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にゃんとも不思議な異世界生活始めましたにゃ  作者: YUUURI
第2章  町の名はバルバです
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18。憂鬱にゃ

 マサ達は部屋に入る事も出来ずに立ち尽くしていると。


「丁度良かったみたいです。ここで静かに聞いていてください」


 マルセルさんは小声でそう言って部屋に入って行った。


 説明されるより、直接真意を聞いてほしいって事だろうと察したマサは、リコと目配せをして息をひそめる。


「何が商会長の指示だい!! じゃあ商会長は犯罪にも手を染めたって訳かい? いつからお宅のベスラン商会様は人さらいまで請け負う様になったんだろうね!?」


「なっ!? なんて失礼な事を!! ベスラン商会はそのような非道な事は致しません!! どんな証拠が有ってそのような事をおっしゃるんですか!?」


 ギルマスが口にした爆弾発言に、それまで小さくなっていた番頭も声を荒げた。


「こちらが調書です」


 待ってましたと言わんばかりにマルセルさんは微笑むと、書類を差し出しながら静かに説明を始める。


「こちらが先日被害者から訴えが有った内容です。まず、ベスラン商会の関係者と思われる(やから)に野営地から付け回された挙句、馬車に乗れと強要された事。断ると連れの女性に手を出されそうになった事。そして最後に罵詈雑言を吐かれ、護衛の冒険者に対して『無理やり馬車に乗せろ』と指示し始めた為、恐怖で逃げだした事が記載されています」


 言い淀む事無く発せられるマルセルさんの説明に、番頭は顔を青くし出した。


「そしてこちらが、護衛の依頼を受けた冒険者達に調書を取った内容です。まず初めに、依頼内容と実際の役割が大幅に違ったようですね。完全に逸脱した内容を強要されたそうで、冒険者達は大変憤慨しています。ベスラン商会の従業員と思われる男性からの、横柄で人を見下した態度も酷かったようで……。それは後程書面にて正式に抗議させて頂くとして、問題は先程の被害者の言い分との照らし合わせです。冒険者の話ですと、ベスラン商会のお嬢様だと紹介された人物が野営地で被害者を見染め、後を追う様に指示。昼過ぎに被害者を発見し護衛の冒険者に足止めをさせた挙句、断った被害者の連れの女性をメイドを使って排除しようとした。しかし被害者が止めに入った所、従業員と思われる男性が護衛の冒険者達に人さらいを指示して来た、との事です。ちなみに冒険者達はそれを犯罪だと戒めたところ依頼料を踏み倒されたと、こちらも訴えてきています」 


 番頭は冷や汗をハンカチで拭いながら聞いていたが。


「それはそちらからの勝手な言い分で、証拠にはなりませんな。いくらでも口裏を合わせられるでしょうから……」


 何とか絞り出した反論だが、ギルマスによって一刀両断されてしまう。


「アンタんとこと同じで、うちも信用が大事なギルドなんだ。そこのギルマスである私が直々に調書を取ったんだが、信用出来ないのかい?」


「……しかし、こちら側の言い分も確認しない事には何とも返答が出来かねますが、被害者と名乗る者の思い込みとは考えられませんか? 護衛に付いていた冒険者も、やり取りを勘違いした可能性がありますし……」


 そこまでは黙って様子を見ていたリコが、居ても立っても居られないとばかりに番頭の前に飛び出してしまった。


「何言ってるんですか? 私達は嘘なんかついてません!! あの時の事を思い出すと今でも怖くて眠れないんです!!」


 おお~い、リコさんや~。

 いきなり女優(詐欺師)モード全開ですか~。


 仕方なくリコの隣に並ぶマサ。

 二人を見た番頭は「こんな子供相手だったのか……」と絶句したのは言うまでもない。

 いや、子供って……成人してるんですが……。

 しかしリコの口は止まらなかった。


「オジサン。私達二人が、八人の大人に囲まれた状態でどれだけ怖い思いをしたか分かりますか? いきなりブライって男に大声で怒鳴られたり罵倒されたりして、彼を無理やり馬車に連れ込もうとしたんですよ!? いったい何をするつもりだったんですか? 奴隷にでもするつもりだった? もしかして私は殺されるところだったんですか? 冒険者のお兄さん達がまともな人達で良かったです……そのおかげで隙をついて逃げられたんですから」


 目を潤ませる事までやってのけるなんて、凄いねリコさん。

 それに……事実に沿ってはいるけど、微妙な言い回しがなんともいやらしいよね……。

 完全に番頭さん、何も言えないみたいじゃない?


 しばしの沈黙の後、番頭さんは絞り出すように言葉を吐いた。


「……そちらの言い分は理解しました。こちらも事実確認をして、商会長ともう一度連絡を取りますので……一度持ち帰らせて頂きたい」


 ……自分の息子が絡んでるとはいえ、この人も中間管理職で大変なんだろうね。


 青い顔で慌てて帰って行く番頭さんの背中を目で追いながら、マサは深いため息を付くと、ギルマスに目を向ける。


「で? ベスラン商会の商会長は、結局なんて言って来ているんですか?」


「どうやら私達が苦情を上げる前に、商会長はお嬢様(タバサ)と何かしらのやり取りをしていたらしいんだ。番頭が連絡をした時には既に話が通っていたみたいでね。番頭に対しての指示が『自分が帰るまで何もするな、タバサの好きにさせろ』だそうだ。私は耳を疑ったよ」


 ギルマスの話を聞いて、酷く憂鬱な気持ちになるマサだった。

お読み頂き有難うございます。ブックマーク・評価の方よろしくお願いします。



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