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オムツと私たち  作者: 062
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佐藤ゆりあ(5)


保健室での3者面談から1週間が過ぎた。


受験生の朝は早い。

6時にスマホのアラームで目が覚めた。オムツに手を入れて確認する。ぐっしょりと濡れた感覚。でもおねしょではない。夜中にベッドの中でオムツにオシッコをしたのだ。そのまま追加でオシッコをする。この1週間、私はウンチ以外でトイレを使っていない。そのおかげか昨日から少し意識するだけでオムツにオシッコが出来るようになった。


脱衣所でオムツを外して、シャワーを浴びる。そこで私は異変に気がついた。すぐさま、キッチンにいたママに報告する。


「ママ、オムツがない」

「大丈夫よ。昨日、ネット通販で注文したから」

「今日も配達してくれるのかな?」


私は疑問を口にする。ママがスマホを見たまま固まった。今日は12月31日、つまり大晦日である。当たり前だけど、明日は元旦。多分、年賀状を運ぶ郵便局ぐらいしかやっていないだろう。


「私、あれ以来久しぶりにショーツを着たもの」

「え、1つもないの?」


ママが驚く。時計を確認してつぶやく様に言う。


「今が7時だから、あと3時間。大丈夫?」

「別に3時間ずっと我慢するわけじゃないんだし、大丈夫よ」

「そうよね。お正月の買い物のついでに買いに行きましょう」


そう言って朝ドラの総集編を見ながら、朝ごはんにする。昨日まで仕事だったママは簡単にコンビニのサンドイッチとカップスープを用意してくれる。途中でコーヒーを淹れたママが私にもカフェオレにして渡してくれた。


朝ドラの総集編をキリのいいところで自室に戻る。こちとら受験生なのだ。この前の模擬試験は作戦もあってワザと成績を落としたが実は合格圏内なので、受験勉強というより宿題の消化のためだ。その宿題すらあと数学だけで終わる。


たかし君をx km/h、お兄さんをy km/hとする・・・


文章問題の途中でオシッコがしたくなって、トイレに向かう。部屋をでて斜め前のドア、そのドアノブに手をかけた時に指先にパチっと音がして鈍い痛みが走った。いわゆる、静電気だ。それにびっくりして手を引く、と同時にパンツが暖かくなった。どうやら、やってしまったらしい。慌てて、トイレに駆け込んだ。


よかった。人前じゃなくて。


それから1時間後、ママの車で安売りの殿堂なお店に着く。カートを押しながらママについて行き、いろいろカートに入れたあと紙オムツのコーナーに行く。


「前のと同じでいい?」


ママが聞いてきた。コクンとうなずくと2セットをカートに入れてレジに行く。私達は前から2番目だったが、私は危機感を覚えていた。少しオシッコがしたいのだ。レジを待っていたら間に合わない自信がある。どうしようかとソワソワしていたらしい私を見て、気がついたらしいママが「ゆりあ、ひょっとして・・・」と私に小声で問いかける。うなずく私に「間に合いそう?」と聞き、今度は首を横に振る。意を決してママが行動に移る。


「すいません、この子が今病気でオムツが必要なんですが、後で精算しますので、ここで開封してもいいでしょうか?」


レジの店員さんに声をかけて許可をもらうとオムツを1枚だけ取って、私を連れてトイレへと急いだ。途中で4回程チビりながらも、大決壊だけは避けて、なんとかたどり着いたトイレでオムツに変えてレジに戻った。


「ねぇねぇ、なんでお姉ちゃんはオムツなの?」


並び直した列の後ろに来た小さな子にいきなり聞かれた。なんで?と思っているといきなりママが背中側のスカートの裾を整えた。


どうやら、慌ててオムツをつけたせいでスカートの裾を中に入れちゃってたみたい。私は顔を真っ赤にしながら答えた。


「お姉ちゃん病気なの」

「そうなの?たいのたいの飛んでけ〜」


私とママは逃げる様にお店を後にした。


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