出会いは突然に①
大学式はつつがなく終わった。大学の偉い先生のお話を聞いて、まあなんかいろいろあって、いつの間にか終わってたというのが正直な感想だった。
新入生らの話し声が入学式の終了を告げるかのように会場に響き始める。
「終わった~。」
と大きくのびをする。長い時間同じ姿勢だったので背中にいたい。あ~、と気持ちよさそうな声が漏れてしまう。
「おつかれさん。とりあえず外に出るか。」
気づけば周りもぞろぞろと外に出始めている。
俺はうなずき、重い腰を上げつつ階段に向かって歩き始めた。
「やっと探検ができるな。」
「何だよ、松比良。お前もなんだかんだ学校探検したかったのかよ。」
「そりゃあたりまえだろう。学校探検は小学校以来だしな。僕も心なしかわくわくしているのさ。」
肩や腰を少し回し、ストレッチまがいのことをしながら階段につくと、ゆっくりと上がっていく。
その瞬間だった。
前の女の人の足下がふらついたかと思うと、俺に向かって倒れ込んできたのだ。
「あぶねっ。」
とっさによけようとするが間に合いそうにない。そう思った瞬間、時間が少しだけ巻き戻った。
文字どおり、時間が巻き戻ったのである。