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知らない天井②

「俺がお前のことわすれるわけねぇだろ。」


カーテン越しに、女性のきれいな声が聞こえた。


「なかなかかっこいい台詞ね。私が言うとなると少し恥ずかしいけど。俺がお前のことわすれるわけねぇだろ。」


もう一度、同じ台詞を繰り返す。今度は言った自分のことを確かめるように。

馬鹿にされてるのか?なんだか恥ずかしくなってきたじゃねぇか。


「誰だ?」


少しいらだっていた俺は強い口調になってしまう。


「いらだたせてしまったのなら謝るわ。ごめんなさい。」


思ったより素直な人だな。


「いや。こっちこそごめんなさい。ちなみにあなたはだれですか?」


「わたし?私はあなたと頭をぶつけた人・・・とでも言ったところでしょうか。」


「え?どこで?」


「ショッピングセンターの階段でよ。わたしもあの子を助けようとしたの。そしたらあなたとぶつかってしまって。」


「なるほど。そういうことですか。」


ということは、俺はあの時このカーテン越しの人とぶつかって階段から転げ落ちてしまったってわけだ。ようやくわかってきたぞ。


「そういうあなたは、俺がお前のことわすれるわけねぇだろ、さんでいいかしら。」


やっぱりばかにしてるのか。


「俺は伊知地です。伊知地彰夫。話しにくいのでカーテンをとってもいいですか?」


「ええ。どうぞ。俺がお前のことわすれるわけねぇだろ、さん。」


「だから伊知地だって言ってるだろ。」


俺は体をめいいっぱい伸ばしてカーテンをめくろうとする。

ガララっ。


「ただいまー。」


「伊知地君!目が覚めて良かった!」


「鈴原さん。」


「おいおい、急にカーテンなんか開けようとしちゃって。お隣さんびっくりするだろ。」


「いや。さっきからこの人俺のことあおってくるから。顔を見てやろうと思って。」


「何だ。もう面識あったのか。いや、この場合はまだ顔をみていないから声識か?」


「なにわけわからないこと言ってるんだよ。」


「まあまあ。お前は寝てろって。俺がめくってやるよ。」


そう言うと松比良は俺の隣のベッドの方をみて


「いいですか?」


と声を掛ける。


「え、ええ。」


と反応が返ってくるのを確認するとゆっくりとカーテンをめくった。

そこには長い茶髪を伸ばした女性がいた。目鼻立ちのくっきりとした、それでいてどこかはかない、紛れもない美女であった。


「紹介します。こちら、伊知地のストーカーさんです。」


松比良があっさりと言い放った。


「えええええぇぇ!?」


まさかのストーカー?!展開が早すぎてわけがわからねぇ。

俺がストーカーの方に目をやると


「ちょっ、まっ。ええっ。」


いや、あんたもびっくりしてんのかい。


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