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ソレイユの輝き   作者: Daisaku
12/12

12話 ソレイユの輝き

そして、5年が過ぎた。


マリは体も大人の女性に近いほど大きくなり、とても美しい女性に成長していた。飛島ヤエの教育もあり、朝稽古の武道、放課後の基地での訓練や学校が長期で休みの時は、森や山などで何週間ものサバイバル訓練を行い、常人では考えが及ばない程、すごい女性に成長していた。


「飛島一尉、もう、ヤエさんがこの施設に来なくなって1年ほどですね。お身体の具合はどうなんですか?」


「いや、あんまり良くないよ。最近ばあちゃんは、毎日、私が病院に行っているのに、ずいぶん久しぶりだな~なんて言うんだよ。あの、頭の回転がよく、どんな人でも、使いこなして、先の先まで読む事ができたばあちゃんが、もう、あんなになって・・・私、もうおかしくなりそう、あ、ごめんなさい武田三尉もお母さんが具合が悪いのに」


「いいんですよ。うちは、ヤエさんに比べれば、ぜんぜんたいしたことありませんから」


マリは先日、母のエリと一緒に病院の先生から、ばあちゃんがもう長くない事を聞いていた。


「飛島ヤエさんは、実はもう10年ほど前からガンを患っていまして、本当はこんなに長く生きる事ができない体だったのですが、どうしてもやらなければいけない事があるといつも言っていました。特に孫のマリさんのことがとても気になる様でした」


「先生、ばあちゃんはあとどれくらい生きれるんですか?」


先生はため息をついて


「いいですか。落ちついて聞いて下さい。はっきり言って、今すぐに亡くなってもおかしくない状況です。ですから、なにか話しておきたいことがあれば、今のうちに、話しておいたほうがいいですよ」


マリは、その時のことを思い出すと目から涙が出て止まらなかった。


「武田三尉、今日もまた、帰りに病院に寄ってくれるかしら」


「はい、もちろんですよ。僕に士官の道を切り開いていただき、ヤエさんのすさまじいまでの交渉術や、戦いに必要な知識を教えていただき、私は、世界で一番のラッキーな男だと思っています」


そんな話をしている時にマリは急に直感でばあちゃんの命が消えそうなことが頭に浮かんだ。


「もう、時間がないわ。武田三尉、すぐに車を廻してくれる、急いで病院に行くわよ」


「了解しました」


マリは、すぐに自分の母にも、そのことを伝えた。


「もしもし、お母さん、ばあちゃんがもう、危ないよ、急いでお父さんにも連絡して、病院まで来て」


「マリ、なんで、おかあさんが危ないってわかるの?」


「私にもよくわからないけど、絶対に間違いないよ。とにかく、急いで」


ヤエは山梨の病院のベットに横たわり、数々の戦いの日々を思い出していた。そして若くして、亡くなったかけがえのない友に自分はこんなに長く生きる事ができて、たくさんの友に感謝をしていた。そして、出雲神殿の宮司の子供として生まれ育ち、15歳のあの日、父からお前は自由にやりたい事をやれと言われ、帝都の学校に進学することになり、家を出る日に言われたあの衝撃的な話が、こんな時でもはっきりと脳裏に焼き付いていた。


「ヤエ、お前は神に選ばれた大切な子供、出雲神殿建立の時から、この千八百有余年、代々引き継がれてきたことをお前に今、伝える」


「どうしたんですか?お父様、そんなに真剣なお顔をして」


飛島家は出雲神殿創建時より、宮司を任されてきた。そして、天照の神様より、飛島の名を拝命した。その神様より、伝え聞いたことを初代宮司が書き写した。ヤエの父、飛島尊はボロボロの木箱に入った、巻物を出して両手で持ち上げ、神に祈る様に礼をして、丁寧に巻物を広げて読み始めた。


「出雲神殿宮司の血族で十の歳になると、おでこに大きなほくろが現る女あり、その者は武術に通じ、人の心を読み、先の天候をも読み当てる、その者の孫は神の生まれ変わりとして生を受ける、女はその神にありとあらゆることを教授すべし、さすれば世は乱れず平和となり、道が開けるであろう。これは、天命である」


父、飛島尊は自分の娘ヤエに深々とおじきをして、その巻物を渡した。


「お父様、これは何かの冗談ですか?」


「いいえ、神に選ばれし方よ。これは本当の話であり、あなたがこの世を救うためにこれから、あなたの思うがままに生きてください。我が飛島家はあなたの指示があれば、どんな援助も協力いたします。そして、このことがかつて我々、民をお救いになられた天照の神に恩返しする行為です。これからの人生、何があっても生き残り、神の降臨にご助力願います」


