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にゃんとも不思議な異世界生活始めましたにゃ  作者: YUUURI
第2章  町の名はバルバです
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28。安心にゃ

 程なくして部屋に戻ったマサ達。

 子猫達は顔を突き合わせて、キャッキャと食堂の出来事の話に花を咲かせている。


「(母様は凄かったですね〜。さすがでしたよ!!)」


「(ホントにゃ〜。スッキリしたにゃね〜)」


 そんな子猫達をニマニマして愛でているリコ。

 マサは機嫌の良さそうなリコに、恐る恐る声を掛けた。


「……なあ、リコ? 初めからあんな作戦練ってたのか?」


 視線は子猫達に向けたままの状態で返事を返すリコ。


「最初からって訳じゃないけど、怒らせたら何か吐くかな〜って思ってたよ?」


 ブリジットさんが来る事も知っていたし、ベスラン商会の依頼停止の話もマルセルさんから聞いていたからと、リコは言う。


「……そうですか」


 マサはこの話を深く聞く事を諦めた。

 これ以上考えても、理解が追いつかないからだ。

 リコが任せてと言ったから任せた。

 その結果しっかりザマァ出来たのだし、それでいいだろう。

 それよりも相談して置かなければならない事が有るのだ。


「ベスラン商会は確実に俺の居場所に気が付いてるって事だよな」


「そうだね。ロロイさん達に迷惑掛けちゃいそうだよね……」


 二人同時に顔を曇らせる。


「ギルマスは待ったを掛けてきたけど、一体何がどうなってるのかさっぱりだよね」


「そうだな、どうして話が進んで無いのかさえも分からん」


「どうせ明日ギルドに行くんだから、しっかりお話させて頂きましょう」


 にっこり笑うリコの背後に業火の炎が見えた気がして、マサは目を擦った。


 リコさん、まだお怒りは静まっていなかったんですね。


 とりあえず頑張ったリコを労うため、アイテムボックスから彼女の好きなチョコレートケーキを出す。

 まあ、別名ご機嫌取りともいいますが……。


「頑張ったご褒美……」


 そう言ってリコの前に差し出そうとした途端、毛玉が2つマサの手元に飛んできた。


「(チョコレートケーキにゃ〜!?)」


「(ぼく達の分もありますよね〜!?)」


 器用に腕にしがみつく毛玉達の口元からよだれが垂れている。


「おまっ!? 汚いって〜!!」


 何とかケーキは死守されリコの手に渡ったが、マサの腕はべっちょべちょ状態。

 毛玉たちが食わせろとギャーギャー騒がしい為、追加で二人分のケーキを用意する羽目になった。


「なんでそんなに意地汚いわけ? いつも沢山食べさせてるよな?」


 第一、猫にとってはチョコレートって毒でしょうが!?


 呆れて見ていたマサに、おかわりコールが鳴り響く。


「(もう一つ下さ〜い!! 全然足りませんよ〜!!)」


「(もっと食べるにゃ〜!! どうせなら大きいのを出すにゃ〜!!)」


 青筋をたてたリコが、子猫達の背後に仁王立ちしている事を、当人たちは気がついていなかった。

 この後、リコのお小言が炸裂したのは言うまでもない。





 朝食を早めに済ませたマサ達。

 ギルドに行こうと、宿を出た時だった。

 ギルドの前に、黒塗りの豪華な馬車が横付けされているのが目に入った。


「高そうな馬車だね。どこかの貴族だったら嫌だな〜」


 眉間にしわを寄せたリコが、マサを振り返ってそう言った時。

 マルセルさんがギルドから出てきて、酷く慌てた様子でマサたちに向かってきたのだ。


「ま、間に合いました!! 待って下さい、今出たらダメです!!」


「どうしたんですか? そんなに慌てて」


 驚いたリコが声を掛けると、マルセルさんは早口でまくし立てた。


「今、ベスラン商会の商会長自ら、ギルドに乗り込んで来たんですよ!?」


「商会長が!?」


 ますますリコの眉間のシワが深くなったのは、決して気のせいでは無いだろう。


「どういう事になってるんですか? 説明してくれないと分からないんですか?」


 大きくため息を付きながらマサが問いかけると、マルセルさんは真剣な顔を向けてくる。


「ここでは目に付いてしまいますから、宿に戻りましょう」


 促されるまま宿に逆戻りしたマサ達を見て、最初ルルイさんは笑って「忘れ物?」と声を掛けてきたが、後ろにいるマルセルさんの顔を見て何かを察したようだ。


「食堂では入って来られたら丸見えになってしまうから、2階の206を使って頂戴」


 そう言って鍵をマサに握らせてくれた。




 その部屋は2階の一番奥に位置しており、普通に上ってきただけでは見つかりにくい場所にあった。


 マルセルさんによると、5〜6人パーティーで泊まれる大部屋らしい。

 ランクが低いうちはあまり大人数で組む事が無いため普段は使われない部屋だそう。


 入ると木枠だけの二段ベッドが3台置いてある、割と広い部屋だった。

 その一角に丸椅子が数客あったので引き寄せて座ると、マルセルさんは急に頭を下げた。


「本当にすみません。なかなか詳しくご説明出来ず、不安にさてしまった事をお詫びします。挙げ句、昨夜の事も含めてご説明させて頂きます」


 そう言って顔をあげたマルセルさんは、非常に憔悴した様子だ。

 なんだか申し訳なくなったマサはリコに念話を送る。


((もしもし、リコ? マルセルさん、凄く疲れた顔してるけど大丈夫かな?))


((ホントだね。甘いものでも出そうか?))


 顔を見合わせたマサとリコ。

 深く頷き合うと、鞄経由でアイテムボックスからクッキーを取り出した。


「マルセルさん? お疲れの様なので、とりあえず甘いものでもいかがですか?」


 最初は恐縮していたマルセルさんだったが、二人に強く進められ。


「頂いて良いんですか? 実は甘いものに目が無いんですよ」


 そう言って笑う彼を見て、やっと安心したマサであった。

お読み頂き、ありがとうございます。

少しでも面白かったと思って頂けたなら、次作への励みになりますのでブックマーク・評価・いいねを宜しく願いします。


そして、ブックマーク・評価・いいねを下さった皆様、本当にありがとうございます。

今後も頑張っていきますので、よろしくお願いいたします。

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