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ソレイユの輝き   作者: Daisaku
9/12

第9話 最高司令官のシナリオ

「飛島さん、あなたの事は自衛隊結成時よりの引き継ぎ事項で現場である自衛隊幹部は全員知っておりますし、なんでもご指示には従います。しかし、いくら内内で許可があると言っても、他国の基地に攻撃するのは、上官の許可が必要です」


基地に残った飛島ヤエは幕僚長の山本と再度、アメリカが駐留する関東北部の基地への攻撃の件で話をしていた。しかし、自衛隊はかつての日本帝国軍のような軍としての統制は取れておらず、陸軍を統括する者までが、まるで、会社員のような、回答に、ヤエは少しイライラしてきた。


「そうか、その他で現在の日本政府で私の事を知っているのは国務大臣と法務大臣、それと宮内庁ぐらいだからな、結成当時の自衛隊は大臣などなく、政府内でもとても弱い立場だったから、現場の指揮官達だけの引き継ぎ事項になっていたからな」


「そうですね。日本でのこういった状況では動きずらいですよね」


ヤエは、前々から、この日本での政治や特に防衛において、戦後アメリカに羽向かう事ができないように押しつけられた法律を半世紀たっても、未だに律義に守っているこの国は、本当にどうかしていると

あきれていた。しかし、こんな国の状況でも1人あいつの子供が、政府にいたな~と思い出した。


「ふ~、連絡したくはないが、あのお調子者に連絡するか。親父はいい奴だったが、どうもあいつは自己顕示欲が強く、あまり話したくはないが、あれからだいぶ時も経ったし、少しは成長しただろう」


その頃、日本政府首相官邸では、


「総理、また、アメリカのが外務大臣から連絡がありました」


上条総理はあきれたように


「しばらくほ~っておけ、ここで外務大臣クラスの交渉のテーブルにつけばいいようにされるだけだ、あくまでも日本としては大統領としか交渉をしないと言っておけ」


「それが、変なんですよ。こんなアメリカが不利な状況になっているのに、大統領と全く連絡が取れないんですよ。向こうだって、できるだけ早くこの状況を打開したいはずなのに、全く動きがないんですよ」


「まあ、日本にとってはその方が都合がいいな。全く、アメリカは自分で自分の首を絞める様なことをするなんて、本当に理解できないな」


上条総理はこの状況が日本に取って、とても良い状況になったことをうれしく思い、上機嫌だった。そこに、個人携帯に連絡が入った。見た事もない番号だったが、ちょうど気分が良い時だったので、すぐに電話にでてしまった。


「久しぶりだな。お調子者の卓坊主~」


「どなたかな?なんでこの番号を知っているんだ。間違い電話なら切るぞ」


「私の周りにいつもウロウロ付いて来て、小さい時に何度お前を助けてやったのを忘れたのか?

私だ、飛島ヤエだ」


上条総理はかつて父の大恩人であり、もう40年以上は会っていない、憧れの女性からの突然の電話に驚愕した。


「長官殿ですか」


「そうだ、やっと思いだしたか。しばらく会わないうちにずいぶん偉くなったじゃないか」


「お久しぶりです。長官!どうされたんですか。こんな急に連絡を下さって」


「話す前に、お前の父さんの葬式に出れずにすまなかったな。あいつは口下手だが、頑張りやで、ぶれずに一つのことを必死にやり遂げるすばらしい男だった」


「ありがとうございます。父もあなたの部下として働けた事を死ぬ直前まで誇らしく語っていました。そして、あの戦争で上条家を窮地から救われ、こうして上条家があるのも、すべて飛島長官のおかげだと言っていました。いつも長官に何かあったら、必ずお役に立つように立派な人間になれと、申しておりました」


