この憂鬱は俺のもの⑨
「えーっと、食器売り場はどこだ?」
フロアマップを目で8の字を描くようにして探す。
「おっ、2階か。食料品売り場ばっかり行ってるからあんまわかんねぇな。」
近くのエスカレーターか階段を探す。
が、ぐるっと見回した感じ、視界の中にはなさそうだ。
天井からぶら下がっているパネルを見ると、エスカレーターのピクトグラムのようなものと矢印が描かれていたため、その矢印の方向に歩いて行く。
その道の突き当たりにはエスカレーターとその横に階段が見えた。
「たまには運動するのもいいか。」
俺は階段を上ることを選択し、1段飛ばしで階段に足を掛けようとする。
すると、階段の上の方から「きゃはは」という笑い声が聞こえた。
見上げてみると踊り場で小さな子どもたちがおにごっこをしていた。兄弟だろうか。お兄ちゃんが弟を追いかけている、といったところかな。
階段で遊ぶと危ないぞ、と優しく声でも掛けようか。
なんて声かけたら怖がられないかなぁ、と考え出した時、弟の方が踊り場の端から足を踏み外した。
「あっ。」
やばい!このまま転がったら大けがするぞ。
「くっ。」
俺が受け止めきれる保証はない。しかも、階段の一番下にいる俺のところまで来る間に、何段もの階段とぶつかってしまう。
迷っている場合じゃない。時間を巻き戻す!
体に少し力をいれ、時間が少し前に巻き戻るよう脳内でイメージする。
ギィィィン。
何かにはじかれたように頭痛が走った。
「ぐっ。」
なにっ!時間が巻き戻っていない!?
こんなことは初めてだ。ありえないっ。
その間にも子どもは転がってくる。もう一度時間を巻き戻すか!?
でも、もう一回やって時間が戻らなかったら間に合わない。
「だぁぁぁ。」
俺は子どもめがけて階段を上った。
来いっ!
なにがなんでも受け止めてやるっ。
その瞬間、俺の体の側面に大きな衝撃が走った。何かがぶつかってきたようである。
ゴンッ。
ゴロゴロ。
次の瞬間、俺は階段を転がっていた。
あれ?なんで俺が転がってるんだ。あっ。子どもは?大丈夫か?
どさっという音とともに、俺は階段の下についた。さっきまで見下ろしていた床が近くにある。
おっ。松比良に鈴原さんが見える。駆け寄ってきてくれてるのかな。
ああ。痛い。目が開かない。
意識が混濁していく。
――――――。
ああ、これはけっこうやばいやつかも。




