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オムツと私たち  作者: 062


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閑話 2人の忘年会

忘年会をこの店にした理由は単純明快で、喫煙が出来るからだった。通されたソファー席で早速、君枝はタバコに火をつける。


君枝がちょうど吸い終わるのを見計らうかのようなタイミングで優子が店に入ってきた。


「お疲れ様です」

「お疲れ、とりあえず生を頼んでおいたわ。料理は適当に後で頼んで」


2人揃ったのを見越して、ジョッキが2つ運ばれて来る。ついでに優子がサラダと料理を注文している。


「それでは1年間、お疲れ様でした!乾杯」


外は師走の寒風で凍える程だが、暖房の効いたこの店だと、キンキンに冷えたビールが沁みる。それを潤滑剤に女性2人という事もあり日頃の愚痴を言い合う。


小一時間がたった頃、新しい酒が来たついでに君枝が思い出した様に聞いた。


「そういえば、ゆりあちゃんの容態は、どうなの?」

「先週、病院で診察を受けたら、心因性の過活動膀胱だろうと診断されました」


そこまで言えば分かると優子は思っている。実際、君枝には伝わったようだ。2人揃って総合病院の門前薬局をやっているので知識はあった。


「で、どんな感じ?」

「正直言って、トイレットペーパーの減りが半分以下になりました」


なんとなく「昼間もオムツにおもらししています」と言いづらいのか、優子は比喩的な表現で誤魔化した。


「原因そのものが受験にありそうなので、終わるまで完治は難しいと思います」


そう続けて、優子は手にしていたハイボールを流し込んだ。何も出来ない無力感からだろう、母親としても薬剤師としてもである。


それに気づいてしまった君枝はタバコに火をつけて、酒を注文する。


せめて今夜はそれを忘れられるようにと願いながら。

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