5話 世界最高司令官の力
「大統領SSクラスの記載事項です」
「SSクラスだと」
「はい、私も引き継ぎ時にこんなSFみたいなばかな話を信じてはいなかったのですが、
この数十年も何もありませんでしたから」
「あの世界を救ったという平和への使者のことか」
「はい、そうです。あの方だけは、戦後先進国と言われている国の名誉司令官の位を持ち、ひとたび、号令をかければ、独断の権限で自在に軍を動かす事が出来ます。これは、人類を滅亡の危機から救った功績とあの世界大戦を終結させたことにより、与えられた権限と称号です。ですから国の最高責任者においては同等の権限を持つとされ、将軍は司令官からの指示を忠実に実行したまでです。だから将軍を攻めるのは筋違いです」
大統領はアメリカがこんな窮地になり、なにが世界を救った者だとバカにした態度で
「ジョージ、それならば、大統領権限でそのわけのわからない名誉司令官を逮捕して連行しろ。このような事態を招いた責任は死刑にも値する」
国防長官は大統領がそう言った途端、急に態度が変わり
「お前、今、なんて言った!」
電話が壊れる様な大声でジョージ国防長官はどなった。
「あ~何度でも言ってやる。こんな事態を招いた名誉司令官を逮捕し、刑務所に入れてやると言ったんだ」
日本にいる将軍やそばにいる補佐官も急に顔つきが変わり
「トーマス、本気で言っているのか」
「当たり前だ。アメリカが本気で怒ったらどうなるか、教えてやる!」
トーマス大統領が本気でそう言った途端、補佐官が不審者が侵入した時に押すボタンを押して、シークレットサービスが執務室に5名なだれ込んできた。
「国家主要国憲章に基づき、反逆者行為を確認、この男を連邦刑務所に至急送還しろ!」
トーマス大統領は何が起きたのかおどろいた顔で
「おい、冗談はよせ、私は大統領だぞ。お前達、何を考えている」
「この恩知らずが、先人達が決めたこの固い結束を無視するとは、お前はもう大統領ではない。一生刑務所で暮せ、早く連れて行け」
あっという間に大統領は連れ去られてしまった。
「トーマスはここまで、バカな男だったとは、こんなことが他の主要国に知れたら、我々は更にひどい窮地に追いやられると言うのに」
国防長官ジョージはあきれた様子でため息をついた。
「さて、大統領が不在では、この混乱は乗りきれないからな、至急、副大統領に連絡して、また、引き継ぎ事項を確認してもらわねばならないな、あの方は良識を持った方だから、こんなことにはならないだろう」
ニコラス大統領補佐官はすぐに副大統領に連絡を取り、ホワイトハウスまで大至急、来て頂くように連絡をした。
「ニコラス、大統領の件、他の大臣にも連絡が必要だな。さっきの暴言はこちらでも電話を通して録音済みだが、お前の事だ、盗聴器で録音はしていたんだろ」
「もちろん。これから、各大臣も招集して、この事態を説明しなければならないな」
ニコラス大統領補佐官は思い出したように
「ジョージ、そう言えば、司令官はもしかするとあの自衛隊の基地で現在、お困りの事態が起きたのではないのか。せっかく100人のアメリカ軍兵士がおそばにいるんだ。司令官は特殊無線をお持ちのはずだから、そこから発する特殊電波を拾って、お助けする必要があるな」
「将軍、聞こえたか。大至急、名誉司令官を救助し、あの方のお役に立つようにすぐに行動しろ」
「承知しました。必ず、見つけてみせます。後ほど、また連絡をいたします」
その頃、自衛隊富士基地では、武器庫の消化活動とヘリから降下してきたアメリカ軍兵士と対峙している者に分かれていた。そこに将軍から連絡が入った。
「降下した部隊に次ぐ、司令官が近くにいてお困りの様だ。今から送る特殊電波の周波数をたどって救助して、司令官のお役に立つように行動しろ」
将軍から送られてきた周波数を探索して、すぐに場所を確定できた。部隊を指揮しているオーネル中佐は全軍にすぐに指示を出し、自衛隊に背を向けて、目的となる基地の正門へ部隊を展開させた。対峙していた自衛隊は急に基地の敷地内から出ようとするアメリカ軍兵士を刺激することなく、ただ見つめいていた。
「山本幕僚長、やつらは正門に全員向かっていきます」
「ふ~そうか、どうやら争いは避けて、基地から出て行ってくれるようだな」
山本はやっと、この戦争でも始まる様な環境から解放されると思い、ほっとした気持ちになった。
「とりあえず、我々もアメリカ軍が基地を出るまでは、油断出来んぞ。とりあえず後を付けていくぞ」
山本は現場で直接指揮することもないのだが、このような経験もない事態に何かをしていなければ落ちつかない様な状態に陥っていた。その頃、正門外では
「さ~て、でっかい花火も終わった事だし、マリ帰ろうか」
「うん、ばあちゃん、今日は楽しかったよ!ありがとう」
無邪気なかわいい孫に頬笑みながら、2人は基地を後にした。そこには、阿部と武田が茫然として2人を見送っていた。
「おい、武田」
「なんですか」
「俺達、これからどうなるんだ」
「僕はもう知りませんよ。はあ~、あと少しで任期が切れるから、辞めようと思っていたのに、ついてないな~やっぱり上官にこの件、報告しないとだめですよね」
「そうだな。どのみち、ばれるくらいなら、自分から言った方がまだましだろ」
「でも、阿部陸曹、さきほど無線で聞きましたが、アメリカ軍が基地に降下しましたが、戦闘にならなかったみたいでよかったですよね。あんまり知られてませんが、我々銃は携帯してますけど、この基地にいる者のほとんどは弾装には弾が一発も入っていなんですから、アメリカ軍が本気でここを攻めてきたら、勝てるわけないですよね。有事の際に武器庫に弾を取りに行っている間にみんな殺されてしまいますよ」
「全くだ。しかも武器庫は吹き飛んでしまったしな。まるで飛島さんはこの事を知っていたようだな」
「こんなことがアメリカ軍に知れたら、大変なことになりますよ」
武田がそんなことを言っていると後ろから、妙な日本語で
「オウ、なんだ!銃は弾なしか~いいことを聞いたぞ」
阿部と武田はビックリして後ろを振り返ったら、アメリカ軍の兵士が100人ほどが隊列を組んで並んでいた。2人はしまったと思ったが、その情報は瞬く間にアメリカ軍兵士全員に伝わってしまった。




