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オムツと私たち  作者: 062


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広井夏樹(11)

山陰某所、製薬会社研究施設

山川シズカは、女優の卵だった。

ドラマで脇役やサスペンスの死体役をやって、それなりに演技力を評価されていた。でもそれを良しとしない人間がいた。他ならぬ彼女の母親だ。彼女の母親は彼女にスターになる事を求めた。でも、待っていたのはスキャンダルだった。詳細は彼女の名誉の為に伏せるが、彼女には居場所がなかった。最終的に母親に売られてここにきたのだと理解した。


(誰か……殺して!)


彼女は願う。下半身にまとわりつくおむつを恨めしそうに見つめながら。


(私には、もうこれを外す自由はない)


そして、彼女はバカではない。2日後自分がどうなるかわかっている。JFK国際空港。それが彼女の行かされる場所。そこで彼女は彼女が罹患しているウイルスをばら撒くために配置される。他にも同様に世界的ハブ空港に配置されパンデミックを起こす。それを研究員達は『シーズン3』と呼んでいた。


パンッ! 乾いた音が廊下で響く。

誰かがこの部屋に入ってくるのがわかる。


「悪く思わないでくれ、これも仕事なんだ」


(日本語?でも外国人?)


パンッ!さっきと同じ音が鳴る。胸が急に熱くなる。


(ああ、そうか撃たれたんだ)


彼女はそれを理解して、笑った。

まるで週刊マンガ誌でグラビアを飾ったときみたいに。



同時刻、N県某所。学校の校長室

ゆりあさんのスマホが鳴る。私もの前にも関わらず、電話に出る。


「え?どう言う事?山陰から応答がない?デトロイトも爆発炎上?さらにドバイのバックアップも?」


困惑がこちらにも伝わる。どうやら間に合ったようだ。遅ればせながら、『テンペスト』に通知が表示される。


『実行完了した』


勝った。これでゆりあさんは『シーズン3』を実行できない。

突然、ドアが開けられてマリさんが入って来るなり叫ぶ。


「わかったわ!モナコのプライベートバンク!そこからマルセイユの傭兵派遣会社に送金されてるわ!」


一方で状況についていけない舞先生が、1人キョロキョロと周囲を見回している。


「何?どうしたのよ?」

「目には目を、テロにはテロを。山陰にあった赤麹で大変な事になった製薬会社の研究施設とアメリカ、デトロイトにあった予備ラボを同時に攻撃しました。それとドバイにあった『スーパーセル:セカンド』も破壊してます」


私を信じられないと3人が見る。


「やってくれたわね夏樹ちゃん。でもアメリカやUAEが黙ってないわよ?」

「あれ?聞いてませんでした?私達のスポンサーはアメリカの『彼』ですよ?その辺にいる人でも現政権に近しいって知ってますよ?UAEは雇った傭兵派遣会社が訓練でよく使う国なので少しの上乗せで黙ってくれます」


グッとゆりあさんの表情が変わる。歯軋りがここまで聞こえそうな程に。


「自分が何したかわかってるの?山陰で45人、デトロイトは32人、ドバイは5人だけど全部人の命なのよ?」


マリさんが非難するように言った。


「だから何ですか?『勝利』に『犠牲』はつきものですよ。『勝利』は『成功』とも言い換えられます。あなた方だって、舞先生の弟さんを『成功』の『犠牲』にした。探せば他にも『犠牲』はあるかもしれない」


黙る大人3人に、更に言い放つ。


「ゆりあさんの敗因は優しい事。社会や人を無理なく受け入れさせようとした事ですよ。私なら50%以上にいきなりする。容赦なんかしない。だから、人が確実に死ぬ計画を立てられた。そしてそれをイメージできなかった。それだけですよ」

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