第7話 秘めたる少女の力
「おう、山本か!」
山本は深々と頭を下げて
「飛島さん、先程は基地の入口で部下が非礼な事をしてしまい、申し訳ありませんでした」
「かまわんさ、何はともあれ、こうしてこの施設に孫と来れたんだ」
山本幕僚長は飛島ヤエがあまり怒っていないようで、ほっとした顔で落ち着きを取り戻した。そしてアメリカ軍指揮官であるオーネル中佐に
「日本自衛隊では、もうだれもあなた達に危害を加える者はいません。先程のヘリを呼び戻していただいてかまいませんよ」
そのことを聞いてすぐに中佐は、うれしそうにヘリ部隊に戻ってくるように指示をだした。そして、
オーネル中佐は先ほどのある方の設備というのが気になる様で
「ある方とは誰ですか?」
飛島ヤエは走り回っている孫のマリを指差した。
「あのプリティガールですか」
「そうだ」
「どうして、ここまでするんですか?」
「お前達にはわからんだろうが、あの子は私なんかをはるかに凌ぐ能力を持っている、そして、その能力はいつしか、この世界を救える唯一の存在になるだろう。だから、私が生きているうちに私が知っているすべてを伝えたいと思っている。ここはいわば、世界のあらゆる重火器をあの子が使えるえるようにするための訓練設備だ」
「あのプリティガールがですか?」
いくら伝説の司令官といえど、6~7歳ぐらいのあんな少女にそんな力があるとは思えず中佐は
「本当にすごいんですか?」
「すごいな、なんなら、お前達の中で腕っ節が強い奴がいたら、戦ってみたらどうだ」
「アハハハ、ご冗談を我が国では児童虐待は大変な罪ですから」
飛島ヤエは施設を走り回っているマリに大声で
「マリ~試合をするぞ!こっちに戻ってこ~い」
ばあちゃんの声が聞こえた途端、ものすごい速さで走って戻って来た。
「ばあちゃんとこんなところで試合するの?ばあちゃん強いからな~みんなが見ているしやだな~」
飛島ヤエは笑って
「今日は特別だ。お前も私以外の人と戦ったこともないから、アメリカ軍兵士と格闘してみろ」
マリは黙って、ここにいるアメリカ軍兵士を急に見渡した。
「う~ん、う~ん、ばあちゃん、あんまり強い人いないよ。でも、一番強いのはあそこにいる黒人の人かな~」
中佐は軍の中でも格闘では最強と言われている、マギー軍曹を指差した事に驚いた。
「中佐、あの男にマリの相手をさせてみてはどうだ」
「司令官、ご冗談を、まさか本気ですか?」
「私はあんまり冗談が好きじゃないんだよ。さっさと呼んでくれよ」
中佐は半信半疑でマギー軍曹をこちらに呼んだ。
「中佐!お呼びですか」
「おう、マギーちょっとあのプリティガールと格闘をしてくれないか?」
マギー軍曹は目の前にいる背の低いプリティーガールを見て
「中佐、これは何かのお遊びですか?冗談はやめてくださいよ。私はこれでも、軍の中で格闘術の教官もしているんですよ」
「そうだな。しかし司令官の指示だ。すまんが軽く相手をしてやってくれ」
飛島ヤエはその話しを聞いて、笑ったように
「軍曹、本気でやらないとケガをするぞ」
「まさか、こんな子供相手に本気なんか出したら、この子死んでしまいますよ」
「マリ、軍曹はお前の事をずいぶんとなめているようだから、けがするといけないから、戦う前にお前の力を少し見せてやれ」
「うん、いいよ~」
「よし、あそこにあるサンドバックを思い切り吹き飛ばしてみろ」
「ばあちゃん、本気出してもいいの?」
「あ~教えた通り、気をためて、思い切りやってみろ」
「うん、やってみる」
マリは急に体中に力を入れ始めた。すると、体がみるみる膨らんできて、体がひとまわりほど大きくなった。そして体中から妙なオーラを出して、体周辺の景色が歪んで見えた。そして、辺りの音が一瞬消えてしまい、その瞬間、マリがその場から消え
「バチーン」
と物凄い音がした。サンドバックがあったはずのところにサンドバックが消えていた。良く見ると吊り下げられていたサンドバックは上部が切れてしまい、近くの壁まで吹き飛んでいた。
「ばあちゃん、これでいい?」
飛島ヤエは笑いながら
「いいぞ!マリ、お前は最高だ」
