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オムツと私たち  作者: 062


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広井夏樹の帰還(18)

チャット上に1分近い沈黙が流れる。

夏樹の暴露がもたらしたものだった。


それでも夏樹は止まらない。


「ゆりあさんの目的は『私の帰還』だからね。そのためなら舞先生の計画も黙認し、利用もしてる。さらに敗色濃厚になると援助までしてるよね?」


『うふふ、すっかりバレてるよ?ゆりあちゃん」


煽るように笑ってマリまでが言う。


「ああ、それと『te092-ウイルス』だけど、もうこれでパンデミックは起こせないよ?同盟国もお隣の大国も先制攻撃大好きなあの国も絶賛戦争中の北の大国もEUもカレーの国も若者は予防接種済みだよ。この4年で」


『なんだと!どうやって?』


今度こそ、ゆりあが驚愕で表情が歪む。


『私から補足すると、夏樹ちゃんは『X』という架空の人物をでっちあげて、その人物の手下だと思わせる事で安全を確保。その上で交渉して各国にサンプルを売ったの。未知のウイルス兵器かもって事で各国は躍起になって予防接種を水面下で自国民に行ったわ。証拠もこっちでもらってる。『新・冷戦』と言われる2ヶ国を筆頭に火の粉がかかりそうな国に上手く売り込んでいるわ。各国の開発に軍が関わって極秘裏かつスピーディーに進められてるわ」


マリが夏樹の後を継いで言った。


「舞先生。まだ負けを認められない?認めれば考えてもいいけど?」


舞の歯ぎしりがマイク越しに聞こえて来そうだった。先程と同じく誰も何も発言できない時間が場を支配する。

それでも、絞り出すように舞は言った。


『夏樹さん、私の負けよ』


「ありがとう。これで次に進めるよ。マリさん、データは送ったよ。お願い」


送られてきたデータにマリは目を見張る。そして、口を開いた。


『さて、舞先生の負けた事だし。ゆりあちゃん、私のお願い聞いて?』


ゆりあは困惑気味に答える。


『マリちゃんの頼みだ。わたしにできることなら』


『このためにマリさんは夏樹先輩に協力していたのですね?』


咲がつぶやいた。夏樹は肯定するように笑った。


「ゆりあさんを動かせるのは、マリさんだけだからね。それに昨日『マリさんを借りる』って宣言はしたよ」


それを聞いたゆりあが脱力しながら言う。


『昨日の依頼の時点でこのラストまでを描いていたとは。さらに『シーズン3』の完全無効化、『世界を相手にして』のだ。とっくにわたしなんて超えてるじゃないか』


追い打ちをかけるようにマリが言う。


『私のお願いはこれよ』


『『福岡小児病院?』え!こんな事が?』


ゆりあが本日何度目かの驚愕を見せる。


『ゆりあちゃんを侵してる癌は小児癌の可能性が高いの。その病院なら根治治療が可能らしいわ。少なくとも、来年以降も生きていられるわ』


それを聞いたゆりあはモニターから見ていても、目を伏せ肩の力が抜けていくのがわかるようだった。


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