、出発の為に早起きしたんだからもう出るにゃ!!」
「父様、忘れ物は有りませんでしたよ。早く行きましょう!!」
お互いの肩に乗っているルビィもレオも、待ちきれない様子。
とくにルビィなんかは、ばんばんマサの肩を叩いて急かしてくる。
中々の痛みに、小さくせに何でこんなに力が有るんだ?と思ったが益々怒りそうなので言わない事にした。
「昨日話し合った通り、まず森を出るぞ。時計に方位確認機能が有るからそれを利用して行こう」
「分かった、東に進んで行くんだよね?」
「ああ、レオのスキルでは東だって教えてるんだよな?」
マサがそう言うと、リコの肩に乗るレオは。
「間違いないです、東が良いって『野生の勘』がいってます」
そう言って自信たっぷりに胸を張る。
可愛さの余り、なで繰り回してそうになるがそこは堪えて。
「よし、そうしたら安全第一で行こうぜ!!出発だぁ!?」
そんなマサの威勢の良い声につられた面々も。
「「「 おーっつ!? 」」」
元気に声を張り上げるのだった。
太い幹の間を抜け倒木を避けながらも、肩に子猫を乗せた二人は結構なスピードで進んでいた。
時に「異世界モノの定番でしょ?」と言うリコに促され、鑑定を使って薬草を探したり、子猫達のおやつの催促に負けて休憩したりしていたが、何事も無く順調に前進出来ていた。
結界を出てしばらくたった頃、そろそろ昼食にしようかと話している時だった。
「止まるにゃ!?」
「何か来ます!!」
ルビィとレオの声に二人は慌てて立ち止まる。
「どうした?」
マサが訪ねた瞬間、ガサガサと草を揺らす音と共に何かが勢い良くリコめがけて飛んで来た。
「「 !? 」」
何が来たんだ!? 驚くと同時にその姿を目で捉えるとリコは瞬時に身をかわし、マサはソレを剣で刺し貫いた。
マサとリコはこの時初めて、ハイヒューマンの身体能力の凄さを実感したのだった。
見るとそれは角の生えた5~60㎝はある兎だった。
「これって一角兎?思ってたより大きいね」
「ああ、でかいな」
「暢気に話してる場合じゃないにゃ!」
「まだ沢山こっちに来ますよ!! 母様も一応剣を抜いてください!?」
子猫達に叱咤され、二人はガサガサと複数の音がする方に体を向ける。
マサの心は焦りも無く冷静だった。横ををチラリと見ると、リコも落ち着き払った様子で剣を握りしめている。
その姿に安心し、また意識を前方に集中させるのだった。
「一角兎って食べられるし毛皮も取れて、角なんかポーションの材料になるんだっけ?」
「小さいけど魔石も有るはずだよな」
ウキウキと会話を続ける二人に。
「父様も母様も誤魔化していないで現実を見ませんか?」
と妙に冷静なレオの声。
「結構な数だったな、何匹だ? 兎だから何羽? 魔獣だから匹で良いか」
「ん-とね、ふんふんふん、ぜんぶで13匹だね、マサ凄かったね!? バッサバッサと切り倒してさ」
「リコだって頑張っただろ? 剣と魔法も使ってたよな」
興奮冷めやらぬ、とでも言う様に話し続ける二人。
「……そうにゃ、確かに13匹いたにゃ」
そこに怒りを押し殺すようなルビィの声も加わるが、構わず二人は会話を続ける。
「色んな事がスローモーションみたいな感じがしたよ」
「それな、俺もそんな感じだったわー」
「ハイヒューマンって凄い種族だね」
「ああ、本当にな……」
その時、もう我慢できないとばかりに、怒りからか体を震わせるルビィが叫んだ。
「でも……これは無いにゃー!?」
其処には細切れになった何かの残骸や、穴だらけになった生物だったと思われる物、または黒焦げになった分からない物体が広がっていた。
風上の為かあまり血生臭くはなかった。
「あり得ないにゃ、こんな……こんな」
ルビィは言葉にならないらしく、レオがその後に続ける。
「酷すぎます!! これじゃあ食べる事も売ることも出来ませんよ!? 」
「そうにゃ!! やりすぎにゃ! 限度というものがあるにゃー!?」
その後、子猫達に正座させられ、これでもかとお説教を受けたのは言うまでもない。
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