表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
にゃんとも不思議な異世界生活始めましたにゃ  作者: YUUURI
第2章  町の名はバルバです
117/119

33。終わってなかったにゃ

「それは、マサと娘さんを結婚させるということでしょうか?」


 急に雰囲気が変わったリコに、商会長は顔をひきつらせた。

 きっと、リコも軽い威圧をかけているのだろう。


「わ、悪い話では無いと思うのですが? ゆくゆくはベスラン商会の商会長に……」


「「お断りします!!」」


 商会長が言い終わる前に、リコだけでなくマサも断りを入れる。

 リコが嬉しそうに笑ってマサを見たので、その腕を引いて椅子に座らせた。


 大丈夫だと言わんばかりに、ニッコリと微笑むマサ。

 内心、ここで止めておかないと、間違いなくリコが暴れるだろうと予測しての行動ではあったが、どちらにせよ断る事には変わりないのだ。


「いきなり何を言い出すんですか? 俺はどこの馬の骨とも分からぬ輩ですよ。それに、あなた方が思っている様な知恵など全く有りませんから」


「いやいや、まずはお互いを知ってからとなりますが、ご自身が気が付かれていないだけで、何かしらの知恵をお持ちかも知れないじゃないですか。私の情報では見習いを助けるなどの正義感もあり、他者への対応や振る舞いにも好感が持てると聞いております。その若さとランクの割に良い装備を持たれている所を見ますと、強さもそれなりに有るのかと」


 おいおい、どこまで調べてるんだよ……。

 親子してストーカーなのか?


 鳥肌が立ちそうになりながらも、マサは気を引き締めて商会長を見る。


「そこまで調べていながら、俺とリコの関係までは分からなかったんですかね?」


 マサは自分でも驚くほど冷たい声でそう言った。


「それは……、特別な関係だろうとは理解しておりますが、まだ結婚をされている訳では無いのでしょう? でしたら、(タバサ)にもチャンスを下さいませんか? あの子は器量良しですし、話せば気に入る()()なんですよ。リコさんも悪いようにはしません。私がよりすぐりのお相手を探しますから……」


 あの娘にしてこの親有り?

 独自の観念に囚われてるのか知らないが、会えば娘を好きになる()()って思い込みが凄すぎる。

 ハッキリ言って、アホだ。

 親バカ過ぎて、言葉も出ない……。


 リコが鼻息荒くフーフー言っているのを横目に、マサはきっぱりと拒否する事にした。

 遠回しに言っても理解しないだろうと思ったからだ。


「もう一度言いますが、お断りします。というか、()()()!! 申し訳無いですが、お宅のお嬢さんは俺の好みでは有りません。それに、あなたの物言いに俺は気分を害されました。なにが「ウチの娘に会えば気に入るはずだ」ですか? 一度会いましたが恐怖しかなかったですね」


 だんだん話しているうちに、自分がヒートアップして来ている事に気が付いた。

 なんだか、簡単に他の女に乗り換える男だと言われている様な気がして面白くなかったのも有るが、リコを軽く扱われているようで酷く憤慨していたのだ。


「俺はリコが好きだし、こいつ以外と一緒になるつもりはありません!! 付き纏われるのは迷惑です!!」


 隣でリコがニマニマしている事が分かって、なんだか照れくさくなったマサ。

 しかし、言いたい事は言えてスッキリだ。

 商会長はまだ何やら言いたげだったが、続くリコの言葉に黙り込んでしまった。


「今の私達は婚約関係にあります。どことは言えませんが、私達が生まれた国では婚約は婚姻と同等の誓いであり、神との契約です。それを横から邪魔する様な真似をされると言うことは、天罰が下る行為だとおわかりになりませんか?」


 この世界の『神との契約』とは絶対的な意味合いを表している。

 実際、国によってその契約には色々種類が有るので、リコの言うことが嘘だとは言い切れないのだろう。


「セオドア、お前達親子はどうして思い込みが激しいんだ? そのせいで他人を困らせている事を理解しろよ」


 ため息交じりのギルマスの言葉に、商会長は項垂れてしまった。


「仕方無いんだよ……。それだけ初代の言葉は偉大なんだ……。本当に申し訳無い……だったらせめて、せめてベスラン商会で働いてくれないだろうか」


 反省でもするのかと思ったのだが、考えは甘かったようで、全員に睨まれ、その後は懇々とギルマスから説教を受けた商会長。


 結果、しっかり謝罪を受ける事が出来、付き纏わない事を約束させた。

 ギルド違反の方もしっかり調べ、それなりの違反金を払う事が決まった。

 また、お嬢様に関しては即刻王都に送り返す事に。


 こうして、訳が分からないストーカー事件は一見幕を閉じたかのように思われた。

 のだが……。


 数日後、思ってもいない形でぶり返すのであった。




 その日、マサ達は晴れやかな気持ちで町に出ていた。

 気兼ね無く店を巡り、子猫達と共に食べ歩きを楽しむ。

 日も暮れてきて、そろそろ帰ろうかとなった時。


((ねえ、誰かに後を付けられてるね))


((そうだな。どうする? ()くか?))


 《サーチ改》には赤い点が3つ。

 先程からマサ達と付かず離れずの状態で付いてきている。


((面倒だけど、片付ける方がいいな))


((そうだね〜。捕まえちゃおう))


 道に迷ったふりをしながら横道に入り、人の気配の無い所まで誘導。


「困ったなー、道に迷ったみたいだー」


「そうだねーどうするー?」


 突き当りに来た所で、棒読みの発言をしてみた。

 すると、思った通りガラの悪い男達がマサ達の後ろに集まってきた。

 二人がゆっくり振り返ると、男達がニヤニヤ笑っている。


「おいそこのボウズ、俺達と一緒に来い。お前を待っているお方がいるんだ」


 おいおい、俺かよ……。

 ストーカー事件は終わったんじゃなかったの?


 そう思って、マサは頭を抱えたくなったのだった。

お読み頂き有難うございます。ブックマーク・評価の方よろしくお願いします。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