入学式前夜の夜
明日からついに俺も夢の大学生。人間、新しい環境はすくなからず不安よりも楽しみの方が勝つものだ。大学ではどんな出来事があり、どんな出会いがあり、どんなことがわかるのだろう。
ひょっとすると、今まで1度もできたことがない彼女もできたりするのだろうか。まだ見たことない彼女を思い浮かべ、胸を弾ませる。具体的には、長い黒髪で普段はクールだけどたまにかわいいところがある。そんな女性がいい。
何を隠そう、俺には彼女ができたことがない。というより、女子と遊んだことすらない。男子高校生の大半はこうではないかと考えている。モテる男や陽キャたちに目がいきがちだが、俺のような男がほとんどなはずだ。世間でのアンケートは信用に足るものではない。あんなものは社会の一部を少しだけ切り取っただけに過ぎないのである。○○人にアンケート!などといううたい文句のイメージであるが、それではアンケートをとった場所にいる人たちに左右されすぎる。だからおれはアンケートなんぞ信じない。いや、信じたくない。そう心に言い聞かせ、毎日生きている。
そんなことを考えているうちに、時刻は夜の11時。
「さて、明日は入学式だし、そろそろ寝るとするか。」
そうつぶやいて、俺は一人暮らしのために新調した布団を敷いた。明日は余裕を持って8時には家を出ておいたほうがいい。。それを見越し、目覚まし時計のアラームを7時にセットする。入学式に遅刻して悪目立ちなんぞしたくはない
布団に入り、ほっと一息ついてから目をつむる。が、なかなか寝付けそうにない。ただ、目をつむったときに見えるよくわからない光の点々のようなものをなんとなく見つめているだけだ。頭の中には枕元に置いた目覚まし時計の針の音がカチッ、カチッと反芻されており、たんたんと時間が過ぎていくのがわかる。修学旅行前日の布団の中にいるような気持ちに近い。
眠ろうとすると逆に眠れなくなってしまうので、羊でも数えることにした。しかし、なぜ数えるのは羊なのだろう。どうせなら俺は好物であるカツ丼を数えたい。カツ丼か1杯、カツ丼が2杯・・・。10杯程度まで来たら、なんだかお腹がすいてきた。何か別のものを数えよう。何にするかな。やたらとおっ○いを思い浮かべてしまうが、これは先ほどのカツ丼のせいだろう。杯杯言っていたからに違いない。やはり羊を数えるしかないか。・・・・・・・・・・・
そんなことを考えながら、数十分くらいたっただろうか。なんだかうとうとしてきたと思っていると、いつの間にかすやすやと眠ってしまっていた。
次の日。
ピピピピッ。ピピピピッ。目覚ましの音がいびきをかき消すように部屋に鳴り響く。眠そうに目をこすりながら布団からゆっくりと出ようとするが、二度寝という言葉が脳裏に響く。やつは非常に強敵で、打ち勝つにはなかなかの精神力が必要だ。5分ほど布団の中で葛藤した後、俺はあと5分だけ寝ることに決めた。
寝るときに羊を数えるのは、寝るの英単語「sleep」と羊の「sheep」が似ているからだそうです。