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ソレイユの輝き   作者: Daisaku
3/12

第3話 専守防衛

まさか、先程、笑い飛ばしていた老女が本当にアメリカ軍に攻撃をさせてしまうなんて

武田と阿部は顔を硬直させながら、基地の少し離れたところで、攻撃の様子を見ている老女と子供に目を向けた。

子供は何も気にせず飛びはねて大声で騒いだ。


「ばあちゃん、すごいよ、すごいよ、本当に戦闘機が来て攻撃したよ。かっこいいな~」


「そうかい、マリは戦闘機が好きなのか」


「大好きだよ~あの速さにミサイル攻撃、カッコ良すぎるよ~」


「しかし、武器庫にはしこたま、弾薬が入っていたんだね。あんな大きな爆発をするなんて、こりゃあ、10億円以上の武器弾薬が一瞬で灰になっちまったかね~」


真っ赤に燃える武器庫を見ながら

楽しそうに話している2人に阿部と武田が申し訳なさそうに近づいて来て


「あの~すみません」


老女は睨んで


「なんだい、さっきのまぬけ兵士かい。何か用かい?」


「先程の攻撃はあなたが指示されたんですか?」


「お前ら、英語もできないのかい?」


阿部と武田はうなづいて


「そうだ。私が指示した」


「あなたはどのような方なのですか?」


近くにいた少女がニコニコして


「ばあちゃんがさっき言ったよ。私、聞いてたもん」


老女はマリに笑いかけて


「そうだな~、さっき言ったよな~」


2人は困った様に


「先程は大変失礼しました。どうぞ中にお入りください」


老女は急に怒り出して


「ふざけるな~、日本を守る兵士が自分の言った事に責任も取れないのか~」


2人は急にちじこまって


「すみません。あなたがこんなにスゴイ方だと思わなかったので」


また老女は怒りだした。


「お前らは本当にばかだな。みすぼらしい老人の話はまともに聞かないで、スゴイ人だとわかった途端に手のひらを返す、アホか!」


「ばあちゃん、あんまり弱くて頭が悪い人をいじめたらかわいそうだよ」


「そうかい、そうかい、マリはやさしいね」


「でも、困ったな~もう作戦を指示しちまったからね~」


阿部と武田はかつて経験したことがない状況に、ただ、慌てる事しかできなかった。

しかし、この状況なんとか、この方におすがりして事態を早く収拾しないと

とんでもないことになってしまうことぐらいはわかっていた。

そして、二人は本当に困り果てて、真っ青な顔で老女を見て


「さきほどはすみません。何とか攻撃をやめさせてくれませんか」


「無理なんだよ。この作戦は指示が完遂するまで、途中で止められないんだよ」


「そんな~」


「ばあちゃん、中に入れてくれるみたいだから、中に入ろうよ」


「まだ、だめだ!これから、たくさんのアメリカ兵が来て、この基地を占領するからね、危ないから、

それまで、ここで待とうな」


「ばあちゃん、また戦闘機来る?」


「ん、そうだね。今度はヘリコプターがたくさん来るよ」


「わ~い、今度はヘリコプターかあ~私、本物を近くで見た事ないから、楽しみだな~」


「お前は女の子なのにそんな物が好きだなんて、本当に面白い子だね~」


阿部と武田はとんでもないことになってしまって、本来、上官にするべき報告を処分がこわくて連絡できないでいた。


「お願いします。先程の非礼はお詫びしますから、何とかなりませんか」


少女は泣きそうでかわいそうな2人を見て


「ばあちゃん、かわいそうだよ。この人達、泣きそうだよ」


老女は孫がとても大事なようで、孫に言われた事に反応して、少し考えこんで


「1人だけ作戦を取り消すことができる奴がいるが、私は面識がないからな~」


2人は嬉しそうに老女を見て


「誰なんですか?その方は」


老女はニヤっと笑って


「アメリカ大統領だよ。大統領なら、私の作戦を即座に中止できる唯一の人間だ。お前達、さっき私をバカにして笑っていたんだから、さぞかしお偉いんだろ、阿部陸曹、お前が直接大統領に連絡してやめてくださいとお願いすればいいじゃないか」


