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オムツと私たち  作者: 062


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広井夏樹の帰還(13)

刑事ドラマで観たままの取り調べ室。高野宏はつい『どう反応したものか』と思ってしまう。


「すいません、せっかくのお休みの日に。こちらも仕事なもので・・・」


全く思ってなさそうな、それでも誠意だけは見せておこうとする老刑事に、宏は少し好感が持てた。


「いえいえ、人生の豊かさってヤツですよ。こんな機会でもないと取り調べ室なんて入れませんから」


この時の宏にはまだ余裕があった。だが、老刑事の突きつけた防犯カメラの映像に顔色が変わる。


「ご覧の通り、あなたがこの中学生に痴漢をはたらいているように『見える』んですね、私には。この女子中学生から被害届が出ていまして、あなたの言い分も聞こうと思った訳です」


宏は喉がカラカラに乾いたように感じる。


(確かに、あの電車には乗ったし、あの辺にいたのも事実だ。しかし、あの中学生は見ていないし、痴漢なんてやっていない。どういう事だ?)



同じ頃、東都大学医学部病院。特別室


「佐藤ゆりあです。舞先生」

『あ、ご無沙汰しています』

「さて、今回の事件だが、子供達は無事かい?」

『重症者は病院で治療中ですが、命に別状はないと言われています』

「それは何より。それで舞先生、君は夏樹ちゃんにもうすぐ負ける。

君は気づいていないだろうが、もうすぐ夫になる宏さんが痴漢容疑で現在、警察署で事情を聞かれている。タイミング的に間違いなく夏樹ちゃんの仕業だ。

それでどうする?このまま潔く負けを認める?それともーー」


ゆりあがここで息を吸う。電話の向こうの舞にもそれが届いた。


「勝てずとも、『引き分け』ぐらいには持ち込める方法があるんだが?」


舞が黙り込む。きっと彼女の天秤は揺れているのだろう。


「あまり、時間はない。決めたらすぐに電話してください」


そうして通話を終了する。ゆりあはあくまで、選択権は舞に持たせる。


電話が終わったのを見計らって、横にいたマリが声を上げる。


「夏樹ちゃん、怒るわね。『また、黒幕がゆりあさんでした。は、やめてね』て、言ってたのに」

「言っていたね。仕方がないさ、私の『エゴ』だからね」

「わかってはいたのね。『夏樹ちゃんを自分の後継者に育てる』それが『エゴ』だって。

でも、残念。4年前と同じく、今回もゆりあちゃんの負けね。ふふ」


妖艶にマリが笑う。見た目は小学生にもかかわらず。ゆりあは虚をつかれたようにそれを見た。


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