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オムツと私たち  作者: 062


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閑話 娘と友達


マリが初めてウチに友達を連れてきた。


「はじめまして、佐藤ゆりあです。マリちゃんと仲良くしてもらってます。一晩お世話になります。それとコレ母からです」


そう言って、評判のいいケーキ屋の紙箱を差し出す。少なくともアタシは動揺している。マリと身長が変わらないのだ。義娘のマリは幼い頃の虐待が原因で15歳の今でも135cmぐらいだが、ゆりあちゃんもそんなに変わらない。2人でいると小学3〜4年生のグループに見えてくる。セミロングの黒髪をそれぞれの耳の後ろで2つ結びにして、髪と同じく黒を基調としたワンピースは何故か色っぽさがあった。見た目は子供中身は・・・という息子が好きだったアニメを思い出した。


「ご丁寧にありがとう。アタシはマリの母です。どうぞゆっくりしていってね」


色々聞きたい事があるが玄関でする話でもないだろうと中に入ってもらう。途中、マリが自分の部屋へ連れて行こうとするが、アタシがリビングへと誘導する。紅茶を用意していたので、それを出してダイニングテーブルに3人とも座った。


「ゆりあちゃん、修学旅行で一緒の部屋だったと聞いているけど、マリの症状については?」


親として当然気になる。マリの秘密を唯一と言っていい程知っているのだ。生殺与奪を握っていると言ってもいい。


「たぶん、全て」


知られていて、この1年何も無かったのだから口の固い子なのだろう。


「マリちゃんママが心配するような事はありませんよ。私だって」


そう言ってワンピースのスカート部分をたくし上げる。


「お互い様なのですから」


「「えっ!」」


アタシとマリの声が同調する。そこから見えたモノはマリと同じ下着。いや、幼児用の紙おむつだった。


マリも知らなかったようで、動揺しているように見える。珍しい。


「ゆりあちゃん、どうして?」

「『受験ノイローゼ』って言うらしいよ。だからマリちゃんママ、安心してください。あなたが本当に恐れる様な事はありえませんし、できませんから」


感情を揺らしながら質問したマリをすり抜けて、アタシにゆりあちゃんは言う。アタシの考えなどお見通しだったようだ。


「マリちゃん、言いたい事も聞きたい事もあると思うけど、今日の夜2人きりでお話ししましょう?」


諭すようにゆりあちゃんが言う。少し間があって、マリは諦めたように答えた。


「・・・・・・・・・それもそうですね。センシティブすぎる内容になるでしょうし。それとお母さん、ゆりあちゃんもおむつ交換が必要みたいなので、そろそろ部屋へ案内してもよろしいでしょうか?」


先程、ゆりあちゃんがおむつを見せた時にお知らせサインが青くなっているのをマリは見逃さなかったらしい。(アタシもだけど)

アタシが了承すると、2人は荷物を持って2階へ上がる。


「・・・・・・先程の脱衣所の蓋付きゴミ箱がおむつ用になっています」

「ありがとう。マリちゃん」

「それでは予定通りにやりましょうか?」

「そうだね」


我が家を案内しながら、リビングに戻ってきた2人はキッチンに立つ。アタシも聞かされていたがバレンタインのお菓子を手作りするらしい。


「そういえば量子コンピュータの記事見ました?」

「ビットエラーコレクションのやつ?」

「そうそれです!でもあれ、なんのために?ってそもそも論なところありません?」

「アレはノイズやエラーを除外や回避する事で計算領域を増やして時間短縮や正確性を向上させる手段だからね」


バターに砂糖を混ぜながらマリが質問して、計量を担当しているゆりあちゃんがそれに答えている。アタシは会話に入れそうもない。


「卵は冷蔵庫?」

「もうこちらに出してますよ。卵は自分がやってしまうので、粉系をふるっていただけると」

「はーい」


普通の会話になったのを見逃さず、アタシは口を出す。


「なんだか心配なさそうなので、晩ご飯の買い出しに行こうと思うけど、何かリクエストはある?」


少しためらいがちに、ゆりあちゃんが答えた。


「鍋物がいいです。2年前に父が単身赴任してから、やらなくなってしまって」


「OK」と言いながら、買うものを考える。せっかくだからカニでも入れようかしら?


「あ、ゆりあちゃん甲殻類に軽いアレルギーがあるから、お母さんそれ抜きでお願いします」


セーフ。マリマジGJ(グッジョブ)



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