11。オムライスにゃ
まあ、悩んでも今更どうしようもない。
そう割り切った二人は、取りあえず確認を後回しにして食事の用意を始める事にした。
「ルビィもレオも、俺達と同じ物を食べて大丈夫なんだよな?」
「大丈夫なのにゃ、もうただの猫じゃ無いにゃ。神獣だし、父にゃん達と同じご加護、(超)健康な身体が有るにゃ」
「食べたら危険な物とかも無いって事?」
「何を食べても大丈夫なんです、神様もそう言ってましたよ母様」
「そうなんだ嬉しい、同じ物が食べられるんだね」
「そうしたら二人は何か食べたい物があるか?」
政継の問いに、二人はコショコショと相談を始めた。
三毛と灰色の小さな毛玉がホヨホヨとしている。
その姿が可愛らしくて、政継も里子もデレっとした顔になってしまうが、ここには注意をしてくれる者は居なかった。
他人が見たら間違いなく引かれていただろう。
ほどなくして毛玉達が頷き合うと。
「オムライスが食べたいにゃ」
「オムライスがいいの?」
「そうにゃ、日本で父にゃん母にゃんが食べてるのを見た時、あたちも食べてみたいと思ったにゃ」
「レオもそれで良いのか?」
「ルビィから何度も聞いた事が有って、ぼくも食べてみたかったんです」
そうかそうかと顔を綻ばせ、政継と里子は作業を開始した。
メインの調理は里子が行うが、政継も助手として昔から仲良くキッチンに立っていたのだ。
なので簡単な料理なら自分で作る事が出来る。
良い匂いが漂いだすと、ルビィとレオはお腹が空いてたまらなくなり、調理中の二人の肩によじ登ってきた。
「おい、危ないぞ」
政継が注意するも嬉しさが勝る為、威厳など有ったものでは無い。
「しょうがないな、しっかり掴まってろよ」
「でも、火を使うから危ないよ」
「その時は俺が抱っこするさ、大丈夫だよ」
結局二人は子猫達を肩に乗せたまま作業を開始したのだが。
「肉を多くしろ」だの「赤いの(ケチャップと思われる)を沢山かけろ」だの「もっと大きくつくれ」だのと色々我儘を言い始め。
「あなた達! いい加減にしなさい!! お夕食抜きにしてもいいのよ!!」
とうとう里子の雷を受けてしまい「ごめんなさい」と謝る羽目になる。
「ま、まあ、初めてこういう物を食べれるから少し興奮しちゃっただけさ、あんまり怒ったら可哀想……」
その時の里子の顔は微笑んではいたものの、得も言われぬ怖さがあった。
「スンマセン……」
こうなった時の里子の恐ろしさを、嫌と云うほど理解している政継はすぐに謝り。
「(色んな意味で)危ないからあっちにいってなさい……」
と子猫達をキッチンから遠ざけたのだった。
「母にゃんは昔から怒らせたら怖いにゃ」
「ぼくはちびりそうになりました……」
と、子猫達が陰で恐れおののき。
「「 二度と怒らせない様にしよう!? 」」
と、誓い合っていた事を里子は知らなかった。
「初めての味ですが美味しいですー!!」
「ほんとにゃ~! やっぱりこんなに美味しい物だったに
ゃ!!」
ルビィとレオをテーブルの上に乗せて、一緒に食卓を囲む。
自分達とさほど変わらない大きさのオムレツが、見る見るうちに無くなっていく様子に啞然としながらも、里子は。
「ほら、口の周りが真っ赤になって」
と、世話を焼く。
「お腹いっぱいにゃ」
「もう食べられません」
しっかり完食したルビィとレオ。
とても満足そうである。
ニコニコしていた政継も、見ても分かる位ポッコリしたお腹を見て流石に心配になった。
「そんなに食べて大丈夫なのか?」
「「 ?? 」」
キョトンとした二つの毛玉。
「うん、何でもない……、いっぱい食べて大きくなろうな」
と諦めたように微笑むしかなかった。
食後、まったりしていた所へ里子が”例の箱”を持ってやって来た。
忘れたままでいたかったのに…。
そう思って苦笑いする政継に、里子も苦笑いを返す。
「分かるよ……私も忘れていたかったけど、開けないとマズイでしょう? それに、私たちの事を考えてくれているんだから感謝しないと」
たしかにそうだな、でもなぁ……。
そう思ったが意を決して箱を開く事にした。
其処には黒い皮のベルトに、シンプルな文字盤のペアの時計が入っていた。
「おぉ! 見た目はシンプルで目立たないな、これなら着けても問題ないよな」
少し安心した二人は、時計を手に取り左手首に装着した。
「色々使えそうな機能がついてるし、確かに便利だよな。ゴッド級アイテムじゃ無ければ、もっと有難いんだけどな」
「この世界にどんな危険が有るか分からないんだからさ、使える物は何でも使っていこうよ。こっちには鑑定って魔法も無いし、言わなきゃバレないんじゃない?」
「そうだな、気に掛けてこういう物をわざわざ送ってくれるんだから感謝だな」
この時の二人は分かっていなかった。
この会話を聞いていたアストリアが、感謝された事で気を良くしていた事も……。
これから事あるごとにゴッド級アイテムが送られてくる事も……、まったく予想できていなかった。
筆がおそいため、書き溜めがなくなってしまいました……。書き上がればすぐに投稿いたしますが
少し間隔が開く事があると思います。頑張りますのでこれからもよろしくお願いします。
お読み頂き有難う御座います。もし宜しければ評価して頂けると嬉しいです。