ヤエは父があまりにも真剣に話してくるので、驚いた。


「ですが、お父様、なにもこんな帝都に出発する日に言わなくても」


「もし、早く話してしまえば、敬語で話さなくてはならないし、兄の、雄大も変な目で見るでしょう。まさか、わたしの娘が選ばれし女だったとは、私は震えるほど興奮しました」


ヤエはお父様から頂いた巻物を見た。そこには5人の神の中で一番上位にあたる天照の神

のことが書いてあった。


「お父様、この文字は死滅した神代文字ですね」


「我々においては死滅してませんが、一般の日本人には絶対に読む事はできません」


ヤエは天照の神を支えるように書かれている、火の神、光の神、雷の神、知の神のこと、そして、万能の神とうたわれる天照の神が当時の世を平和にした内容が書かれていた。そして、この巻物が偽物と疑われない様に当時の王の名前と朱印が押された物が目についた。それを見てヤエは驚き、何度も目をこすりながら、それを見た。


『この伝えし出来事は、王の名において、偽りなきものである。倭国女王卑弥呼』


ヤエは震えと鳥肌が立った。


「お父様、これは歴史的にも、とても重要な古文書です。まさか、あの女王卑弥呼が

認めし書物なんて、こんな凄い物、この世にここにしかありませんよ!」


「日本で最も由緒ある、神が認めし神殿で重要な書物があってもなんら、おかしなことではありません」


ヤエは体にもう力をいれる事も出来ず、頭の中で思い返していた。


『まさか、あの、かわいい、かわいい、マリが神様の生まれ変わりだったなんて』


ヤエは自分の役目を全うすることができて、とても満足そうだった。その時、


「ばあちゃん!」


愛しき、マリの声が聞こえた。ヤエはもうすぐにでも黄泉の国へ旅立つところであったが、ベットで横たわりながら、顔をマリに向けて、小さい声でこう話した。


「神様、わたしはお役目を十分に果たしました。あなたは、もうお1人でも十分に歩いていくことができます。あなたは、ソレイユの輝きのように、これから、たくさんの人にその光を与え続けるでしょう。短い間でしたが、あなたと会え、そして過ごした日々は本当に楽しく、光栄でした。」


マリは、ばあちゃんが訳の分からない事を言っているので、本当にぼけてしまったと思った。

それでも、今までの感謝、いや、それだけではない、ばあちゃんのような、どんな者にも負けない、あきらめない、そして、個の力でなく、たくさんの力を使い、目標を成し遂げる考え方、もう言葉に出来ないくらいたくさんのことを教えていただき、尊敬できる世界最高の方だった。

最後に自分の言葉がばあちゃんに届くように必死に話しかけた。


「ばあちゃん、私これからも、毎日がんばるよ。そして困っている人や助けなけらばならないたくさんの人を助けていくよ。いつか、ばあちゃんみたいにカッコ良く、生きていくよ。え、え~ん」


マリは悲しくて、悲しくて、信じられないほど、涙があふれ出てきて、言葉を濁した。


「ばあちゃん、ばあちゃん、永い間ありがとう」


飛島ヤエは薄れゆく意識の中でマリの顔をハッキリと見て、とてもうれしそうに笑いながら死んでいった。マリはばあちゃんにしがみついて、わんわん泣きまくった。そこに遅れてマリの母エリと義父の譲二が病室に入ってきた。


「お母さん!」


ヤエはたった今、息を引き取った。出雲神殿の宮司の娘として生まれ、神に選ばれし戦士として、たくさんの同志と共に、かつての世界大戦を終結させ、人類を絶滅の危機から救い、世界の隠れた英雄として、その名を轟かせた女性は幸せそうに本当の眠りについた。どんな生き方をするかは個人の自由だが、その人生のすべてを世界を救うことや、天命を全うすることに使い、決しておごらず、その美しき透き通った水の様な意志はたくさんの世界の人々に湧き水を起こし、それが大きな川となり、世界各地にその大河は消える事なく今も流れている。


飛島ヤエと飛島マリの最後の瞬間に立ち会った武田三尉はまるで、映画のワンシーンを見ている様だと思った。


あのあと、しばらく、飛島一尉は悲しみで精神的に暗くなり、あまり会話をしなくなったが3年ほど過ぎて橘ユウキという友達ができてからは、とても元気になられ、急にフランスに留学された。おそらく飛島二佐のことだから、留学は表向きで、私の想像もできない世界で、きっと頑張っておられるのだろう。


でも、私は知っている、飛島二佐の体にはあの伝説の英雄、飛島ヤエがいつも付いているのだから、どんな困難があろうとも必ず乗り越え、いつの日か本当に世界を救う新の英雄になることを・・・


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