高野舞(1)
舞はずっと疑問を感じていた。
(なぜ、この場に自分が呼ばれたの?)
自分の教え子であるはずの夏樹に補助してもらって、ようやく会話の内容が理解できる程度でしかない。そんな戸惑いなど知らずに会話は先へと進んでいく。
「高野先生は何故この場に同席しているかわからないと思っていますね?」
マリが舞の考えを正確に把握する。続いて、ゆりあが告げる。
「マリちゃんが私の『プロンプト』だとして、そこの天才ちゃんは誰が『プロンプト』だろうね?」
そういう事かと、舞は納得する。夏樹に行動を起こさせたのは自分の情報だった。
そういう意味では舞はこの事態の『トリガー』だった。
「そして、先生だってうすうす気づいているね。『ユリア・シンドローム』や『テンペスト』の正体に」
ゆりあが試すように聞いた。
「ええ、少しは。排尿機能の喪失と引き換えに才能を開花させるという『ユリア・シンドローム』これが『テンペスト』によって引き起こされているっていう事ぐらいは」
「正解だ。どうせそっちの天才少女は当然気づいている。仕組みすら答えられるんじゃないかな?」
天才少女といわれた夏樹は笑って返す。
「あなた達が天才だと認めた人間が『テンペスト』によって、逆トイレトレーニングをされた状態。それが『ユリア・シンドローム』の正体でしょ?
『テンペスト』には神経信号や脳の指令を読みとらせ、データを収集。それを量子コンピュータで解析して、偽の命令を身体や臓器に送る。
または正しい命令を逆位相にして命令を中断させたりする。これはヘッドホンでノイズキャンセラーとかのイメージに近いかな?」
あっさりと秘密を暴露する。しかし、天才をもってしても天才少女は止まらない。
「しかも、この計画すら『フェイズ2(第2段階)』でしょ?」
今度こそ、夏樹を除く3人が驚愕する。