その様子を中佐やマギー軍曹は見て、腰を抜かした。また、近くにいたアメリカ軍兵士もこのプリティーガールの凄さを目の当たりにして、震える様に驚き
「うお~すごいぞガール、こんな凄い物は見た事ないぞ~」
マリの廻りでは大騒ぎになった。マリは、みんながなんで騒いでいるのか不思議に思い、
「別に大したことしてないけどな~、ね~ばあちゃん」
「そんなことはないぞマリ、普通の人から見るとすごいことなんだ。それと、今の様に本気で力を使うとばあちゃんとは違い、この軍曹は死んでしまうから、気をためず、普通の力で戦え、おまえはまだ力の加減というのがわかっていないからな、それと相手の体の状態・感触で軍曹がもう戦えないと思ったら、すぐに戦いをやめろ、いいな」
「え~と、この人にケガをさせないようにすればいいんだね」
「そうだ」
「わかったよ~ばあちゃん」
マリはばあちゃん意外と戦うのが始めてなので、ウキウキしていた。マギー軍曹は
プリティーガールのすごさを見て
「中佐、この子本当に人間ですか?あんな力で向かって来られたら、自分は一瞬で死んでしまいます」
「そうだな、どうする戦うのはやめておくか」
「はい、できれば、自分は本国に家族もいますし、戦いに出て名誉の戦死なら受け入れられますけど、子供に正面から戦って死んだなんてことになったら悲しすぎます」
中佐は笑いながら
「そりゃあ、そうだ。司令官、先程は失礼しました。やはり、あなたの言う事にまちがいはないですね」
「なんだい、戦わないのかい。あの子は戦い始めてから、その力の本領が発揮されるのにな」
オーネル中佐とマギー軍曹は目の前にいるプリティーガールに挨拶をした。ガールは英語がよくわからず、首をかしげて、ばあちゃんを見た。
「お前にあいさつをして、名前を聞いてるぞ」
「そうなんだ。こんにちは、わたしは飛島マリです。ばあちゃんの弟子です。よろしくお願いします」
飛島ヤエはマリの言った事を2人に伝えた。すると、中佐と軍曹はさきほど、マリをバカにしたことを謝った。マリはそんなことはどうでもいいといった、かわいらしい笑顔で2人を見た。軍曹はプリティーガールを見て
「司令官、こんなに強いなら、空手でも柔道でもどんな世界大会に出たって絶対優勝できますよ。そうしたら、有名人になって、お金持ちになれますよ」
飛島ヤエはあきれた顔をして
「そんなことには全く興味がないね。世界大会で優勝して、どうなるんだい?困っている人を助けたり、戦争が起きない様にしたり、この世界を平和にするほうがよっぽど重要だろう、あんなので優勝したって個人のみが称えられ、少しあまったお金を寄付する程度だろ。マリにはそんな小さい人間にはなってほしくないんだよ。軍曹、お前も、もうすこし視野を広くした方がいいぞ、例えお金にならなくても、目の前で困っている人がいれば全力で助ける、そうしていけば、意外と大きな道は開けるもんさ」
マギー軍曹は飛島ヤエの言葉が胸にささり、自分も、こんな小さなガールに負けていられないような気持になった。
「幕僚長!基地内にアメリカ軍ヘリ到着」
「中佐、ヘリが来ましたよ」
「そうですか」
中佐は手を上げて、兵達を集めて再度、飛島司令官の前で整列をして
「司令官、その他、お困りのことはございますか?」
飛島ヤエはあの大戦から数十年たってもこんなに律義に接してくれる、すばらしいアメリカ軍に対して
「みんな、助かったよ。お前達は統率の取れた立派な軍隊だ。さすが、世界一と言われるだけはある。こんなすばらしい兵士に会えて、私もうれしかったよ。これからも世界を守ってくれ」
「イエッサー」
100人の兵士が大声を出した。
「おっと中佐、ちょっとこっちに来てくれるか」
ヤエは中佐の耳元でこそこそ話し出した。
「アメリカは今、だいぶ厳しい状況にあるようだから、お前達のすばらしい行動に対して、わたしも敬意をつくさせてもらう」
そういうとヤエはニヤニヤしながら、中佐に指示を出した。オーネル中佐はその話しを聞いた途端、ゲラゲラと笑いだした。
「中佐、将軍に伝えてくれ。あとのことは私に任せろとな」
「イエッサー、我々もあなたにお会いできて光栄でした」
中佐は嬉しそうに飛島ヤエに敬礼をして、外に待機しているヘリに乗り、富士基地を後にした。




