広井夏樹の帰還(3)
エラー音が室内に響く。モニターが赤く警告メッセージを出す。
「どういう事だ!?」
圭吾さんが叫ぶ。私は慌てず騒がずキーを叩く。電源が落ちた表示が出る。
「古式ゆかしいトロイの木馬よ。多分フィッシング詐欺と同じ手口」
『ナイル』か『マハラジャ』の偽サーバーを作り、そこに私達がハッキングをかける。売り上げデータに紛れて、ウイルスが侵入する。
「ヤバイな!スーパーセルが!」
「ああ、それは大丈夫。4年前と同じ。私達がさっきまで使ってたスーパーセルはレバノンのバックアップの方。ゆりあさんもバックアップを微妙なところに作るよね。おかげで壊せないじゃない」
「誰かが、傭兵を雇ってドバイのを壊すからだ!」
「あはは、いい新人訓練になったって傭兵派遣会社の人が言ってたよ」
何事もなかったかのようにモニターは切り替わり、通常の表示に戻る。
「舞先生もやるねぇ。レバノンは高負荷かかって強冷却してる。対岸の火事は楽しいね」
「完成したばかりだぞ!性能だってここのオリジナルよりいいはずだ!」
悲鳴のような圭吾さんの声。しかし、落ち着きを取り戻したようだ。
「おい、そういえば、『舞先生』って言ってなかったか?まさか!」
「この件、最初からおかしいんですよ。4年前のゆりあさんのテロ未遂、どこからその情報が漏れるというんですか?ゆりあさんとマリさんの2人がタッグを組んでる状態で情報漏洩なんてありえませんよ。だとすると、容疑者は当時敵対していた私の陣営。つまり2人まで絞り込めます」
「2人・・・夏樹ちゃんと舞先生か!」
「そして私じゃないなら、確定ですよね?でも不可解なんです。4年前、舞先生にそんなスキルはなかった。つまり、協力者がいる」
「そして、ソイツはまんまと僕達を出し抜いた」
ゴクリと圭吾さんの喉がなった。




