12。ステータスにゃ
時間を見るとまだ19時を回ったところだった。
政継はインストールされた知識を思い浮かべる。
この世界の魔法属性の基本は火・水・風・地と無属性の五つのみで、スキルは主に生活魔法・攻撃魔法・防御魔法・回復魔法・使役魔法である。
そして、この世界では魔力が無い人は絶対いない。
有るのは魔力量の差だけであり、誰でも最低生活魔法のいくつかは使える。
※ 生活魔法といっても種類は沢山有り、どんなに才能が無い人でも、その中で着火(指先に小さな火を灯す)・飲水(手の平から綺麗な飲み水を出す)・身体強化(自身の身体を強化し筋力を高めることが出来る)の3つは必ず備わっている。
ただし、魔力量によって使用時間・威力は変わる。
また、魔力量は目に見える明確な数値は無い。
多ければ長時間無くなるまで使えるし、少なければ短時間で使えなくなる。
誰もがなんとなく「まだまだ使えそう」とか、「もう無くなりそう」と感じるだけ(魔力が切れても死ぬことは無いが体がだるくなる)らしい。
なるほど、と納得した政継はみんなに声を掛ける。
「ステータス確認してみようか」
「待ってました!」
「やっとにゃ」
「どうなっているか楽しみです」
ワクワク感を誰も隠せていない様子で、三者三様の言葉を投げ掛けてくる。
「誰から行こうか?」と問えば待ちきれないのか。
「まず、それぞれが自分の確認をしてからお互い見せ合うっていうのはどう?」
身を乗り出してそう言う里子の言葉に全員が賛成したので、まずは自分のスキル確認から行うことになった。
政継はくるりと皆に背中を向け。
言葉に出さなくても見えるんだったか? とインストールされた知識を探り当てる。
頭の中で【ステータス】と考えると目の前にタテ30㎝ヨコ50㎝位の半透明な薄青色のボードが現れた。
少し驚くも、これがステータスボードかと嬉しくなった政継だったが、ボードを確認したとたん。
「えっ何で ?」
と、言葉を発してしまった。
【 名前 】 〈 名前を入れてください 〉
【 種族 】 ハイヒューマン
【 性別 】 男
【 年齢 】 15歳
【 職業 】 無し
【 魔力量 】 ???
【 魔法属性 】 火・水・風・地・無属性
【 スキル 】 言語理解 アストリアの一般常識 (超)健康な身体 (超)丈夫な身体
【 従魔 】 ルビィ : 神獣 ブラッディキャットの亜種 神の使徒 レオンハルトの番
【 加護 】 神獣の護人 神の友人 コンシェルジュ
まてまてまてぇ!? 変な所が有るんですけどっっ??
焦って振り返ると、里子もまた驚いた様子を見せていた。
「何か変な事が書いて有るのは俺だけかな……」
里子にそう声を掛けると。
「私も……名前も無いし、ちょっと見てほしい」
そう言って政継に見える様にステータスを開いた。
【 名前 】 〈 名前を入れてください 〉
【 種族 】 ハイヒューマン
【 性別 】 女
【 年齢 】 15歳
【 職業 】 無し
【 魔力量 】 ???
【 魔法属性 】 火・水・風・地・無属性
【 スキル 】 言語理解 アストリアの一般 (超)健康な身体 (超)丈夫な身体
【 従魔 】 レオンハルト : ブラッディキャットの亜種 神の使徒 ルビィの番
【 加護 】 神獣の護人 神の友人 コンシェルジュ
「俺と同じ……」
そう言って里子にも開いて見せる。
「何で名無しなの? 岡林里子って名前が有るよ?」
「まずそこが分からん」
二人が頭を捻っていると。
「父にゃん達の名前は異世界の名前にゃ、この世界に漢字は存在しないにゃ」
「そうですよね、こちらで付け直さなければいけませんね。貴族でなければ苗字もないですからね」
ルビィもレオも当たり前だという顔でそう言った。
「ねえ、魔法とかどうやって確認するの? 魔力量の記載も変だし、属性は有っても私達は使えないの?」
捲し立てる里子にまたもや呆れ顔のルビィだったが、はっと何かに気が付いた様子で、レオとコショコショと小声で話だした。
三毛と灰色の毛玉がフヨフヨしている様は何度見ても飽きる事が無い可愛さである。
二人はたまらず ”にたぁ~”っと、決して人には見せられない笑みを浮かべてしまう。
暫く何やら深刻にやり取りした後、結論が出たのか。
「まずは確認したい事が有るにゃ」
と政継と里子に向き直った。
「この世界にはステータスなんて存在しない事は理解してるかにゃ?」
質問を受けた政継も里子も知識を探っているのだろう「う~ん」と唸り考え込み。
「そうだね、普通はこんなの見えないから自分のステータスは分からないんだよね」
「ああ、これは俺達だけの特別な力って事か」
「そうにゃね、あたち達だけ見えている物にゃ。他の人の前でステータスを開いても相手には見えてないにゃ。じゃあ、この世界の人はどうやって魔法を使うか? それは自分で解るからにゃのよ」
そうルビィに説明を受けた二人は「はて?」と考え込む。
里子は元々、深くは考え込むタイプでは無い為。
「分かんな~い、政継まかせた!!」
と勝手に放り投げて来た。
まぁいつもの事だな。
苦笑いで返すも、政継はすぐさま答えるのだった。
「自分で解る?理解してるって事か」
「そうにゃ、ある意味自分に問いかけてみたらどうにゃ?」
その言葉で政継も里子も「なるほど」と頷くと、言われた通りに自分に問いかけてみた。
「わぁ!! 本当だ、私魔法を色々使えるんだね!!」
「色んな種類の魔法を、次々思い浮かべる事が出来るんだな!!」
「「 凄い凄い!! 」」
そう言ってはしゃぎ出す二人を、レオもルビィも手の掛かる子供を見る目で見ていたのだった。
どちらが子供か分からないな……と。
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