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オムツと私たち  作者: 062


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広井夏樹の帰還(2)

心理的な盲点というのはどこにでも存在する。


待ち合わせの場所は千葉県内のショッピングモールのフードコートだった。


「広井夏樹さん、だね?」


中年のヒョロっとした体格の男性に声をかけられる。「はい」とうなずくと。「ついて来て」と言われて立ち上がる。


同じ階のトイレ、おむつのおかげで一切行くことのなくなったその場所の奥。『清掃用施設』と書かれたプレートのあるドア。ここの清掃を請負う清掃会社の人たちはショッピングモールの人が使っていると思い、ショッピングモールの職員は清掃会社が使っていると思い込んで結局誰が使っているかわからないドア。それがここだ。


男性はテンペストを鍵の部分にかざしてドアを開ける。本当に掃除用具が並んでいるが、これもダミー。その奥の消火用ポンプ室と書かれたプレート。そのドアを再びテンペストで開錠する。


「ようこそ!『スーパーセル・センターデータ室』へ!」

「なるほど、駐車場のスロープ部分の中心をクーリングタワーにしてるわけか」


男性の話を無視して、私はつぶやく。


「無視か!これは無視しないくれ。僕は小田圭吾。夏樹さんにはこう言った方がいいかもな。マリの夫です」

「よろしくお願いします。広井夏樹です」


余計な言葉はいらない。早速仕事に取り掛かる。と思ったら圭吾さんが質問してきた。


「ところで、ゆりあちゃんは『同盟国』と『お隣の大国』のどちらかが盗んだと確信しているようだったけど、何でだ?」

「ああ、じゃあまず『ロシアのエージェントです。データ下さい』って人間がロシアのエージェントだと思う?2点目、報道が静かなこと。これはロシアって絶賛戦争中の国ですよね?その国がバイオ分野で動きがあればメディアが黙ってませんよ」

「なるほど。で、何で2ヶ国に絞れるんだ?」

「DNAそのものなら、G7の国なら作れると思います。でも『DNAデータ』から作るとなると、3ヶ国、でさっき言った条件からロシアを引くと?」

「2ヶ国に絞れる!」


テンションが高くて苦手だ。マリさんはどこが良かったのだろうと思う。


「それではこの2つのECサイトを攻めます」

「『ナイル』と『マハラジャ』、それぞれの国の最大のECサイトだな?何でだ?」

「ウイルス感染が起こった場合、必要なのは?」

「おむつ!」

「そう。ある地点、エリアで爆発的に売り上げが増えてないかなって」

「なるほど。さすがゆりあちゃんの代打だけあるな。これで中学生とは!ウチの嫁がわざわざ学校を作って迎えるだけはある!」


軽口を叩きながらも作業は進んでいく。腕は確かなようだ。ならばと私も雑談する。


「マリさんとはどこで出会ったの?」

「マリが小学1年生だったかな?隣に引越して来たんだ。知ってると思うがマリの母親はヒドイ人でね、寒空の下ベランダに放置していた。それが小学4だっけ?その時にタバコの不始末って事にして、ウチの部屋のカーテンに火つけてボヤを起こしてマリを発見させた。そんなところかな?」


不思議だ、好感度が上がっていく。さっきまでウザかったテンションの高さも気にならない。


「OK!では売り上げデータを抜くぞ!」


こちらも作業は完了して、結果が表示される。


「どちらも該当なしだと?」





東京都文京区、明王義塾小学部。


「舞先生、『マハラジャ』の方はダメでした。『ナイル』の方はダミーサーバーに引っかかりました。売り上げデータに紛れて、ウイルスの送り込みも順調です」


高野舞はニッコリと笑って答える。


「ありがとう、こうた君。いい子達ね」


彼女はいわば『天才を育てる天才』である。


「夏樹ちゃん、私の75人の天才から逃れられるかしら?」


彼女もまた、夏樹の盲点かもしれない。


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