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オムツと私たち  作者: 062


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橋本花乃(3)


「お姉ちゃんは今日もおねしょしたんだぁ〜!」


風乃(かざの)がカレンダーを見て言った。


「23、25、27、そして今日3月1日。つまり、2日に1回だね。月乃(つきの)が2日に1回の時はまだ昼も危なかったから、お姉ちゃんも昼間、おむつした方がいいかもよ?」


「馬鹿な事言わないで、学校行ってらっしゃい!」


わたしの大声にも涼しい顔で風乃が玄関から登校していく。中学校卒業まであと2週間程となったこの日、私立高校に進学するわたしは休みである。ママも今日はパートが休みなので郊外のショッピングモールにお出かけする事になった。ママが観たい映画があるらしい。


車で30分程でショッピングモールに到着。アナログなママはネットで事前にチケットを買ったりしない。シネコンについて券売機で席を選ぶ。


「席は真ん中ぐらいでいい?」

「ママにお任せするよ。でも、周りに人がいないといいな」

「少し前の方だけど、ここなら空いてるわ。ここから売れたらわからないけど」


そんなやりとりの後、お決まりのポップコーンとドリンクを持って館内に入った。少し前にドラマでやってた弁護士モノの劇場版である。


容疑者の切ない秘密が暴かれて、スクリーン内は感動に包まれる。そんな中、わたしだけバトルが繰り広げられている。戦う敵は自分の尿意。この映画でのクライマックスの最中にトイレに立てば左右どちらかの人に迷惑をかけてしまう。我慢するしかないだろう。

登場人物が全員涙しての感動のラストシーンからエンドロールに切り替わる。「トイレ」とママに短く告げて席を立つ。エンドロールならさすがに他のお客さんも通してくれるだろう。


何度か来た事があるので迷わず出口から右に進む。すぐにトイレがある。が、トイレの外まで伸びる行列にわたしの顔は引きつった。他のスクリーンで上映が終わったばかりなのだろう。それでも、並ばないとおもらし確定である。意を決して、最後尾に並ぶ。


(うっ〜〜う!)


括約筋が命令に反して緩む。慌てて命令を上書きして再び締める。少し漏れた。でもこのぐらいならショーツのクロッチが吸収してくれるだろう。行列も少し進んでトイレの中に入った。


あと6人。

いけない。また少し出ちゃった。慌てて我慢。


あと2人。

さらに我慢しようとする。

が、できない。





わたしの膀胱はたった今、決壊した。

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