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入学式の朝はせわしない②

「おーい。はやくこいよー。」


ちょうど大きな道路を挟んで反対側のコンビニから、俺に向かって手を振る男の姿が見えた。


「ごめーん。今行くー。」


そう叫ぶと、急いで横断歩道まで走る。


「おせーよ。20分も遅刻だぞ。8時10分にこのコンビニ前に集合っていったのはお前だろ。」


「悪かったって。一回は俺も7時に起きたんだ。そこから2度寝しちゃってよ。上の人の大きな音に感謝だぜ。あれがなかったらもっと起きるの遅かった。」


俺は少し息を切らしながら、手を膝について前屈みの姿勢をとった。


「今度あったらお礼でも言っとけよ。」


「もし会うことがあったらな。でも今日はマジでごめん。今度ご飯でもおごるよ。」


「焼き肉食べ放題でちゃらにしてやるよ。てかこの距離で息切らしてんじゃねーよ。ほら、水だ。とりあえずこれでも飲んで、息整えてから話せよ。」


そう言うと手に持っていたペットボトルを俺は手渡された。

おいおいなんだこいつ。イケメンかよ。

心の中でそうつぶやくと、キャップを開け、一気に飲み干す。


「フー。生き返る。サンキュな。しかし、二度寝ってなんであんなに気持ちいんだ?一回目よりもなんとなく気持ちよさでかくないか?」


「そりゃあれだろ。眠たい。だから寝るっていうパーフェクトな流れができてるからじゃね。休日の二度寝なんて最高すぎる。だか平日の二度寝は最悪だ。やつは悪魔の皮を被った天使なのか、それとも、電車の皮を被った悪魔なのか...。卒論のテーマにでもしてみたらどうだ。」


ちょっとかっこいいことを言ったつもりなのだろうか。かけてもないメガネをクイッとあげそうな雰囲気醸し出すなよ。さっきのイケメンが台無しだろうが。


「入ったときから卒業のことなんて考えたかねーよ。」


「てか、今はそんなことより入学式だ。9時開始だから、遅れないように行こうぜ。」


ここから大学までは徒歩で約10分程度だ。正確には大学内の入学式が開催される大きなホールまでだが。


なぜ入学式は9時からなのに集合時刻を8時10分にしたのかだが、それはもちろん遅れないための保険っていうのが理由の1つだ。


だが、それ以上に大きな理由がある。それは、大学内の探検だ。俺が入学する大学は、割と広い。学生たちが校内の移動に自転車をつかうところからもそれなりの広さなのがわかる。俺は大学にオープンスクールで1回、それから2次試験でもう1回と計2回しか訪れたことがなかったのだ。だから、どんな大学なのかはほとんどネットの知識ばかりで、実際に自分の目で早く確かめたかったのだ。


いつになっても、こういう子供心はわすれてはいけない。


「探検は入学式がおわってからにしよーぜ。」


そう言われ、俺は入学式が終わってからでも探検できたことに気づかされた。


「そーするか。でもせっかくならあんまり人がいない時間帯に探検したかったなあ。」


「しかたねーだろ。誰かさんが二度寝したんだから。」


「悪かったよ。反省してる。」


「ならいいさ。じゃあ切り替えて入学式に参戦といこうぜ。」


「おっしゃ。行くか。」


そういって二人はまだなれていないネクタイを締め直そうと胸に手をやる。


「あ、ネクタイすんの忘れてたわ。」


そういうと鞄からネクタイを取り出し、初心者なりになんとか締めようと試みる。高校まで学ランだったので、ネクタイを結ぶ機会がほとんどなかったから許して欲しい。


「おいおい、曲がってんじゃん。」


そういうと、男は俺の胸に手をやり、ネクタイを締め直してくれる。

もう一度心の中でつぶやく。


やっぱこいつイケメンかよ。


言い忘れていたが、こいつは松比良 海渡。俺の小学校からの腐れ縁で、親友だ。


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