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オムツと私たち  作者: 062


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山中サクラ(4)

サクラは、病院の待合室で緊張している自分を感じながら、目の前に座るママの顔をちらりと見た。ママはやっぱり少し不安そうな顔をしているが、それでもサクラを気遣って微笑んでくれる。その笑顔が、いつもサクラを安心させてくれるものだと、サクラは心の中で思っていた。

診察室に呼ばれてから、すぐに先生はサクラの症状について尋ねてきた。サクラは自分の体の変化について説明し、特に「尿意が感じられない」という部分に焦点を当てた。先生は真剣に耳を傾け、サクラがその症状をどれだけ悩んでいるかを理解しているようだった。

診察が終わり、先生が結果を告げた。


「検査の結果、特に異常は見つかりませんでした。尿意を感じないという症状は、精神的なものから来ている可能性もありますが、今のところ身体的な問題は確認できません。」


サクラはホッと息をついたが、同時に心の中で何かが引っかかっていた。診察を受けて気づいたことが一つあった。自分の体に異常がないことは嬉しいが、どこかでママが何かを隠している気がしてならなかった。

診察室を出た後、サクラはその疑問を晴らすために思い切って質問した。


「ママ…何か隠していることがあるんじゃない?」


その問いかけに、ママは一瞬驚いたような顔をしたが、やがて深いため息をついて言った。


「実は…サクラ、あなたにユリアシンドロームを発症させたかったの。あなたには特別な力を授けて、もっと素晴らしい人生を送ってほしいとずっと思っていた。」


サクラは言葉を失った。自分の母親が、何の前触れもなくそんなことを言い出すとは思わなかった。しばらくその場で言葉を探していたが、ようやく口を開いた。


「それって…私のためじゃなくて、ママのためだったんじゃないの?」


ママはサクラの目を見つめ、しばらく沈黙してから答えた。


「ごめんなさい…確かに、あなたのためというよりは、私の期待が強すぎてしまったのかもしれない。でも、私は本当にサクラに素晴らしい力を与えたかった。ユリアシンドロームが発症すれば、きっとピアノや勉強にもっと集中できて、あなたももっと輝くことができると思ったの。」


サクラはその言葉を聞いて、胸が締め付けられるような思いがした。母親の愛情は感じられたが、その方法が本当に正しいのか分からなかった。どうして自分を特別にしたかったのか、その理由が自分には理解できなかった。

それでも、サクラは少しずつ心の中で整理し始めていた。ママが自分を本当に愛していること、そしてその愛情が過剰であったことに気づいた。ママは間違っていたかもしれないけれど、彼女の心には確かにサクラへの深い思いがあった。


「ママ…私は、あなたの気持ちを理解してる。たとえそれが間違っていたとしても、あなたは私のことを心から大切に思ってくれていたんだよね。」


サクラはしばらく黙っていたが、最後にこう付け加えた。


「だから…許すよ。私は、ママが私を愛してくれる限り、頑張ってみる。」


サクラはママの顔を見上げ、その瞳をしっかりと見つめた。ママは涙ぐみながらサクラを抱きしめ、深く頷いた。


「ありがとう、サクラ。あなたの気持ちを理解してくれて、本当にありがとう。」


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