「大統領ですか?」


また、少女が老女の服を引っ張って


「ばあちゃん、この人達、英語ができないから無理だよ、きっと」


老女は大笑いして


「そうだったな、こいつらは英語もできないんだから、直接お願いできるわけないか。アハハハ・・・」


そのころ、首相官邸では防衛大臣から緊急連絡が入った。


「総理、非常事態が発生しました」


連日の国会審議でクタクタになっている上条総理がこわばった顔で


「今度は何が起きたんだ。もう勘弁してくれ」


「アメリカ軍が陸上自衛隊富士基地に攻撃をしかけてきました」


上条総理は首相官邸内の自室のゆったりとした大きなソファーに座りながら冗談のような、この報告に

苦笑いをして


「いい加減にしろ、そんなことあるはずないだろうが」


「いえ、実際の攻撃映像やたくさんの関係者から確認は取れております」


「なんだと!」


大臣は3月の肌寒いこの日に額から冷や汗をだしながら


「総理から、アメリカ大統領に連絡していただき、即時攻撃中止をお願いしていただけませんか」


「大統領に?」


「はい、アメリカ軍が事前連絡なしにこのようなことをするなんてありえない話だがわかった、すぐに連絡をとる」


「お願いします。あと30分たらずで二次攻撃のヘリの編隊が多数、富士基地に向かっております。お早くお願いします」


上条総理はあまり、現アメリカ大統領トーマスとは仲が良くなく、いつもぎこちない会話になってしまう。さらに、最近ではアメリカよりも中国との貿易が盛んになり、その影響かアメリカ経済はかつてない、不景気に悩まされていた。そんな事情もあり、あまり今は話をしたくはなかったが、至急、外務大臣から連絡を取る様に指示をした。ワシントンではもうすぐ朝の4時になろうとしていた。


「日本の土方外務大臣だ。朝早くすまないが、大統領と緊急で話がしたい、取りついでもらえるか?」


朝方のホワイトハウスは静まりかえっており、その中で大統領の事務方で夜間待機をしているマイクは

こんな朝早くから、いったいなんの要件だと思い、ため息をつきながら電話にでた。


「なんでしょうか。こんな朝早く、あと2時間もすれば、大統領は朝の散歩で起きますから、それまで待てませんかね」


「待てないな」


「ふ~、それでは要件を聞きましょう」


この土方はこのだらだらとイヤイヤ話す大統領付きの事務方にイライラしてきた。


「あんた、私の話を聞く気があるのか!なんだその態度は!」


「これはすみませんね。こんな時間に電話してくるあなたもいけないんですよ」


「ほお~そうかい、この会話はいつも通り録音させてもらっている。そちらに話を聞く気がないなら、日本国として我が自衛隊に通告なしで攻撃してきたアメリカ軍の映像を世界に拡散させてもらう。もちろん現在、富士基地に進行中のアメリカ空軍の部隊も撃墜の指示をだす。我が国に対しての戦線布告もないこの一方的な攻撃はあなたの国を破滅に追いやるだろう。大統領に取り次ぐ気がないようなので、我が国は全力で迎撃させてもらう」


土方外務大臣は興奮して電話を切った。そしてすぐに上条総理に報告した。


「総理、お待たせしました」


「おう、どうだ、大統領と連絡は取れたか」


「いえ、こんな朝早くの時間のため、大統領付きの事務方に断られ、連絡が取れませんでした」


「なに~我が国の基地を一方的に攻撃しておいて、何を考えているんだ」


土方は勢いで先方に怒鳴ってしまったことも伝えた。


「総理、すみません。先方があまりにも我が国をバカにしたことを言うので、我が国はアメリカの侵略行為に対して、全力で防衛することを大統領に伝えろと言って、電話を切ってしまいました」


「なに~、それじゃあ、お前、アメリカと戦争をおっぱじめるつもりか?」


「いえ、これは正当な防衛行為です。その過程でアメリカ兵士や自衛隊員に死人がでても、いたしかたないと思います」


「それと総理、自衛隊が迎撃する前に乃木師団長から受け取ったアメリカ軍の一方的な攻撃の映像を全世界に流して、我が国が正当な防衛行為をすることを示す必要があります」


「そうか、フフフ、今日も国会で野党に痛い所を突かれてばかりだったが、この件で、もうそれどころではないな。よし、さっき、マスコミにも無愛想な態度を取ってしまったから、ここで名誉晩会といこうじゃないか」


「土方外務大臣、大至急この件をマスコミに流してくれ、その直後、私もこの件で国民に説明をする」


「フフフ、これで、マスコミにも恩を売れますね。あの小うるさく、痛いネタをつかんでいる記者に流して、うまくやってみせますよ。総理」


「頼んだぞ」


土方は嬉しそうにこの情報をマスコミに流した。上条総理はすぐに防衛大臣に連絡を取った。


「田沼防衛大臣か」


「はい、そうです」


「自衛隊は全力でアメリカ空軍から富士基地を防衛しろ。近くの基地や戦闘機を使ってでもアメリカ軍を基地に近づけるな。いいな、それとまもなく全世界にこの富士基地の攻撃の状況は知らされる。既成事実ができてから、専守防衛に努めろ」


「承知しました。総理」


田沼防衛大臣はうれしそうに電話を切った。そして、乃木師団長や山本幕僚長はもちろん、富士基地に近い航空自衛隊にも、この件は通告された。

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