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オムツと私たち  作者: 062
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水田マリ(3)

「さて、そろそろ限界では?西田先生が痛み止めと言って渡したあの薬、実は利尿剤なんですよ」


嘘です。養護教諭の西田先生が渡したのは確かに鎮痛剤でした。


「嘘でしょ・・・」


見るからにおしっこを我慢している体勢でゆりあちゃんがつぶやきました。


プラシーボ効果という言葉を知っているでしょうか。例を出すとダイエットに効く薬だと言って駄菓子のラムネをAさんに与えたとします。当然ですがラムネにそんな効果はありません。しかし、Aさんは4キロの減量に成功しました。これはAさんの心理的効果によるものです。新薬の治験でも似たようなモニタリングをして、4割近くの人が偽薬で治療効果があったそうです。ネットのインチキなダイエット薬品が炎上したりしないのも信じてリピート購入する人がいるからです。でも、まさかゆりあちゃんが引っかかるとは思いませんでした。


「もうダメ!」


ついにゆりあちゃんが決壊しました。シーンと静まり返った部屋にゆりあちゃんのおしっこの音だけが聞こえます。自分はゆりあちゃんに近づきます。唯一の照明であるテーブルランプがゆりあちゃんの顔を照らし、その顔は泣きそうになっているように見えました。自分はゆりあちゃんに抱きつくと。


「よしよし。ゆりあちゃんは悪くないですよ。嘘を言った自分が悪いので、自分を責めてくれていいですよ〜」


できるだけの優しい声でいいました。ちょっと安心したのか、自分に体を預けてきます。


「違うの!私のママは薬剤師だから、薬の名前でマリちゃんが嘘を言ったってすぐにわかったし、その前の私の意地悪に意趣返ししただけだってわかってる。でも、この鎮痛解熱剤の副作用に利尿作用があるのを思い出して、思い出したらどうせ我慢なんて出来ないってあきらめてしまったの!」


なんというか、さすがゆりあちゃんです。薬剤師の子供だからと言って全ての子供が薬品に精通しているとは限りません。プラシーボ効果ではなく、副作用だったのかと納得感が自分のなかに生まれました。


本当にゆりあちゃんはゆりあちゃんです。


「西田先生は今夜はトイレ禁止だって言いました。だから遅かれ早かれこうなったでしょう。それよりも自分以外にこの姿を見られる前にオムツを交換した方がいいのでは?」


「そうだね」と言ってパンツのように脱ごうとするゆりあちゃん。それでは脱げないと思います。


「ゆりあちゃん待って。お互いにオムツ換えをしましょう」


ゆりあちゃんは脱げないと思ったのか「わかった」と短く同意してくれます。


「ではまず、自分が横になりますね。自分の場合はパンツタイプなのでサイドをやぶります。その時に当てられる側は膝を立てておくと後で楽です」


言われた通りにするゆりあちゃん。


「次に前の部分を下ろすと開きます。このお尻拭きを使ってください。・・・次に自分の場合はベビーパウダーをつけます」


戸惑いも少々感じますが、先程よりは落ち着いたと思います。


「それではオムツをつけます。当たり前ですが「まえ」の表示があるのでこちらが前です。少しゴム部分を伸ばして、みぎ、はい、

ひだり。それでは腰を浮かせますのでオムツを上にあげてください」


自分の指示通り動くゆりあちゃんが可愛くてたまりません。


「次はゆりあちゃんの番ですよ」


自分を先に交換したからか大人しく仰向けに寝転がりながら、ゆりあちゃんが言います。


「私もマリちゃんとお揃いがいい」

「いいですよ。自分は予備をたくさん持って来ているので」


ゆりあちゃんとそんなに体格は変わらないので、大丈夫でしょう。ゆりあちゃんが恥ずかしいと思う間もなく、テキパキと交換します。


「はい、できましたよ」

「うん、ありがとう」


こうして、修学旅行の最後の夜は更けていきました。




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