出会いは突然に②
前の女の人の足下がふらついた瞬間、おれは彼女を両手で抱きかかえるように支えた。やわらけー。しかもなんかいい匂いするし。やばい、顔がにやけてしまう。
必死に歯を食いしばり、なんとか平常心を保つ。
「大丈夫ですか?足下ふらついてますよ。」
「あ、ありがとうございます。助かりました。私、ヒールに履き慣れてなくてつまずいてし
まって。」
女性が振り返ってこっちを見る。
正直な感想を言おう。めっちゃかわいい。
うなじが見える程度まで伸びた淡い金色の髪。少し高めのすらっとした鼻。ぱっちりした目に少しふっくらとした唇。しかもパーツの配置も完璧すぎる、身長は少し低めで華奢な体。
しかもいい匂いもするとか最強過ぎるだろ。
少し理性が崩壊しかけたが、なんとか立て直す。
「あっ、すみません。触りすぎですよね。」
ああああああ。なんで手を離してしまったんだぁぁぁ。もっと触っていたかったのにぃぃ。
心とはうらはらに体は紳士的な対応をとってしまった。
あれ?もしかしてこっちの方が好印象なのか?
「き、気にしないでください。全然大丈夫です。」
その声は少し震えており、うつむく顔はほんのりと赤らんでいる。
照れてるすがたもかわいい。なんだこれ。やばいだろ。
「そうですか。けががなくて良かったです。お気を付けて。」
ドキドキが止まらないまま、言葉を絞り出した。
「本当にありがとうございました。」
そう言うとその女性は前を向き、階段をゆっくりと上っていった。
ぼうっと呆けていると、松比良に前に進めといわんばかりに俺の背中をたたかれた。
歩きながら、もう一度、先ほどの女性を思い出す。
世の中にはあんなきれいなひともいるんだなぁ。