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にゃんとも不思議な異世界生活始めましたにゃ  作者: YUUURI
第1章  新天地セイタルです
16/119

16。限界突破にゃ

 次の日の朝、子猫達からの朝食の催促で早くから起こされた二人。


「昨日あんなに食べたのに……」


 マサが言い掛けた瞬間 『ギロッ』 と子猫達の痛い視線が突き刺さる。


 リコは作り笑いを子猫達に向けながら、マサにだけ聞こえるような小声で囁く。


「ダメだよ、昨日の話しちゃ!! また怒らせたら食欲魔人じゃなくて……食欲魔獣になっちゃう!!」


 そうだった、と昨日の事を思い出したマサは取り繕う様に笑顔で子猫達を抱き上げる。


「あー、腹が減った、何を作ろうかなぁ」


 明らかに棒読みであったが、子猫達は気にも止めていない。


「父様、ぼくはパンが良いです!!赤くて甘いのを塗ってほしいです!!」


「あたちも!!あたち白くて甘いのが良い!!」


 元気に叫んでいる様子がとても微笑ましいが、マサには何の事か理解出来ないので、里子を振り返り尋ねる。


「何の事?」


「昨日のお昼に出したサンドイッチに幾つか有ったんだけどね、多分いちごジャムと練乳の事だと思う」


「そうなんだ、気づかなかった」


「この子達鼻が利くから……そればっかり狙って食べてたもんね、すぐ無くなってたよ」





 朝食を終え、リクエストが叶い満足したルビイ達の様子に一安心した二人は、昨日の事を踏まえて『ご飯の作り置き』なる物を作る事にした。

 アイテムボックスに入れて置けば、出来立てほやほや状態で出す事が出来る。


「取りあえず今日のお昼ご飯用も含めて、出来るだけ品数を作る予定。下ごしらえだけでも後で作るとき楽だしね」


 リコの指揮の元、手を動かすマサだったが、匂いを嗅ぎつけた子猫達を上手にいなしながら作業するはめになった。


「味見したい」と目をうるうるさせる攻撃も、「一口だけでも」と上目遣いのあざとい攻撃も、リコの恐怖の微笑みの前では、まさしく赤子の手を捻るかの如くであった事を記しておく。





 昼食後またしても、ひと騒動起こる事となった。

 外に出た所で、マサがアイテムボックスから取り出した、一振りの細身の剣をリコに手渡した時の事。


 リコが不思議そうに剣を見ながら。


「何この剣?どう使う……ええぇ~っっ!?」


 と大きな声を出して、情けない表情でマサを見る。


「またしても神様にしてやられたよ……」


 と剣をマサに返してきた。


「は? 何言ってんの?」


 不思議そうに問うマサに、リコは深いため息を付くと。


「剣に向かって『これはなんだ?』って思ってみてよ」


 リコさんや、そう言われてしまうと嫌な予感しかしないんだが?


 そう思ったが、取り合えず言われた通りにやってみる。


 剣を見ながら『これはなんだ?』と考えた瞬間、頭の中に文言がはっきりと浮かんできた。




 鉄と魔銀を錬成して作くられた中級の短剣。

 作者は不明ながらも切れ味が良く、折れにくく錆びずらい上に軽い逸品。

 買取価格 30,000アスト



 マサの苦い顔を見て、リコは嘆くように言う。


「この世界に鑑定魔法は無いでしょ?」


「……これはバレたら不味いよな、下手したらどこかの組織に囲われてしまうレベルたぞ……」


 暫く無言で、困ったなと見つめ合っていると、リコの顔がパァっと明るくなった。


「もう深くは考えない!! 有る物は有る、出来る事は出来る、うんしょうが無いよ。神様も私達が心配だから色々してくれるんだし、感謝しようよ。チート万歳だよ? 秘密がバレない様にだけしないと駄目だけどね」


 割り切った清々しい笑顔でそう言ったのだった。


 ……リコさんや、ポジティブが限界突破しちゃったのかい?それを人は諦めたと言うんだよ?




 リコの言う通り諦める事にして、気を取り直した二人は剣の練習をしてみる事にした。


 マサが自分用に取り出したのはリコの剣よりも太目で長かった。

 この際だからと鑑定を掛けてみる。



 鉄と魔銀を錬成して作くられた中級の長剣。

 作者は不明ながらも切れ味が良く、折れにくく錆びずらい上に軽い逸品。長いながらも取り回しがとても良い。

 買取価格 50,000アスト



 なるほどね、と思いながら軽く構えて振ってみると手に馴染んでとても振りやすい。


 マサは小学6年生まで真面目に少年団で剣道をやっていたが、竹刀とは物が違う上に何十年と離れていた為、扱えるか心配したが、流れるように身体が動き目の前の大木がこれでもかと切り刻まれていく。

 まるで今まで剣術を習っていた者の様な剣捌きだった。


 少しだけ息を弾ませ呟く。


「どうしてスキルも無いのに剣が扱えるんだ?」


 自分でも驚き、唖然とした独り言だったが、レオがそれに答えた。


「今母様に聞きましたが、剣道という剣術を昔されていたんですよね? 多分ですけど、神様が魂をこのアストリアに馴染ませる為に身体を『ハイヒューマン』に創り替えたんだと思います。その過程で魂に刻まれた記憶とハイヒューマンとしての身体能力が相乗効果を生んだのではないかと思うんです」


 あくまで持論ですよ、とレオは言ったが、そうかも知れないと思う事にするよ。

 段々と、驚いたり考えたりする事が馬鹿らしくなってきた……リコみたいに有る物は有るで良いか、と心の奥の方にそ~っと訝しむ気持ちを追いやった。


「レオは頭が良いな、感心するよ」


 そう言って頭をなで繰り回して心の平穏を保つマサであった。

お読み頂き有難うございます。ブックマーク・評価の方よろしくお願いします。


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