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オムツと私たち  作者: 062


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広井夏樹(12)

ゆりあさんはそれでも口を開く。苦いものを飲み込むような顔で。


「夏樹ちゃんの言うとおりかもしれない。でも、私は……大人として、それを黙認することはできない。これは、立派な犯罪だ。殺人教唆。私たちが見逃していいことじゃない」


予定通りの言動にホッとする。ニヤリと笑ってそれに答える。


「大丈夫ですよ、隠蔽工作してくれる人が目の前にいますから」


スマホを見せながらさらに続ける。


「これ何かわかります?人体実験をやった証拠のデータに監視カメラ映像です。私が捕まればこのデータも警察や検察も気づくでしょう。そうなればあなた方も無事では済まない。どうしますか?」


ゆりあさんもやっぱり大人だ。見た目は同級生に見えるけど。私の問いに行動で答えを示す。具体的にはスマホを取り出してどこかに電話をかけた。


「佐藤ゆりあです。山岡代議士に代わってくれる?」

「山岡龍馬、国家公安委員長よ。警察組織のトップ」


補足するようにマリさんが言う。


「山岡先生、お願いがあって。山陰の研究施設の件は耳に入っているでしょう?あれ、事故として公表して。内部的には公安マターのケースとして、実際には動かない。できる?」


ゆりあさんがニヤリと笑う。私もあんな顔で笑っていたのだろうか。


「成功報酬で選挙区の対立候補のスキャンダルでどう?実行してくれれば、こちらで写真週刊誌に流すけど?確か前回選挙は205票のギリギリで負けて、比例復活当選だったわよね?」


スマホの通話が終わる。沈黙が校長室を包む。舞先生が私に何か言おうとしてやめた。


ゆりあさんが大きく息を吸い込んで、私に聞いた。


「それで、夏樹ちゃんはこの勝利と引き換えに何を望む?」


「『平穏』を。普通の小学5年生に戻りたい」


込み上げてきたようにゆりあさんが笑う。マリさんも堪えきれずに、そして舞先生も。


「それはできない相談だな。夏樹ちゃんは派手に動きすぎた。ここでは守りきれない。私だけでなく、他にも目をつけられる可能性がある。マリちゃん、小学校を1つ作って。この子のために。そこで先生ごと保護する」

「無茶言うわね!」


マリさんが短く返す。確かにと私も思ってしまう。けれど、強気に続ける言葉は私の予想と違っていた。


「2ヶ月ちょうだい、勝っても負けてもゆりあちゃんがそう言うと思って、すでにウチの附属小学校として申請済みよ。校舎は来月完成するわ。申請への便宜、よろしく頼むわね、文部科学大臣さん」


マリさんの優秀さに驚く。それを聞きながら、舞先生がため息まじりに言う。


「それ、私、関係ないんじゃ?」


呆れたようにマリさんが笑って答える。


「夏樹さんの自分の異常性に気づかないのは先生から受け継いだのね。高野先生、あなたはこの小学校で7人5学年を1人で授業して、夏樹さんを含む6人が偏差値70前後よ?この県で一番平均偏差値が高い学校を1人で運営しているのよ?」


「みんな優秀な、大人なんですね」


しみじみと言う、私。


「「「おまえが言うな!」」」


3人の声が完全に一致した。


これにて終了です。

ありがとうございました。

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