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オムツと私たち  作者: 062


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木村由香

わたしはある日、先生からもらった宿題プリントの裏側に見てはいけないものを発見した。「スマートウォッチ テンペスト 個人別 ログイン表」と書かれた用紙。IDとパスワードが生徒別で並んでいる。


(これを使えば!)


とっさにある考えが浮かぶ。1つ上の学年の夏樹ちゃんだ。彼女は2週続けておもらしした。きっとまたするだろうと思う。都会の方では『ユリアシンドローム』という病気が流行っているらしい。だから彼女もそうなるんじゃないかなと思う。


スマホを使って管理画面にログインする。


確か・・・あった。

「トイレお知らせ機能」


本来なら認知機能に問題のあるお年寄りが、オムツを交換するタイミングを知らせるための機能。これをわたしのスマートウォッチに通知するように設定して・・・OK、これでいけたはず。小学4年生でもこれぐらいできるんだから。


何日か煽る様なメールを送って遊ぶ。そのうち授業中でも通知が来るようになった。


(きっとおむつを使っているんだ。5年生なのに恥ずかしい)


いつみんなにバラして楽しもうかと思っていたある日、それは起こった。


5時間目。授業開始から15分。突然、刺すようなおしっこしたい感じが襲って来た。トイレに行こうと担任の舞先生を見た瞬間、限界になった。パンツから、ズボンを温かい濡れた感じが広がる。そして、わたしの席の真下に水たまりを作る。1週間前の夏樹ちゃんと同じ光景。


「今度は由香ちゃんがおもらしした!」


1年のまさき君が叫ぶように言った。

わたしは何もできず、ただ座っているだけ。


(どうして?)


「夏樹ちゃん悪いけど、保健室まで一緒に行ってあげて」


担任の舞先生が言う。よりにもよって、夏樹ちゃん。夏樹ちゃんは淡々とわたしの手を取り、教室を出る。


廊下に出て、職員室を通り過ぎて、隣が保健室。でも「出張中。気分の悪い子は職員室まで」とメッセージカードがかけてある。それを気にすることなく、夏樹ちゃんはポケットから鍵を取り出して、保健室を開けた。


「どう?おもらしした気分は?」


あくまでも無表情に夏樹ちゃんが聞いて来た。


「自分が一番わかってるでしょ?」


わたしも応戦する。その言葉を待っていたように、綺麗に笑う夏樹ちゃん。


「どうする?今日は体育なかったし、着替えはないよ?私の以外は」


「貸してくれるの?」


「うん」


と綺麗な笑顔のまま、戸棚から出したのは、スカートと紙おむつだった。


「はい。これよ」


「ふざけてるの!こんなのつけられるわけないじゃない」


「まだわかってないんだね?じゃあ、どうするの?」


わたしは他の戸棚を開く、あった!


「これを着ればいいでしょ?」


どうにかわたしの着れそうな予備のパンツとスカートを探し出した。


「またしちゃっても知らないからね?」


そう言って、夏樹ちゃんは教室へと戻って行く。わたしも手早く着替えて教室に戻る。


クスクスと笑う年下の子達が耳ざわりだど、プリントの計算問題に集中する。あと20分、このプリントを片付ければ宿題が減るはずだ。


あと5分のところでスマートウォッチが震えて通知が来る。


『排尿を検知しました』


(なんだかんだ言ってもアンタも我慢できないんじゃない!)


心の中で毒づく。それにしても、まだ低学年の子がクスクスと笑ってる。


「誰か教えてあげてよ」

「お前が言えよ、同じ女の子だろ?」


どうも自分を見て言っている気がする。その時、夏樹ちゃんが手を挙げて、言う。


「先生!また、由香ちゃんがおもらししてます」


(何いってる・・・・え!)


さっきのリプレイみたいに椅子の下に水たまりができていた。

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