飛島ヤエは昔の事を思い出し、相変わらず律義なことを言う、かつての同志に胸が熱くなった。


「卓、これからお前に大事な話をする。私の話、いや、お願いを聞いてくれるか」


上条総理はこの日のために、自分はこの地位に昇りつめたんだと力をこめた声で


「お聞きします。あなたのご指示なら、どんなことでも、ご協力いたします」


ヤエは小さい時はあんなにお調子者でわんぱくだった子が今では成長して、父親と同じ様な態度で接してくれることをうれしく思った。


「卓、これからアメリカは日本に対して、うそをでっちあげて、日本を占領する動きを始めようとする。それを防ぐために、お前に動いてもらいたい」


上条総理は父から耳にタコが出来るくらい、長官殿の予知能力は外れる事がないと聞いていたので、疑う事なく、話を聞いた。


「90分後に関東北部のアメリカ空軍基地武器庫に航空自衛隊の戦闘機で爆撃をしてもらいたい」


上条はアメリカを攻撃することに驚いて


「アメリカを攻撃ですか」


「そうだ」


「なぜ、アメリカを攻撃するのですか。よく意味がわかりません」


「日本は例え同盟国のアメリカから予告なしに攻撃されても、何も反撃もしない弱小国だということになれば、これ見よがしに近隣諸国が攻撃をしかけてくるだろう。ましてや、安全保障をしてくれているアメリカが日本を守るのではなく攻撃しているのだから、ここぞとばかりに攻めて来るぞ。恐らく周辺の島から攻められ、まずは北海道などはすぐに他国に占領されるだろう」


「まさか!」


「アメリカや日本が何もしてこないとわかれば、こんな美味しい国をいただかない国はないだろう。だから、日本はどんな大国だろうが、やられたら、やり返す、その姿を全世界に知らしめる必要があると言っているんだ」


「ですが、今回、日本は死傷者ゼロでしたが、予告なしに攻撃すれば、アメリカ兵に死傷者がでるとと思いますが」


「それなら心配ない、向こうの基地の責任者に目的の武器庫にはだれもいない様に内内で指示してあるからな」


上条総理はしばらく考えて、昔、父に何度も言われた事を思い出し、


「そう言えば、昔、父が言ってました。飛島長官の指示は外れた事がないと、それを実行しなければ、取り返しのつかない惨事が待っていると」


上条は考えて、天井を見上げ


「ふ~これで私もよくて総理をクビ、へたをすれば、犯罪者ですな」


「そんな心配するな。ここにいる山本の部隊がお前を救い出し、かの国へ亡命でもなんでもさせてやる。私は世界のあちこちに顔が聞くからあとのことは心配するな。いざとなれば家族全員面倒を見てやるから」


上条は苦笑いをした。だが、この自分をあの長官が頼ってくれたことがとてもうれしかった。


「それを聞いて安心しました。私の権限で航空自衛隊から最新式の戦闘機を発進させます。長官、目的の座標を指示願います」


「よし、北緯・・・・東経・・・・だ」


「承知しました。緊急でただちに指示いたします」


上条総理は攻撃時間と攻撃場所を航空自衛隊指揮官に緊急で指示した。総理の指示もそうだが、かつての英雄、飛島ヤエの指示でもあることを伝えると、すぐさま、戦闘機を発進させた。飛島ヤエは富士基地の新しくできた施設の中で、ひと仕事が終わり、ほっとした。


「さ~て、用は済んだし、私も帰るとするかな」


「山本、悪いが自宅まで誰か送ってくれないか」


「はい、もちろんです。あの~飛島さん、もしかして、今日の一連の戦争騒ぎは、全てあなたが仕組んだシナリオだったのではないですか?戦争に縁のない自衛隊に一触即発のアメリカとの戦争さわぎや、有事の時には、例え大国アメリカだろうが、戦いを挑む日本の強さなど、どうみても、この日本の平和ボケした、政府や自衛隊に渇を入れた様にしかみえないのですが、だいたい、基地の入口で入る、入れないなんてことでもめて、戦争を始める司令官なんてありえませんよね」


飛島ヤエは大笑いをして


「お前はよく頭が廻る男だな。それ以上、余計なことを言うなよ。お前も私もろくな事にならんからな。私はもう80歳をすぎた老人だ。そんな戯言、理解できんな。今日は疲れちまったよ。早く車を呼んでくれよ」


山本はわざとぼけたふりをしている飛島ヤエを見て、どんな時も、日本のことを考えている、かつての英雄に尊敬とあこがれの目で見つめた。そして、迎えの車に乗り、どこにでもいる老女は静かに帰って行った。


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