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オムツと私たち  作者: 062


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広井夏樹の帰還(15)

『舞先生、お久しぶりです。お元気ですか?』


嫌味の塊のように、電話に出た夏樹が言った。


「・・・残念ながら、あなたのせいで血圧が上がりっぱなしよ。大人しくしてほしいものだわ」


なんとか舞も皮肉で応戦する。それを流すように夏樹が言った。


『舞先生、悪いけど少し待って。圭吾さん、お願いします』


近くにあったモニターが切り替わる。テレワークなどで使われる、会議用ツールだ。


驚いた表情のゆりあと落ち着いて笑っているマリ。夏樹と舞は当然としてもう1人、三島咲が映し出された。


「な!マリちゃん、どういう事?聞いてないよ?」


困惑するゆりあ。


「あはは、やっぱり最後はこの4人でしょ?4年前と同じくね。咲ちゃんもごめんね。しばらく見てて」


場を取り仕切るように夏樹が言った。


「今回の件、まずは舞先生の妊娠から始まった。で、間違いないよね?今、警察に拘束されている。高野宏さんとの子ども」

「ええ。宏は今回の件と無関係なのに!」

「あはは、トリガーは宏さんってわかっている?無関係っていうなら、今回の件でボヤが起こったファストフード店や戦闘で無茶苦茶になった100円ショップのほうでしょ?」


舞は言い返せない。そもそも、舞が夏樹を上回るとは誰も思っていない。急遽参加した咲も含めても、だ。


「横からすいません」


そう言って割り込んだのは咲だった。確かにこの中で一番、舞と立ち位置が近い。


「それでも『やり過ぎ』ではないかと思います。あくまで舞先生個人でやった事ですし・・・」


舞を除く残りのメンバーの顔が笑顔になる。はきだめに鶴、あるいは戦場に咲く花。それを見た笑顔。それでも夏樹は容赦はしない。


「いいね。嫌いじゃないよ、その考え方。でもね、4年前、私は母親とその収入を人質にされたの、小学5年生で。その時に聞きたかったよ」

「それを利用して23億も騙しとっておきながらよく言う」


たまらずゆりあが言う。


「政治家先生から褒めてもらえて、恐悦至極です」


夏樹が嫌味でゆりあを牽制し、そのまま続ける。


「咲ちゃんが知らなくてもしょうがないけど、4年前からこの4人はバリートード(なんでもあり)でやってるの。だから、そちらも人が殺せるドローンや、咲ちゃんが使ってた剣だって、あの電流量は身体の小さい私には致命傷になりかねないものだった。つまり、私だけじゃなく全員がやりたい放題やってたの」


夏樹の言葉に咲は口を閉じる。同時に画面越しであっても、怒りの空気は伝わるものだと実感する。さらに夏樹は言葉を重ねる。


「ーーで、舞先生。私は4年前の担任の先生から、悪い事をしたら言う言葉を教わったのだけど?」


それでも舞は沈黙を守る。ゆりあが助け舟を出すように口を開いた。


「謝罪を引き出したいようだが、謝罪は強制するものではないよ。それでこの決着に私まで巻き込んだ意図を聞いていいだろうか?」

「当事者で話をつけるべきじゃないかと思ってね」

「先週の事故の事かい?それならそれこそ事故を起こしたドライバーから謝罪は受けているよ?」

「私がこの場に咲ちゃんを呼んだ意図がわからない訳ではないでしょうに」


夏樹とゆりあはある意味でウマが合う。思考回路が似ているのか前提条件を必要としないので他を置いていってしまう。なので咲が尋ねた。


「あたしの事を言ってるみたいですが、どういう事ですか?」


ふと、夏樹が冷静さを取り戻して答えた。


「この5人を単純な敵味方に分けた時、今回はどうなると思う?」

「夏樹先輩対それ以外では?」

「っ!」


咲の回答にゆりあが何かを言い出しかけて止めた。


「うふふ、そうなるよね。咲ちゃんが答えれば」


ゆっくりと残り3人の顔をモニターで確認しながら夏樹は続けた。


「ところが、みんな先程までこの対決は『私VS舞先生+咲ちゃん』って思ってたんだよ」


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