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にゃんとも不思議な異世界生活始めましたにゃ  作者: YUUURI
第2章  町の名はバルバです
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24。頂点にゃ

「ストーカーされてたのってロロイさんじゃない?」


 リコの言葉にマサは驚いてロロイさんを見るが、震えながらも訝しげな顔。

 ルルイさんや冒険者のお姉さんすら理解出来ていない様子だった。


「あ、ストーカーって意味が分かんないか?」


 リコはあっけらかんと言うと、顔つきを真剣な物に変えた。


「話を聞いた方が良いと思うよ? 間違いないはずだから」


「なんで言い切れるんだ?」


「なんで気付かないのか、そっちの方が不思議でしょうが無いんだけど?」


 思いの外ドヤ顔のリコ。

 どこからその自信はやってくるんだ? とは思ったが、そこまで言うなら確信があるのだろうと、リコを信じる事にした。


「分かったよ。どちらにしろ、迷惑を掛けてしまうかも知れないしな」


 ベスラン商会がここまで来た事を考えると、事情は話しておいた方が良い。

 ましてや、リコの言う通りロロイさんがストーカーされていた被害者だったとするならば、益々大変な事になりかねない。


 ちなみに、お姉さんはCランク冒険者のブリジットさんだそうだ。


「お聞きしたい事も有るし、こちらの事情もお話ししたいので時間を頂いても良いですか?」


 ブリジットさんも事情を知っていそうなので、一緒に食堂の奥のテーブルに誘う事にした。




 リコの予想は大当たりで、お嬢様に付け回されていたのはロロイさんだった。

 初めは言い淀んでいたのだが、マサ達の事情を全て話すと、ロロイさんは涙目で語ってくれたのだ。


 四六時中付きまとわれた挙句、ベスラン商会の人間から妹のルルイさんまでもが脅されたり、怪我をさせられたりするようになってしまったという。

 酷い時には、知人女性や偶然話しただけの女性までもが標的になったらしい。


「大の男がと思われるかもしれないが、もう怖くて怖くてたまらなかったんだ……」


「あのお嬢様のせいで、それまでは明るかったロロイが段々怯えるようになって、終いには精神的にもおかしくなりかけてしまったんです。どんなに断っても状況は変わらず、引っ越しをしてもまた同じ事の繰り返しでした。私はロロイを守りたかったのに……」


 二人はそう話すと声を詰まらせてしまった。

 本人達しか分からない恐怖が有ったのだろう。


 そんな二人の様子に、マサもお嬢様に絡まれた時の事を思い出して身震いした。


 会話が成り立たない人に会った時の恐怖。

 自分の中だけで話が進んでいて、相手の事を考えられない人間は確かに恐ろしい……。



 マルセルさんはロロイさん達の幼馴染だそうで、どうしようもなくなった時に相談した相手でもあるという。

 その関係でギルドの宿を経営する事になったそうだが、半分(かくま)われているようなものだそうだ。


 そしてもう一つ。

 ロロイさんも髪の色を変える首飾りをしている事が分かった。

 外して見せてくれたが、少し茶色がかった黒髪だった。

 少しでも見た目を変えたかったという。


 うん、分かる。

 ものすご〜く気持ちが分かるよ。


 何度も頷いてしまうマサだったが、値段が50,000アストだったと聞いて『ぼったくられたのか?』と、少しだけ落ち込んでしまった。

 だって、自分たちはあまり人気が無い色だという前置きで、ひとつ80,000アストを払って購入したのだから仕方がない。


 そして、ブリジットさんはマルセルさん経由で依頼を受けたそうだ。

 依頼内容は「ベスラン商会の関係者を宿に近づけるな」というもの。


 先程追い出された男はやはりベスラン商会の関係者だったようで、今回はマサの存在を探してこの宿にたどり着いたようだ。

 しかし、ロロイさんがここに居ると知れば、お嬢様の執着がまた始まるかも知れない。

 何をどうすれば良いのか、頭を悩ませるマサ。


「とりあえずロロイさんは外に出ないほうが良いですね」


 マサの言葉に、ロロイさんは青白い顔をしながらも反発をしてきた。


「こ、困る!? パン屋には行かなければならないんだ!!」


 何気に理由が分かったマサたちは無言になってしまったが、ルルイさんも理解したようで、気のせいか白い目を向けている。

 それに気づいたロロイさんはハッとした顔で周りを見回すと、身をすくめて「でもでもだって」と言い訳を始めてしまった。

 一人、状況が分からないブリジットさんが「どういうことだ?」と、首をかしげていたのがなんとなく笑えてくる。


「ロロイ? アデールさんに会いたいのは分かるけど、今度は彼女が被害を受けるかも知れないんだよ?」


 妹の言葉にロロイさんの表情は一気に色を無くして、今にも死にそうに見える。


「根本的な事を何とかしないと、状況は変わらないよね。ロロイさんもそうだけど、マサだって狙われてる事が証明されたし?」


「……俺の事を探しているのだけは確かだな」



 とりあえず、ギルドから何らかの情報が来るまでは下手に動かないほうが良いだろうという事になった。

 ロロイさんに関しては『外出禁止』が確定。

 彼も好きな人に危害が及ぶのは避けたいようで、泣く泣く納得してくれた。



 その日の夜。

 リコの怒りが頂点に達する事件が起こったのである。

 さすがのマサにもリコを止める事が出来ず、急速に事態が動く事になった。

お読み頂き有難うございます。ブックマーク・評価の方よろしくお願いします。



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