11話 ばあちゃんの教え
「準備できたか?」
「はい、準備完了です。ご指示通り、小型拳銃のワルサーPPSを用意しています」
「マリ~こっちに来な」
マリは入隊式が終わり、更衣室でトレーニング用の服に着替えて基地内訓練施設棟に
入っていた。
「ばあちゃん、これから、ここで何をするの?」
「お前にはこれから、ここで世界のあらゆる武器を使えるようになってもらう。とりあえずお前はまだ手や体が小さいから、小型の拳銃から使い方を覚えてもらう」
「ねえ、ばあちゃん、これ本物?」
「あ~、本物だ。ばあちゃんが撃って見るから、よく打ち方を見てな」
「うん」
飛島ヤエはすばやく弾を銃に込めて、片手で
「パン!」
と拳銃を放った。10mぐらい離れた的のど真ん中に当たり、マリはそれを見て嬉しそうに飛び上がった。
「すご~い、本当に本物だ」
飛島ヤエはマリに銃の持ち方を教えた。
「いいかいマリ、これは朝の武道の鍛錬と同じで真剣な気持ちで扱わないとだめだよ。
そして、これは絶対に人に向けてはいけないよ。間違って弾が飛んだら、人が死んでしまうからね。わかるかい?」
「うん、わかる」
「それと、これだけはしっかりと頭にたたきこんでくれ、武器は人を殺す為ではなく、活かすために使ってくれ、お前にはまだ、わからないだろうが、とにかく、人は絶対に殺すな、いいな」
「え~と、じゃあ、武道では、できない、離れた相手を動けなくするために使うことでいいかな」
「そうだな、今はそういうことでいい、お前もだんだんわかっていくだろう。さあ~訓練だ」
飛島ヤエはマリに銃を持たせて、じ~っと見て
「すこし、手のかかりが悪いな。阿部陸曹、あそこのボックスを持って来てくれ、このワルサーは手の大きさに合わせてグリップサイズを変えられるから、もう少しマリの手に合わせて小さくするか」
そして、手際良く、グリップを変えて
「どうだ、マリ、ちょうど良くなったろ」
「うん、持ちやすくなった」
「よ~し、まず体の中心に銃を持ってきて、足と腕を軽く曲げて、よ~しいいぞ、マリは利き手が右だから、両手で10の力だとすると、右手が3の力、左手が7の力で銃を持ちな」
「ばあちゃんこんな感じかな」
ヤエはマリの手を少し直しながら
「いいぞ、それじゃあマリ、今度は銃の上を見てみろ、まずここがリアサイト、それとこっちがフロントサイトこの二つを目的物と自分の目との間にキッチリと入れて狙ってから撃つ、フロントとリアの高さも合わせないとだめだ」
飛島ヤエはマリがあまり、うまく照準が合わせられていないので、もう一度マリに
「マリ、両手の力を入れ過ぎだ。銃口が震えてしまっている。もっと体の力を抜いて
鍛錬の時の初歩正拳突きを思い出せ」
そう言われるとマリの手の震えは止まり、姿勢も安定した。
「よし、引き金を引け」
「パン!」
見事、的の中心に弾が当たった。ヤエはかなり筋の良いマリに
「ハハハ、武道もそうだが、お前は拳銃の扱いもかなりの使い手になりそうだ。これからどんなに大きな拳銃でも基本は一緒だ。だが、安全装置やマガジンの取りだし方など、銃によっては様々だから、これから、一つずつ、覚えていこう。お前はまだ手が小さいから、小型拳銃から練習していくぞ。弾の入れ方はもちろん、どこの国でどんな人が使っているか、また、用途によって、最適な武器の選び方など、覚える事は山のようにある。マリ、早朝はいつも通り、武道の鍛錬、そしてこれからは休みの日や学校のある日は夕方にここに来て、私が教えていく。大変だが、お前にはばあちゃんの知っている事を教えてやりたいんだ。そしていつか、困っている人達を助けてあげる、立派な人になってくれ」
マリはにこ~っと笑って
「うん、頑張るよ」
阿部陸曹はそのやり取りを見ていて不思議そうに
「飛島准尉、なぜ、飛島さんのこのような特殊な訓練になんの疑いも持たずに頑張るなんて言えるんですか」
この人は何を言っているんだ。といった顔で
「何を言っているの?ばあちゃんは世界で一番怖くて、世界で一番優しくて、そして世界で一番かっこいいんだよ。私、ばあちゃんみたいにすごくてかっこよくなりたいからに決まっているじゃない」
阿部は首をかしげて、話を聞いていた。たしかにすごい人なのはわかるけど、やはり、この人達には一般人の考えが及ばない世界が見えているのかもしれないと思った。
「さあ、マリこれから、ビシビシ教えていくから、しっかりと覚えな」
マリはばちゃんに色々と教えてもらえることがうれしくて、一生懸命に頑張った。




