第2話 アメリカの攻撃
「ばあちゃん、今なんて言ったの?」
少女は早口の英語が全くわからなかったようで、祖母の不思議な言葉が気になった。
「アメリカ軍にお願いして、ここを占領してもらうように頼んだんだよ。多分1時間もしないうちに部隊は到着して、ここを占領するから、マリもイイ子にして待っててくれよ」
「え~すごい!ばあちゃん、飛行機来る?」
「あ~来るさ、まず戦闘機が偵察と威嚇射撃をして、武器庫を破壊、そのあと、ヘリが来て、ここに部隊が来て、すぐに占領、そしたら、中に入れるからね」
少女はニコニコして
「さすが~ばあちゃん、すご~い」
「こんなことは、たいしたことじゃないよ。しかし、この2人はこれから日本国とアメリカにどう謝罪するのかね~大変だよ~」
老女は阿部と武田に手を合わせて、あわれみの気持ちで拝んだ。
「ばあちゃん、なんで拝んだの?」
「この2人はこれから、防衛大臣や総理大臣、いや、アメリカにまでこっぴどくやられてしまうからね。お前も人の話はよく聞いて、素直に聞かなければ、この2人みたいになっちまうからね。気をつけなよ」
「うん、大丈夫。わたし、バカにはなりたくないもん」
その様子を見ていた、阿部と武田は見たこともない
クリスタルのような物でできたデジタル表示が不思議な輝きを発している小型の通信機を見ながら
「おばあさん、ずいぶんと面白いおもちゃをお持ちなんですね。小さいお子さんをだますようなことをしてはいけませんよ」
「お前達、このアメリカ軍最新式の長距離用特殊無線機を見て、おもちゃというか、本当にお前達は平和ボケしたおこちゃま軍隊だね」
阿部と武田は老女の演技に感心して、また笑い飛ばしていた。少女はばあちゃんをばかにしている2人を見て
「お前達、ばあちゃんをバカにするな。世界で、ばあちゃんよりすごい人なんて、いないんだぞ」
また、阿部と武田は少女を見て笑っていた。
少女は悔しそうだったが、そんな様子をいさめるように
「マリ、あんなバカはほうっておけ、どうせあとで泣きながら、謝ってくるんだから、おっと
マリ、ちょっと離れた方がいいな。もうすぐ戦闘機が来て爆撃が始まるからね」
「うん、わかった。うわあ~戦闘機が来るのか~楽しみだな~」
基地の外は砂利道で足元が悪い中、少女は飛行機が大好きで飛び跳ねる様に離れた場所に走って行った。
そして、数分後、基地に緊急のサイレンが鳴り響いた。
「おいおい、また、予定にない緊急訓練か?」
阿部がそう言った途端、アメリカ空軍の戦闘機がものすごい爆音で編隊を組んで基地上空に現れ、
「プシュー、バー」
と、音がした。
ミサイルは武器庫に目がけて発射された。
「ヒュ~ババ~ン」
とんでもない爆音が辺り一帯に鳴り響き、ミサイルは武器庫に着弾した。そのあと、ものすごい爆風が吹き荒れた。基地内は何が起きたのか、訳がわからず、宿舎や建物内にいた自衛官達が右往左往した。
「何が起きたんだ~」
富士基地の建物内で帰る準備をしていた、山本幕僚長はものすごい音に驚いて、大声を上げた。
「アメリカ空軍の爆撃です」
「バカな!同盟関係にあり、この国を守ってくれているアメリカがなぜ、この基地を狙う必要がある。至急、師団長から抗議の連絡をしてもらう。お前達は 被害状況を調べろ」
武器倉庫ではミサイル着弾後、さらに二次爆発が起きて、誰も近づけない状況だった。
外はだいぶ暗くなってきていたが、武器庫の爆発で辺りはキャンプファイアーの何十倍も大きな火の粉が巻き上がり、明るくなっていた。
山本は大慌てで、緊急回線で上官に連絡した。
「乃木師団長!大変です」
「なんだ山本、こんな時間に」
「アメリカが攻めて来ました」
「は?アメリカが?ワハハハ、何を言っているんだ、お前はアメリカがそんな山の上の基地を攻めてどうするんだ。お前、頭大丈夫か?」
「本当です。今、そちらに戦闘機による爆撃の映像を送りました。ご確認ください」
これから、基地から自宅に帰ろうとしていたところに、こんなふざけた連絡が来て、イライラしながら乃木師団長は確認をした。そして、山本の言う通り、アメリカ空軍の戦闘機の攻撃に間違いはなかった。
「なにがどうなっているんだ」
乃木がいる基地でも
「師団長!大変です。アメリカ空軍が今度はヘリで富士の基地に向かっております」
「ばかな!」
乃木は大至急、政府に連絡を取った。
「大臣!大変なことが起きました」
今は国会があり、やっと、野党やマスコミの追及に対応したところだった。
「何だ、いったい、こっちは昨日から忙しくてあまり寝ていないんだ。くだらない話は聞きたくないぞ」
「富士基地にアメリカ軍が攻めて来ました」
「お前、何を言っておる。そんなばかな話があるか!」
「富士基地は戦闘機による攻撃で武器庫や主要な武器などが消失、レーダーによるとアメリカ軍はヘリによる掃討作戦を進行中のようです、あと40分もすれば、富士基地は第2次攻撃を受けます。至急、アメリカに抗議願います。証拠となる資料もそちらに転送済みです。同盟国であり、安全保障してくれているアメリカですが、この基地が攻撃されたら自衛のため、これから攻撃してもよろしいのでしょうか」
大臣は補佐官から証拠となる映像を確認して
「これは本物か?」
「はい、ひとろくさんまるに攻撃され、被害は甚大です。幸い、死傷者はまだ出てない様ですが」
大臣はこのわけのわからない事態にとまどいながら、
「わかった。至急、総理と外務大臣に確認、アメリカに連絡してもらう。それまで、早まったことはするな」
「そんなこと言われましても、確認が取れる前にアメリカ軍が来たらどうするんですか!」
「とにかく、抵抗するんじゃない」
「ですが、我々は防衛が任務です。間に合わなければ、防衛のため交戦します」
「いいから、余計なことはするんじゃない!これは命令だ」
防衛大臣はそういうと、電話が切れた。
「はあ~まったく成り立ての大臣は、メチャクチャな指示をだすな。これでは、戦う前から全面降伏しろと言っているのと同じではないか」
乃木はすぐに富士基地の山本幕僚長に連絡を入れた。
「山本!」
「はい」
「今、大臣がアメリカに確認中だ。確認が取れるまで、交戦禁止だ。もし、確認が間に合わなければ、即時降伏して、基地をアメリカ軍に引き渡せ。いいな!」
「承知しました。師団長の指示通り実行します」
そして、ただちに基地中のスピーカーから基地内の全兵士に放送が入った。
「山本だ。現在、アメリカ軍のヘリ部隊がこの基地に向けて、進行中だ。何があってもアメリカ軍には抵抗するな。これは訓練ではない」
基地の入口で警備をしていた。阿部と武田はさきほどの爆撃にも驚いたが、今度はまさか本当にアメリカ軍が攻めてくるなんて、信じられない様子でそこに立ちつくしていた。




