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オムツと私たち  作者: 062


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広井夏樹の帰還(19)

『感動のシーンに水を差すようですいません。……正直、何が何だかさっぱりなので、解説をお願いします』


咲が小さく手を挙げて言った。

その声に、モニター越しのゆりあがわかりやすくため息をつき、眉をひそめる。


「……ゆりあさん、マリさんは転院の手続きしてるから、今は私が説明役をやるよ」


夏樹が苦笑をまじえ、穏やかな調子で応じた。


「じゃあ咲ちゃん、『te092-ウイルス』は知ってるよね?」


『はい。私達が盗み出したDNAデータがそれですよね?

 ゆりあさんが計画していた『シーズン3』の中心で……エンテロウイルスの変異種。

 10代までしか罹りにくくて、罹ったら神経系がおかしくなって、おむつ生活になる……あのウイルスですよね?』


「その通り。じゃあ質問。もしそれを――世界第2位のあの大国が手にしたら、どうすると思う?」


咲は一瞬考え、言葉を選ぶ。


『……まず、世界第1位のあの国に向けて使うでしょうね。

 ただし、自分達だけはワクチンを用意した上で。

 それから、一帯一路の要衝となる国々にも売って……“支配力”を強める、とか?』


夏樹が目を細め、満足げにうなずいた。


「――ほぼ正解。私の読みでは、彼らはWHOを通じて“国際協力”の名目で拡散を仕掛けると思うけどね」

『……そんなこと、現実に?』

「そう。だから、4年前――私はあえてその『te092-ウイルス』を手に入れて、逆に“カード”にした」


夏樹の声がわずかに低くなる。


「そのカードを、私は“隣の大国”と“同盟国”に売った。

 ――『もしこのウイルスがばら撒かれたら、十年後、あなたたちの経済はどうなるか、想像できるよね?』ってね」


咲は、思わず息をのんだ。


『……脅し、だったんですね……』

「その他の国も黙ってても『ウチにもサンプルください』って来たよ。お陰で中学生のお小遣いとしては破格の財産を手に入れた訳だけど、売った国に日本はないの。その上でこれを見てもらおうかな?」


モニターが映像に切り替わる。


『はい、佐藤です』

「お願いします。助けてください!」

『学校内の私の部屋にミニ冷蔵庫があるのは知っているね?そこに『シーズン3』のウイルスである、『te092、ウイルス』のサンプルがある。それを使って上手い事やってみなさい』


舞とゆりあの電話でのやりとりだった。


「今更、ウイルスをばら撒いても、困るのは日本だけって状態になってる。しかもその中に舞先生がこれから産む子どもも含まれるんだ。さぁ舞先生、どうするの?」


夏樹の問いに舞はビクッとして、スマホでどこかに電話をする。漏れ聞こえる内容から、中止をしているのだとわかる。


『夏樹先輩、これで先輩の勝利確定ですね?こう言ってはなんですが、ゆりあ大臣と舞先生で対応が違いませんか?』


咲の問いに夏樹は笑って言う。


「怒っていたの私。4年前に私をいじめて来た子には私の恐ろしさを知らしめて2度と同じ事ができないようにした。その時、先生もわかっていたはずなのに、今回事を起こした。だから容赦なんてしない」


笑って言うことじゃない。そう返したかったけれど、咲はただ唇を噛んで黙り込んだ。


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